春ですね。
花も団子もいいですが、ここで私から素晴らしい提案をします。
「イネ科に思いを馳せないか?」
この時期の田畑で、青々とした葉が気持ちよさそうに風でそよいでいるのを見かけませんか? それはきっと、イネ科のコムギです。
3月はまだ背も低く穂は出ていませんが、こんなに鮮やかな緑色です。これが全面小麦色になる初夏は「麦秋(ばくしゅう)」の時期とも呼ばれます
生えたばかりの頃はこんな感じ
実は福岡は、全国1位の北海道に次いで小麦の生産量が多く、隣県の佐賀は国内3位。要するに、2県をまたぐ筑紫平野にはこの時期麦畑が広がっており、それが国内の小麦の生産量を支えているのです。
さて、このコムギやイネ、そしてトウモロコシなど、我々人間の主食たるイネ科植物と動物の間で、命がけの進化のいたちごっこが繰り広げられたことはご存知でしょうか。
イネ科植物は動物のエサに適さないように進化をしており、葉っぱは固くて消化しにくく、栄養分もほとんどありません。
600万年ほど前にイネ科植物が「ケイ素」という固い物質を蓄えるようになった時には、エサを食べられなくなった草食動物の多くが絶滅したという説もあります。
それでもイネ科植物を食べないと生きられない草食動物は、ウシのように4つにした胃をフル活用して葉を柔らかくし、発酵させて栄養をつくったり、ウマやウサギのように盲腸を発達させて分解できるように進化しました。
すごくないですか?この、互い譲らぬ命がけの進化のいたちごっこ!
そして人間は、福岡人も大好きなラーメンやうどん、美味しいお米を食べて生きるために、イネ科などの植物を「利用している」と思いがちですが、果たしてそれは嘘か実か。
石高を競ってコメの生産量を増やした戦国武将、チャが引き金になった独立戦争、ワタがもたらした日本の自動車産業、、、そう聞くともしかして、人間は植物に翻弄されているとも思えませんか?
植物は人間を利用することで、世界中で分布を広げることに成功しているとも言えないでしょうか。
植物学者の稲垣栄洋さんが書かれた『世界史を大きく動かした植物』は、そんな風に植物視点で世界史を読み解いた本。歴史弱者の私でも楽しく読めるほどわかりやすく書かれているので、どんな人にも(子どもにも!)おすすめです。
イネやコムギのほか、トマトやタマネギ、チューリップなど14の植物を取り上げており、最後の植物はこの時期誰もが目にする「サクラ」です。
万葉集ではサクラを詠んだ歌よりもウメを詠んだ歌の方が多い一方、古今和歌集はその逆なのですが、それに関連しているのは「遣唐使」なのだそうです。
さあ、これは一体どういうことでしょう?
今春のお花見の小噺に、ぜひおすすめしたい一冊です。
こちらは福岡県うきは市の桜並木。うきはは日本の三大麺どころの一つで、平野に広がる美しい麦畑とサクラが一緒に見られます
* * *
世界史を大きく動かした植物
稲垣 栄洋(著/文)
発行:PHP研究所
四六判 224ページ
定価 1,400円+税
https://amzn.to/3M5JXgr
★前回の記事はこちら
仏教は、無理ゲーがデフォの人生で、少しでも心穏やかにプレーするための攻略法|『世界が仏教であふれだす』稲田ズイキ
https://fukuoka-leapup.jp/biz/202202.431