福岡・博多のDNA的な手締め『博多手一本』とは。『博多手一本』の歴史と全容を徹底解説!

陽気でお祭り好きな上に開けっぴろげな博多っ子の気質を象徴するような手締め『博多手一本』はどこから来て、どのように根付いっていったのでしょうか。古事記までさかのぼる手締めの歴史を追いながら、博多商人と〝天下の台所〟だった大坂とのつながりにも注目しつつ、博多手一本の全容に迫ります。

博多っ子の心をかき立て、来訪者らも魅了する『博多手一本』    


博多祇園山笠の櫛田入りで一番山笠は、『祝いめでた』をうたって博多手一本を入れることができる(画像提供:博多祇園山笠振興会)

# 「よーお」(パン・パン)
# 「も一つ」(パン・パン)
# 「祝うて三度」(パパン・パン)
福岡・博多に地元独特の手締め、『博多手一本』

博多祇園山笠をはじめとする祭事や会合、宴席・飲み会などの場で独特の掛け声やリズムが鳴り響く。

博多手一本では、参加者が体の前で手を打つ体勢を整えた上で、その場を仕切る者の掛け声に合せて行うのが慣例だ。
大きな会合や式典などの場では、博多の祝い唄である『祝いめでた』を唱和後、博多手一本を行う流れも多い。

福岡・博多において、会合や宴会などを博多手一本で締める場合、「異議なし」という意味がある。
博多手一本の持つ「締め」と「異論なし」の意味合いから「この結婚を了承しました」ということで結婚披露宴でも行われることも多い。
また、手一本後はお開きとなって異論は許されず、手一本後の拍手も不作法とされている。

博多手一本は通常の一本締めと異なるため、県外からの来訪者の多い式典や結婚披露宴では博多手一本についての説明や事前練習をした上で本番に臨むことも多い。

もっとも、博多祇園山笠での参加者らが行う博多手一本は、締めとしての意味合いよりもあいさつとして行われている。
なお、博多祇園山笠での博多手一本は、高揚感からかスピードも速く、「もーつっしょ」「まひとつしょ」、「いおうてさん」「よーてさんど」「よーとさん」「よてさん」と訛って聞こえることも多い。

戦前は、「博多手一本で『締める』」という言い方をしていた。
しかし、戦後、「締める」という表現は「店を閉める」にも似て縁起が悪いと指摘された。
そして、地元の商工団体や文化団体が主導して、「お客さまを招き入れる」という意味合いから「入れる」という表現に統一したそうだ。
博多っ子のDNAともいえる博多手一本について、櫛田神社で権禰宜を務める髙山定史さんは、次のように語る。


櫛田神社で権禰宜を務める髙山定史さん

髙山さん

博多を代表する神事として奉納される博多祇園山笠は、地域や各流が一致団結して行動することによって、うまく運営できます。
会議でいろいろな意見が出た末に博多手一本を入れることで、その場をまとめ上げるという方法は、実に博多らしい締め方ではないでしょうか。

『古事記』にも出てくる手打ち、手締めとは何か

日本には古来、物事が無事に終わったことを祝って関係者が、リズムを合わせて手拍子を打つ『手締め』という風習がある。

『古事記』では、大国主命による出雲の国譲りで「拍手(かしわで=柏手)を打って承知した」ことを記している。
手締めの語源は、「手打ちによって締める」だ。
商人文化の色濃い関西地方では、『手打ち』とも表現する。
一方、武家文化が浸透していた関東地方では、手打ちが成敗にも通じるため、手締めと呼ぶようになったと推定される。

全国津々浦々にある手締めの中でもっとも一般的な手締めは、『江戸締め』だ。
江戸締めには、「パパパン、パパパン、パパパン、パン」という『一本締め』と、一本締めを3回繰り返す『三本締め』がある。

一本締めおよび三本締めの拍数である≪3回・3回・3回・1回≫については、3拍を3回することで≪九≫となり、もう1回手を打つことで九に点が打たれた≪丸≫として≪丸く納まる≫との意味合いで江戸っ子が縁起の良さで好んだ。

