“企画のお焚き上げ”シリーズ その3

ネーミングの極意:名前は、覚えて、呼ばれて、社会性を身につける。

福岡でいちばん企画書を書いてきたプランナー・中村修治さんの連載第三回!過去の企画の中から渾身の作を引っ張り出してもらう“企画のお焚き上げ”シリーズ第三弾は、ネーミングについて。しかも今回は採用されたコンセプトの企画書も公開してくれました!ぜひ参考にしてみてくださいね。

“企画のお焚き上げ”シリーズ その3

戦略プランナーとは、その企業が上手くまわり出すように、その商品がより多く売れるように、戦略を組み立てる。そこで、重要なのは、その企画に拘るみんながうすうす感じていたことを明文化し、旗印をつくることである。その旗こそが“コンセプト”。そんでもって、その“コンセプト”をいちばん体現するのが「名前=ネーミング」であったりするわけである。

従って、ネーミングを依頼されると言うのは、戦略プランナーにとって、実は、めっちゃ光栄なことで、チカラの見せ所であったりする。今回のお焚き上げは、ネーミングプラン。国体通りのドンキの隣の1階にSonyのあるビルが「天神CLASS」と名付けられた時の企画書を公開。名付けって思いつきじゃないのだよって・・・。

名付けってコンセプトを整理することから!!

ディベロッパーは、建築家に施設の設計を依頼する。どのような施設にしたいのか!?どのようなテナントを誘致するのか!?その想いと経済合理によって、それらしい“施設コンセプト”は完成する。

その言質に、問題はない。至極ごもっともなことが並べられる。こういう施設のネーミングは、そんなコンセプトを整理することからはじまる。いわゆる“理解”である。言い換えると“承認”。

とても好意的に、その出生を受け止める。誕生するもの自体を否定していてははじまらない。生まれてくるものを好意的に受け止めて、その子の未来をより明るくするために名付けはするものである

ネーミングは、みんなを動かす!!

往々にして“施設コンセプト”というのは、わかったようでわからない。

良いことが当たり前のように明文化されていくので、なるほど!!と思うことはできるが、その施設コンセプトから、地域社会の人々に、その施設が呼ばれて、愛されて続けていく“絵”は浮かびにくい。

平たく言うと、そのコンセプトのままでは、デザイナーさんは、施設ロゴを作れない。広告の図案も浮かばない。名前を付けると言うことは、みんながその施設を「その名前で呼ぶ」という現象を生み出す。みんなが承認をすることである。だから、すごく大事な仕事であるわけだ。

動き出すための“コンセプト”に転換する!!!

施設コンセプトが静的なものであるとしたら、ネーミングに必要なのは“動的”なコンセプトである。どんなプロモーションが起こると面白いのか!?どんなコミュニケーションが生まれると本望か!?そんなことを、改めて明文化していく過程で、ネーミングの方向性が見えてくる。キーワードが自ずと生まれてくる。

ネーミング案は、いくつも出さない!?

ネーミングは“思いつき”ではない。どう承認されたいのか!?どう呼ばれたいのか!?の“想い”が集結されたものである。

だから、たくさんの案を提示するべきではないものである。こんな子になって欲しい、こんな子に育って欲しいと願って大事に、数案を提示さべきものである。

いくつも方向性を示すようなネーミングプレゼンは、クソ中のクソである。

おかげさまで「天神CLASS」は、一発必中で決定した。

“絶妙にダサい”という社会性を信じている!!

大手広告代理店の社長さんからこんなことを言われたことがある。
「中村ちゃんの付ける名前は、絶妙にダサいんだよなぁ!?いや褒めてるよ!!( ^ω^ )」
 
DQNな名前なんてもってのほかである。名前は、覚えて、呼ばれて、社会性を身につける。愛されたいものは、愛嬌がなくてはいけない。ダサくていい。ダサさも愛嬌だと考えている。ワタシは「しゅうちゃん」と呼ばれ続けて今がある。

ばあちゃん食堂の「万能まぶし」。ネーミング企画の参考にしていただけたらと思う。このノウハウは、墓まで持っていくようなものでもないので公開しておく。

▶参考記事:「ばあちゃん食堂」を運営するうきはの宝代表・大熊充さんに聞く!高齢者と地域でビジネスを成功させるコツと秘訣

①  意味を考えた!!

「万能ふりかけ」「万能調味料」「万能スパイス」いろいろと案は出ていた。どれも正解である。どれでもいい気もする。でも「ふりかけ」「調味料」「スパイス」は、一般名詞だ。誰もが、その名詞を聞くと、その使い方を限定させてしまう

であるなら「動き」のある言葉の方がいい。どんな用途にもはまる。ジャンルを超えたそのいい加減さを表現できた方がいい。
 

②音を考えた!!

ネーミングでは、有声音=B、D、G、L、M、N、R、V、Zが多く入った商品名の方が、覚えやすくてインパクトがあると言われている

ばあちゃん食堂の「ば」。万能の「ば」。そこにもうひとつ濁音を持って来た方が音的にも面白い。ばあちゃん食堂の「万能まぶし」は、愛でたくBNDBNMBとなる。スタバよりバババである。笑
 

②  いいものはパクらせてもらった!!

そもそも、念頭にあったのは「バカまぶし」である。Makuakeでの大ヒットを間近に見ていた。バカまぶしを販売している社長さんにも、ちゃんと了承を得た。常日頃のおつきあいは大事だな。良いものは、パクるべきであるヒットしたものには、必ず、意味がある

名前は
みんなに呼ばれて
社会性を身につけ
ブランドになるのだよ。

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プランナー
中村修治
1986年に立命館大学を卒業。1989年にバブルの泡に乗って来福。1994年に㈲ペーパーカンパニーを設立し独立。福岡に企画会社など存在もしなかったころから30年も最前線で生きているプランナー。企画書を書いた量とプレゼン回数は、九州No.1だと言われている。JR博多シティのネーミングやテレQのCIなどが代表的なお仕事。コラムニストとしても多誌で執筆。

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