レモンの木が迎える、住宅地の小さなパン屋
「優しくなりたい、このパンのように」
そんなことを思いながら食べた。
パン工房MARUさんは、糸島の人気エリアの賑わいから、『ちょうど少しだけ』離れたところ。静かなエリアでありつつ、糸島ドライブの際に寄るのには便利と言える立地。
前もここは確か、素敵なレストランだったよなぁ、と薄っすら記憶の片隅にはある。この場所に今は、こんなに可愛らしいパン屋さんがあるなんて、、、『パンアンテナ感度抜群』の貴人から伺うまでは、全く存じ上げなかった。
明るい壁の色が少し地中海風にも見える一軒家の正面には、レモンの木があって。住宅街の中でここだけが、フワフワと違う空気を醸し出しているように見えた。それは、ぬくもりを感じるパンを頂いたあとに、改めて振り返りながら、見ているからかもしれませんが。
イートインスペースもありますが、今は使われておらず、扉を開けて正面にあるショーケースから小さなパンたちを選ぶだけの広さ。これが店舗スペース。
店主さんと向き合って、お話ししながら選べる感じの、筆者的には理想の『コバコ』
この日のお目当ては、栗の渋皮煮入りの「栗あんぱん」。
どうしてもこの時期は、栗の渋皮煮が食べたくなるのです。
母が渋皮煮を作れなくなってから、何年経つでしょうか。『最後の晩餐はお母さんの栗の渋皮煮がいい!』そう即答していたくらい、母の作るそれが好きでした。
いや、今も好きです、食べられるもんなら食べたいなぁ。
作ろうとはしてくれるんですが、もうね、歳もあって、いろいろあって。何回も栗を買っては、駄目にしちゃいました。
なら娘さん(私ね)作んなさいよ!と思われるでしょう、そうでしょう。いやー、、、栗仕事、、、大変ですよね(しみじみ)。何度もトライするほどの、根性もなく。
そして、母の味にはならないんですよね、そこは何度もトライしていくことで、近づけるのかもしれませんが。
まぁ、いろいろ言い訳を羅列しておりますが、つまりは不器用で不精者故に、人が作った渋皮煮が食べたい、というところに落ち着くわけです。
そんなこんなで着地させて頂いたMARUさん。
そしてその「栗あんぱん」の渋皮煮は、私が理想としているものでした。
渋皮煮の優しい甘さがクセになる「栗あんぱん」
母の渋皮煮は、ゆっくりじっくり煮込むからというのもありますが、所詮素人、栗が崩れたものも多いのです。
私はその、崩れた栗も大好きで。綺麗な、まるっとしたものより、崩れた部分から煮汁がたっぷりと染み込んで、ほろほろ崩れるほどに柔らかくもなっていた。
そして、その崩れ落ちた方の栗たち、大きなお鍋の底に残ったクズたちは、最高のご馳走でした。
MARUさんは流石プロでいらっしゃいます、綺麗な綺麗な栗の形を残した渋皮煮、それなのに、じんわりじっくり、お味がたっぷり染み込んでいた。たっぷり染み込んでいても、お砂糖甘いという印象ではなくて、栗本来の味わいがしっかり。
母の渋皮煮の1番良く出来た栗ばかりが挟まっている感じ、と言ったら、母にもMARUさんにも失礼でしょうか(苦笑)
そして、それを包み込むパン生地の美味しさよ。白くて、しっとりしていて、遠くで発酵の風味がふうわり漂って。
「や、やさしい〜、、、」こういう生地なのです、今食べたいのは。母と一緒に、向かい合って食べたいのは。
渋皮煮と共に挟まれている粒あんも、粒感がちゃんと感じられる、母娘共に好みのもので、そのことでも会話は盛り上がる。
スコーンも、そして勿論!?クリームパンも購入しましたが、どれも優しさ溢れる、温かみ感じる美味しさ。(※筆者は絶賛クリームパンブーム中です)
うんうん、これがカスタードだね、牛乳と卵で出来てるよね、そう感じられるねって。またもや母娘の会話は盛り上がるのでした。
お店の雰囲気から、生地から、具材から。店主さんのお人柄が伝わる。購入したこちらもほっこりと、優しい気持ちになれる、思わず『ありがとう』と言いたくなるパンたち。
もう母は、次の栗の季節には、渋皮煮を作ろうともしないかもしれないけれど。
その時はまたこうやって、美味しい渋皮煮のパンを食べに行こうね、お母さん。
※栗の渋皮煮入りの栗あんパンは季節商品のため現在は終了しているかもしれませんm(_ _)m
ですが、文中にも書いたクリームパンや、フワフワ系のスコーン、そしてあんこを使ったパンは通年あると思います。
どの生地も、しっとりとした優しい歯触りと食べやすさで、オススメです!
店舗情報
パン工房MARU
住所:〒819-1331 福岡県糸島市志摩久家1701−2 [map]
営業時間:10:00〜売り切れ次第終了
定休日:水・木曜日
駐車場:あり
Instagram:@marupan2020
https://www.instagram.com/marupan2020/