学校や就職で新しい春を迎えた皆さん、入学式や入社式を終えて、それぞれの場所で希望や期待を胸に、反面、緊張感や不安とともに歩き出していらっしゃることと思います。
そんな皆さんのためにいつもならリープアップのための一冊をご紹介しているのですが、今回はあえて生きることに対して、どうしても読んで考えて欲しい本にしました。
「死にたい」
この言葉を口にしたり、頭にいつもよぎるような日々をもし送っているような方がいれば、この本を一読して自分の状況と照らし合わせ、少しでも希望の光が見えていただければと思います。
あなた一人だけではない「死にたい」という苦しさをかかえる誰かの心に寄り添いたくて選んだ一冊です。
著者の土門蘭さんは小説、短歌、エッセイなどの文芸作品や、インタビュー記事を執筆する方で、子どもの頃から抱えている「死にたい」という気持ちに長年悩まされ、心療内科でうつ病と診断されました。
治療の末、一度は寛解したかに思えましたがそれから結婚〜育児、文筆業の多忙な生活の中でうつ病の症状は完全に消えることはありませんでした。再受診しましたが、今度は家族に相談の上、薬での治療をしないことを決断し、2020年の春に心理カウンセリングをオンラインで受診することに。
そこで心理カウンセラーの本田さん(仮名)という一人の女性と出会います。
この本では彼女との2年間の心理カウンセリングのやりとりを通して、土門さんの心がどう変化していくかが綴られています。「日記」と書かれてはいますが日付はありません。これは日々が流れる中で2週間に一度、画面越しに出会う二人の対話の記録です。
「死にたい」という気持ちの根底にある原因は何なのか?どう対処して自分に向き合えばいいのか。
本田さんの言葉や日々の療法を通して、第三者に読まれる事は分かっているとはいえ、ここまで自分をさらけだし、細かく気持ちの変化を正直に書いている。僕はその土門さんの素直な強さと孤独感にとても共感しました。
彼女が少しづつ前向きになっていく文章の流れの中で、心理カウンセリングという仕事の重要さにも気づきました。私は本屋ですが、今後こういうココロの支えになる取り組みを店で行っていこうと考えています。
店は訪れる人たちの悩みを本から支え、心理面では定期的にカウンセリングのプロに在席してもらい、お客さんの悩みを聞きアドバイスする・・・本屋なのであくまでも悩みを聞く「入り口」であり「きっかけ」までしか出来ませんが、本と羊がコンセプトにしている「誰かの背中を少しだけ押す」ことの出来る場づくりを目指しています。
新しい場にすぐなじめればいいのですが、溶け込めず悩み苦しんでいる若い人を本屋で沢山見てきました。そういう彼らや皆さんに土門さんの日記を通して「死ぬまで生きる」ことがどういうことかを考えていただきたいです。
皆さんの道のりはこれから長くて険しいです。何度も挫折感を味わうこともあるでしょう。でもそれを乗り越えていって欲しい。
「死にたい」なんて考えずに生きていってください。生きていれば「希望」はあるのです。人生は一度。死にたくなくても必ず死にます。存分に「生」を謳歌してください。
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死ぬまで生きる日記
土門蘭(著)
出版社:生きのびるブックス
定価:1,900円+税
書店発売日:2023年4月20日
https://honto.jp/netstore/pd-book_32318479.html?partnerid=02vc01