5月ですね。そろそろ新しい場所に慣れて来たのではないでしょうか?そんな方にもそうでない方にも勧めたいのが、今回ご紹介する本です。
ある一人の主婦が長野県東御市にある御牧原台地で始め、年商3億円に成長した「日用品とパンの店 わざわざ」。
この本には、「わざわざ」の代表である平田はる香さんがどうしてお店を始める事になったのか?
そしてそのプロセスを通して、パンの商品開発の考え方や販売の変化、日用品の仕入れに対する考え方、従業員たちへの教育や働くことに対しての意味や意義、お客様との毎日のコミュニケーションの中で生まれる葛藤と反省と成長の記録が綴られています。
現在は4店舗を経営されていますが、進化していくお店が、果たして働く人々やお客様の心を健やかにしているのか、日々模索していらっしゃいます。
彼女はこう書いています。
うまく生きることよりも、健やかでいられる方法を。
・パン屋が人間らしい生活をできないのはふつう
・売上を長時間労働でカバーするのはふつう
・利益を出すために人件費を削るのはふつう
・お客さまに「NO」と言えないのはふつう
・成功のためにはヒエラルキーに従うのがふつう
心を犠牲にしてまで、守るべき「ふつう」なんてない。
ふつうとは何なのか、お客様や利益を第一に考えるあまり社員の労働環境を犠牲にしていないか。そして本当にお客様は絶対なのか・・・。ふつうとは決して常識ばかりではないのです。
読んでいて思うのは、「おそらく彼女だったから出来た」という部分も否めない点です。商売とは時として誰よりもわがままで自由な人でなければ、多くの人を束ね、常に新しいアイデアで挑戦出来ないかもしれないのです。それも誰よりもやりたいことがあり、やりたいことを貫く信念がある人。
この本はもしかしたら、自分で何かを始める人にはマニュアル的な部分ではあまり向いていません。どちらかというと平田さん本人の心の部分が多く書かれています。起業した人の努力や葛藤を読者の心の正面に置いて読んでほしい一冊です。
タイトルに「やりたいことってあったほうがいい?」と書きましたが、僕がこの本の文章で皆さんに考えて欲しいと思ったのはこの部分でした。
時々高校生や大学生、社会人の方が僕のお店を訪れた時にこう言われるのです。
「将来やりたいことが見つからない」と。周りがやりたいことを見つけ、その目標に進んでいく。確かにそんな中での不安や焦りは当然ですが、はたして本当にやりたいことがないといけないのでしょうか。
平田さんは、結婚前にはDJやWebデザイナーをされていましたが、結婚してからはしばらく「主婦」をされていました。少し物足りなさを感じる日々。そんな時に旦那さんから「できること」をやればいいのでは?と言われ、趣味で作っていたパン作りや日用品の収集に没頭していきます。そして移動販売を経て、現在のお店へとつながっていきます。つまり、「できること」が「やりたいこと」に変化して行ったのだと思います。
もしみなさんがやりたいことが見つからないというのなら、まずできること(好きなことでもいいです)を洗い出し、それにしばらく没頭してみてはどうでしょうか?やりたいことも努力しなければうまくできないかもしれない。それに好きでなければ続かないのではないでしょうか。
焦らないで下さい。いつか必ず生活や仕事の日々の中でやりたいことがパッと出てくる日が訪れます。そのために今はできることを懸命に楽しく続けてみてください。
やりたいことがみつからない。それはたぶん、成長して自立したいという前進の証かもしれません。
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山の上のパン屋に人が集まるわけ
平田 はる香(著/文)
発行:サイボウズ
四六判 244ページ
定価 1,600円+税
書店発売日:2023年4月28日
https://honto.jp/netstore/pd-book_32329664.html
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◎神田さんによる、先回のフクリパbooks記事はこちら。
今回は「番外編」です。新しい春を迎えた若者たちに。命と希望の話。|土門蘭 著『死ぬまで生きる日記』
◎神田さんが営む六本松の本屋「本と羊」の取材記事も合わせてお読みください
【福岡市中央区・六本松】BOOKSHOP 本と羊 福岡発!目指すは本屋のサグラダ・ファミリア ?!
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