なお、一本締めと誤用されることの多い『一丁締め』とは、「よぉ〜っ、パン」と1回の拍で終わる手締めだ。

もともと三本締めが正調であり、その略式である一本締めが一般的に広がり、一本締めをさらに省略した『一丁締め』は、短気な江戸っ子らが始めたとされる。
一丁締めは昨今、首都圏で最もポピュラーになりつつあるものの、関西圏、中でも京都で一丁締めを見掛けることはないそうだ。

博多手一本のルーツは、日本書紀も記す大阪の古社にあった    

昔から博多で商家の夫人を指す『ごりょんさん』という言葉は、大阪・船場に由来するとされる。

商人の町・博多は江戸期、〝天下の台所〟だった大坂と商い上のつながりも深かった。
大阪・船場の商人らと商売をした博多商人は、上方での商いがまとまった際に大阪締めで締めていた。

そして、博多商人らが大阪締めを地元に持ち帰り、博多の祝い唄『祝いめでた』や博多祇園山笠などとも交じり合いながら、博多手一本として博多の地に根付かせたと考えられる。

つまり、大阪締めが博多手一本のルーツなのだ。
大阪締め自体は江戸期、上方における手締めの作法として成立していたものの、当時は単に『手打ち』と呼ばれていた。
一般的な大阪締めは、セリフと手拍子で構成され、次のような3節からなる。

# 「打ーちまひょ(打ーちましょっ)」 パン・パン
# 「もひとつせ」 パン・パン
# 「祝うて三度」 パパン・パン   ~天満・船場周辺~
パン・パン・パン ~生国魂神社周辺~
パンパン・パン ~平野郷~
「おめでとうございますー」パチパチパチ…(拍手)

大阪締めの起源は大阪最古の神社であり、日本書紀にも登場する生國魂神社(いくくにたまじんじゃ、大阪市天王寺区)といわれている。
生國魂神社に伝わる生國魂締めは、一般的な大阪締めよりも長く正調とされている。
生國魂締めでは、3節目が「祝うて三度」「パン・パン・パン」となり、さらに「めでたいなぁ」「パンパン」、「本決まりぃ」「パンパン」と続く5節の構成だ。

正調の5節と一般的な3節の違いは、正調の大阪締めの発祥地である生國魂神社の祭礼である生國魂祭が氏地内を練り歩く陸渡御だったのに対して、一般的な大阪締めが生まれた大阪天満宮での天神祭の中心は船渡御だった。
時間的な制限のない陸渡御に対して、川の流れが速い天神祭での船渡御では、すれ違う船上での時間的余裕が少なく、手締めを3節に短縮したとする説が有力だ。
そして、人出の多い天神祭での3節の大阪締めが広く浸透したと考えられている。

生國魂神社©(公財)大阪観光局(ID:TBJ-001284)

江戸締め・大阪締め・博多手一本、日本三大拠点都市に手締めアリ

東京・江戸締め、大阪・大阪締め、福岡・博多手一本……。
日本の〝三大拠点都市〟である東京都区部、大阪市、福岡市では長年、独自の手締めが受け継がれている。

手締めは商談や会合、宴席、式典などに加えて祭事でもよく披露されている。
福岡市をホームタウンとするプロサッカーチーム『アビスパ福岡』は2017年のシーズンから勝利試合後、博多手一本を入れている

『アビスパ福岡』は勝利した試合後に博多手一本を入れている ©avispa fukuoka

「名古屋にご当地締めがない」ことをきっかけに日本舞踊西川流の西川右近総師らは2014年、名古屋弁の敬語表現である「なも」を取り入れた独自の手締め『名古屋ナモ締め』を考案した。
そして、中日ドラゴンズの交流戦で披露され、名古屋証券取引所の大発会でも執り行われている。
古来、神社の祭事との関係も深かった手締めは、いまやスポーツ界にも浸透し始め、地域に一体感をもたらす新たな可能性も秘めている。この点も踏まえて髙山さんは、次のような見解を示す。

