【特集】福岡はすごい!

政令指定都市の人口増加数・率で連続トップ!福岡市人口増加の要因と戦略とは。

2020年10月に実施された『第21回国勢調査』の確定値で福岡市は、人口増加数と人口増加率が全国20の政令指定都市で最大でした。人口増加数、人口増加率共に、5年前の調査に引き続き首位に輝きました。そこで今回は、1920年に実施の『第1回国勢調査』以降、100年余りにわたって人口を増やし続ける〝元気〟都市・福岡市における人口増の要因や都市としての戦略について考えてみます。

福岡市の人口

福岡市の推計人口は、2022年8月1日現在で162万9,837人である。
参照:https://www.city.fukuoka.lg.jp/soki/tokeichosa/shisei/toukei/jinkou/jinnkousokuhou.html

人口増加数・率で政令市トップの福岡市が、福岡都市圏や福岡県の人口増を牽引

総務省が2021年6月に発表した「第21回国勢調査」(2020年10月1日実施分)の確定値によると、福岡市の人口は5年前の調査から7万3,711人増えて、4.79%増の161万2,393人となった。

福岡市では、この5年間で実に太宰府市(同確定値7万3,164人)にに相当する人口が増えた計算となり、人口増加数と共に人口増加率においても全国20政令指定都市の中でもトップだった。

政令指定都市で人口増加数・率トップである福岡市の存在は、周辺市町にも大きな波及効果をもたらしている。福岡市と近郊8市7町で構成する福岡都市圏の人口は、前回の250万7,518万人から10万2,230人(確定値)増えて4.7%増の260万9,748人(同)となった。。

中でも福岡市に次いで多い8,252人増(同)となった福津市の人口増加率14.0%は、福岡県内の市町村でトップ、全国的にも第6位という高い伸び率だった。また、福岡市に隣接する同10.2%の久山町が、全国10位、同8.5%の新宮町が同11位となっている。

一方、福岡県は、前回から3万3,658人増えて0・7%増の513万5,214人(同)だった。1970年の国勢調査以降、県全体としては増加し続けているものの、県下の60市町村のうち、人口増は1/3強の22市町に留まった。つまり、残り38市町村では人口減に直面しており、福岡県全体では人口減の影が忍び寄りつつある。
 

100年前の福岡市は、九州で第4位の都市だった。第1位の都市は意外にも…

今回、人口面での福岡市の躍進を明らかにした「国勢調査」は、日本に住んでいるすべての人と世帯を対象とする国の最も重要な統計調査であり、5年ごとに実施する。

「第1回国勢調査」を実施した1920年は、今回速報値を発表した「第21回国勢調査」からさかのぼって、ちょうど100年前となる。当時、日本の人口5,596万3,053人は、今回の速報値で明らかになった現人口1億2,622万6,568人の半分以下だった。

そして、九州最大の都市は当時、意外にも人口17万6,534人の長崎市。第2位は10万3,180人の鹿児島市であり、第3位に10万235人の八幡市(現北九州市)が続き、当時9万5,381人の福岡市は、九州で第4番目に位置していた。

1920年10月時点における全国の市町村数は1万2,244(市83、町1,365、村1万796)であり、「第21回国勢調査」を実施した2020年10月時点における市町村計1,724(政令指定市20、市772、町743、村189)とでは、状況も大きく異なる。100年前の「第1回国勢調査」分を現市域で集計し直すと、トップは八幡製鉄所を擁していた現在の北九州市となる。それに続く第2位は現在の熊本市であり、九州を管轄する国の出先機関などが当時相次いで設置されていた。福岡市は、現市域でも第3位だった。

その後、現福岡市は「第3回国勢調査」で現熊本市を抜いて第2位に浮上したものの、九州最大の都市は長年、現北九州市だった。1980年実施の「第13回国勢調査」で福岡市は、北九州市を抜いて第1位に躍り出た。国勢調査100年の歴史を振り返ってみると、福岡市が九州最大の都市という地位に着いたのは直近40年のことといえる。中でも最近10年の伸長は、特に著しいのだ。

福岡市の人口増のヒミツは、戦略的で計画的な取り組みにあった!?

では、なぜ福岡市は政令指定都市の中でもトップとなる人口増加数・率となったのか? この点について、福岡の成長戦略の策定から推進までを一貫して手掛ける「福岡地域戦略推進協議会(Fukuoka D.C.)」事務局長の石丸修平さんは、次のように解説する。

石丸さん

コンパクトシティである福岡市は、暮らしやすい住環境に加え、交通利便性にも優れた都市です。

実は、九州自体も交通利便性が良く、人口の流動性も高い地域であり、魅力的な働く場や学びの場をもつ福岡市への人口流入が、構造的に続いていました。

最近10年、交流人口拡大や創業支援に取り組んできた福岡市においては、国際会議などの戦略的な誘致などによる交流人口の増大を生かした魅力的な情報発信ビジネスマッチングに加えて、スタートアップ企業などへの支援策(注1)も奏功して新たなビジネスの創出もできており、人口増加に拍車が掛かっています。

 



(注1)福岡市では2012 年に「スタートアップ都市ふくおか」宣言を行って以来,スタート アップ支援を都市の成長の柱と位置づけ,グローバル創業・雇用創出特区の指定を受 けるとともに,スタートアップや支援者のコミュ ニティと距離を近くに保ちながら,唯一無二のスタートアップ・エコシステム形成に向け、様々な取り組みを行ってきた。
これまでの取り組みをさらに加速し,企業・大学・行政の連携を深めることで,新たな 価値を創造し,都市の持続的成長・活力となるスタートアップを生み出すスタートアップ・ エコシステムの確立に向けた,新たな取り組みも始まっている。

