フクリパbooksで本の紹介を20回担当させていただきましたが、今回が最終回です。最後の一冊は「本屋で待つ」を紹介いたします。
佐藤友則と島田潤一郎の共著である『本屋で待つ』は、広島県庄原市の山間の町にある書店「ウィー東城店」を舞台にした本です。
佐藤友則さんはこの書店の店長で、父親が経営していた書店を引き継ぎます。赤字続きだった店を「お客さんの要望にこたえる」という姿勢を徹底して貫くことで黒字化させました。文房具、化粧品、雑貨、食品も扱い、時には年賀状の宛名印刷を請け負い、エステルームや美容院、パン屋までオープンさせました。大型ショッピングモールなどないこの町に必要とあればなんでも扱う。ウィー東城店はそういう町の人たちのニーズを一手に引き受けていると言っても過言ではありません。
その他にも、お客さんの悩みを解決するために、本屋とは関係のない仕事を引き受けたり、引きこもりの子をアルバイトとして雇ったりする。お客さんは困り事を解決して帰り、引きこもりだった店員さんたちは働くうちに幸せになっていく。地域の小売店の可能性と、そこで成長する若者たちの姿を通して、本屋とは町にとってなくてはならない存在であることを再認識させてくれます。
僕も本屋です。地下鉄七隈線六本松駅から徒歩5分。裁判所の裏手にあるわずか9坪しかない、吹けば飛ぶような本屋です。駅前には大型書店もあります。もちろん経営は順風満帆ではありません。いつ終わってもおかしくないこの本屋にも使命感はあるのです。それは「誰かの背中を少しだけ押せる一冊を届けたい」という思いです。
若い方々が日々訪れてくれますが、お話をさせていただく中で、心に深い傷や病、大きな悩みを抱えて苦しんでいる事を打ち明けてくれます。どうしてこんなにもみんなが辛い思いや寂しい思いをしなければいけないのか。若いというのはそれだけで純粋に楽しいもの、真っ直ぐに走っていけるはずなのになぜなんだろうと。彼らのために僕が出来ることは「本屋で待つ」ことしかありません。ただひたすらに彼らの話を聞いてあげる。応援出来るものはしてあげる。そうでなければそっと見守り、彼らの背中を少しだけ押してあげられる本を日々並べて続けることだけなのです。
学校や会社、そして家庭にも居場所がないのなら、ぜひ本屋へ足を運んでみてください。そこには必ずあなたの事を考えてくれる、支えてくれる本や人がいます。本を読まないからなどという言葉にはなんの意味もありません。現代社会に生き、この仕組みの中で生きるしかないのなら、その苦しさを和らげてくれるものはやはり「本」だけだと思うのです。なぜなら僕が「本屋」だからです。
今日も明日もずっとここで待っています。ありがとうございました。
今度は本屋でお会いしましょう。
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本屋で待つ
佐藤友則・島田潤一郎(著)
発行:夏葉社
四六判変形 208ページ
定価 1,600円+税
発行年月:2022年12月25日
https://honto.jp/netstore/pd-book_32207543.html
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◎神田さんによる、先回のフクリパbooks記事はこちら。
これからの福岡をつくるのは「あなたたち」です。|スタブロブックス(編著) 『 ローカルクリエーター』
◎神田さんが営む六本松の本屋「本と羊」の取材記事も合わせてお読みください
【福岡市中央区・六本松】BOOKSHOP 本と羊 福岡発!目指すは本屋のサグラダ・ファミリア ?!
【BOOKSHOP 本と羊】
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