髙山さん

博多手一本をはじめ先人らが築いてきた作法や伝統文化を地域の財産として後世へ伝えていきたいと思います。

そして、神社の果たす役割の一つとして、博多の良さや魅力を発信していく場所であり続けたいと考えております。

さまざまな魅力や可能性を博多手一本は秘めているものの、紙幅の関係もあって、この辺りで締めたいと思う。
「よーお」(パン・パン)、「も一つ」(パン・パン)、「祝うて三度」(パパン・パン)。

【番外編】博多の祝い唄『祝いめでた』の起源は伊勢音頭!?      
博多手一本の前に唄われる『祝いめでた』では櫛田神社の風景もうたい込む(画像提供:福岡市) 

博多手一本の前にうたわれる『祝いめでた』は、博多の祝い唄だ。歌詞は7番まであり、博多祇園山笠では主に1番のみを唱和し、博多どんたくでは1番~3番を唱和する。

祝いめでたの起源自体は、『伊勢音頭』という説がある。
江戸期、庶民に許された唯一の物見遊山である『お伊勢参り』に出かけた博多の町民たちが、現地でうたわれていた祝い唄を覚えて、持ち帰ったのが始まりと言われている。
祝いめでたの歌詞に出てくる「アレワイサソ」や「ジョンガネ」などは伊勢音頭にも見られる。

博多祇園山笠のフィナーレを飾る7月15日早朝の追い山では、最初に櫛田入りをする一番山笠のみ祝いめでたをうたうことができ、大変名誉とされている。

一、
祝い目出度の若松様よ 若松様よ
枝も栄ゆりゃ葉もしゅげる
エーイーショウエ エーイショウエー
ショウエイ ショウエイ ションガネ
アレワイサソ エサソエー ショーンガネー

二、
こちの座敷は祝いの座敷 祝いの座敷
鶴と亀とが舞い遊ぶ
エーイーショウエ エーイショウエー
ショウエイ ショウエイ ションガネ
アレワイサソ エサソエー ショーンガネー

三、
さても見事な櫛田の銀杏(ぎなん) 櫛田の銀杏(ぎなん)
枝も栄ゆりゃ葉もしゅげる
エーイーショウエ エーイショウエー
ショウエイ ショウエイ ションガネ
アレワイサソ エサソエー ショーンガネー

なお、歌詞のカタカナ部分については、意味不明とされるものの、2021年7月2日に放送されたKBCラジオ『博多の魂~エイショ-エ~』において、番組スタッフが独自に調べた結果、下記のように推測している。
エイ=「えい!」「さあ!」(掛け声)
ショウエイ=「歌いましょう」
アレワイサソ=「私も誘いましょう」
エサソエー=「ええ、誘いましょう」
ショーンガネー=「しょうがない」

【参照サイト】

博多祇園山笠用語辞典『手一本』
日本の歩き方『独特な福岡の手締め「博多手一本」 起源を探った』
ドラゴンズニュース『名古屋オリジナルご当地締め『勝利のナモ締め』を交流戦でお披露目!』
博多祇園山笠用語辞典『祝いめでた』
郷土の音楽:福岡県

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福岡を代表するお祭り「博多祇園山笠」では、各町から舁山前に集合した時などにも行われる「博多手一本」。

ほかにも、宴会や飲み会の場で行われるなど、福岡市民にとってはさまざまなシーンで欠かせない存在です。

 

そんな博多手一本をはじめ、独自の風習や習慣がある福岡は、日本の中でも長い歴史や多彩な文化を持つ街だといわれています。

 

山笠などのお祭りはもちろんのこと、神社仏閣などの景観や歴史的な価値を考慮した不動産開発が進められている地域も多く、今後の資産価値が期待されています。

 

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編集者兼ライター
近藤 益弘
1966年、八女市生まれ。福大卒。地域経済誌『ふくおか経済』を経て、ビジネス情報誌『フォー・ネット』編集・発行のフォーネット社設立に参画。その後、ビジネス誌『東経ビジネス』、パブリック・アクセス誌『フォーラム福岡』の編集・制作に携わる。現在、『ふくおか人物図鑑』サイトを開設・運営する。

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