地元の産学官民一体のシンク&ドゥタンクである「Fukuoka D.C.」は、〝経済拡大による雇用創出で人口増を図る〟ことを骨子とした「第一次FDC地域戦略」を打ち出した。そして数値目標として掲げた、設立時の2011年度比での雇用プラス6万人、GRP(域内総生産)プラス2.8兆円、人口プラス7万人は、2020年度までに達成している。

「Fukuoka D.C.」は、国際会議誘致などを目的とした官民連携組織「Meeting Place Fukuoka」を立ち上げ、ビジネスマッチングにも積極的に取り組んできた。また、国家戦略特区「グローバル創業・雇用創出特区」の指定にも尽力し、「天神ビッグバン」プロジェクトをはじめ、九大跡地での「FUKUOKA Smart EAST」事業や「実証実験フルサポート事業」、さらに「スタートアップカフェ」や「Fukuoka Growth Next」創設などによるスタートアップ支援など幅広く手掛けている。

福岡市においては、九州域内からの構造的な人口流入だけでなく、都市経営面において戦略的施策を打ち出して、地元の産学官民が一体となって取り組んできた成果が、人口増という数字となって表れているといえそうだ。
 

〝住みたい街ランキング〟1位の福岡市は、住んでいる市民の満足度も高い

第1位:福岡市(得票率7.2%)、第2位:横浜市(同6.2%)、第3位:那覇市(同5.3%)、第4位:仙台市(同4.5%)、第5位:札幌市(同4.1%)――。大東建託㈱が2020年11月25日に発表した『いい部屋ネット 住みたい街ランキング2020< 全国版>』(調査対象1万4,234人)において、第1位に輝いたのは福岡市だった。


(出典:Fukuoka Facts)

福岡市に住みたいと回答した非居住者からは、「交通利便性の高さ」「物価の安さ」「飲食店が充実していて食事がおいしい」「以前住んでいて住みやすかった」などのコメントが数多く寄せられたという。これらの声を通じて、福岡市については食のおいしさや物価安、交通アクセス面での評価やイメージが高いことが明らかになった。

非居住者から〝住みたい街(自治体)〟として高い評価を得た福岡市だが、実際に居住している福岡市民からの満足度も高い。

福岡市が、市内に居住する満18歳以上の男女2,410人を対象に実施した『令和二年度市政に関する意識調査』によると、「福岡市が好き」という市民の割合は97.7%。そして、「福岡市は住みやすい」に96.7%、「福岡市に住み続けたい」にも92.6%の市民が「はい」と回答しており、福岡市民の満足度は極めて高い。
 

(提供:福岡市)

“超成長都市”福岡市は今後、どのような都市戦略を進めていくのか?

日々暮らす市民からの評価も極めて高く、市外の非居住者からの人気も高い福岡市は今後、どのような戦略に基づいて都市としての魅力を高めていくのだろうか?

この点については、2021年度から10年計画である「第2期FDC地域戦略」が、スタートしている。

日本では自治体単位のタテ割のまちづくりになっているが、世界の潮流としては関係する自治体に〝ヨコ〟串を差しての都市圏単位のまちづくりが主流だ。このような時代の流れも踏まえて、「Fukuoka D.C.」では福岡都市圏での取り組みとして短期的には、外国人や障がい者、LGBTらを「ダイバーシティ(多様性)」の観点での新たな価値創造を試みる。多様な人々が、多様な働き方や暮らし方を実現できる環境の構築である。

また、内閣府のスタートアップ・エコシステム拠点形成戦略に基づいて、福岡市は「グローバル拠点都市」にも指定されており、中期的には、ビジネスエコシステム」(注2)の確立による持続的な価値を創出していくビジネス環境づくりにも注力していく

(注2)企業や顧客をはじめとする多数の要素が集結し、分業と協業による共存共栄の関係を指す。

さらに長期的には、発展途上国などで発生している都市課題を解決していく都市ソリューションでは、福岡市が長年培い世界トップクラスの効率性を誇る、水道技術やゴミ処理の「福岡方式」などの移出にも取り組んでいく考えだ。

“超成長都市”と称されることも多い福岡市のポテンシャル(強み)のひとつは、明治以来の官民連携によるまちづくりだ。今日、そのDNAの一つが「Fukuoka D.C.」であり、産学官民が一体になって成長戦略を策定し、数値目標を掲げて取り組んでいる。お祭り好きでラテン気質的な取り組みに注目が集まりがちだが、このような地道で黒子的な取り組みの積み重ねがあるからこそ、今日の福岡市を隆盛へと導いている。そう筆者は考える。

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<参照サイト>
令和2年国勢調査 人口速報集計結果
令和2年(2020年)国勢調査結果速報(福岡市独自集計)
国勢調査報告 大正9年 全国の部 第1巻(国立国会図書館オンライン)
FukuokaFacts住みたい、行きたい、働きたい-住みたい街ランキング-
住みたい街 「自治体」ランキング 全国版・2020
令和2年度 市政に関する意識調査結果概要(ふくおかボイス)

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編集者兼ライター
近藤 益弘
1966年、八女市生まれ。福大卒。地域経済誌『ふくおか経済』を経て、ビジネス情報誌『フォー・ネット』編集・発行のフォーネット社設立に参画。その後、ビジネス誌『東経ビジネス』、パブリック・アクセス誌『フォーラム福岡』の編集・制作に携わる。現在、『ふくおか人物図鑑』サイトを開設・運営する。

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