【石原和幸の夢コラム】

福岡の人々が思い出刻む「かしいかえん」の幕に、1万本のチューリップ咲かす!

今年も残り少なくなりました。年々時が過ぎるのを早く感じ、1年がアッという間に終わるように思えます。そして12月30日には、福岡市東区にある遊園地「かしいかえん シルバニアガーデン」が、65年の長い歴史に幕を下ろします。

植栽プロデュースした「かしいかえん」が、12月30日に閉園

「かしいかえん シルバニアガーデン」は、市内唯一の遊園地として親しまれ、ピーク時には57万人の入園者数を記録していましたが、少子化やレジャーの多様化で利用者は減少していたようです。更に近年では新型コロナウイルス禍も重なり、開園すらできない状況となり、入園者数はピーク時の23%程度に落ち込んだそうです。
 

僕と「かしいかえん」との接点は、2016年のリニューアル計画時からでした。当時、「西鉄グランドホテル」の植栽を担当させていただいたのが縁で、「パンチが欲しい!」と声をかけていただき、「かしいかえん」の植栽プロデュースと施工に携わらせてもらいました。
 
僕は長崎出身で失礼ながらこの瞬間まで「かしいかえん」の存在を知りませんでした。当時初めて園内を見て回った時は、乗物と大きなため池、それにヒーローショーのステージはあるのですが、開放感がある広場もあまりなく、“花園”という印象は薄かったような記憶があります。
 
そのような状況をみて、僕ははじめに、子供はもちろんお年寄りまで幅広い世代に来園してもらい楽しんでもらえる園にしたいと考えました。もともとあったため池を利用した“モネの庭”を造ったりして園のガーデン化を提案しましたが、諸々の都合で叶いませんでした。今思ってもパンチは効いていたと思うのですが…。
 
そこで、「幅広く世代に楽しめる園」という考え方はそのままに、ポイント、ポイントでフォトスポットになるような庭を造っていくようにしました。それが現在の「フラワータワー」や「緑の動物園」、「フラワーキャッスル」、「癒しの庭」などになります。ここで意識したのが、丘を作ったり、壁面緑化の技法を使ったりして作品に高さを持たせることでした。
 

高さを出すことで空間が立体的になり、花緑が視野に飛び込んでくる量が増えるようになります。あと「癒しの庭」は、里山の小川をイメージしていて、年配の方が昔の風景を懐かしみくつろげる空間になればと造りました。
 
このような作業のうえで2017年にリニューアルオープンし、その後も花の展開や、ハロウィン装飾など季節のイベントも仕掛けてきましたが、力及ばず5年目で閉園してしまうのは寂しいものです。
 

福岡の人々の人生を刻んだ大事な場所に、1万本のチューリップを植える

 
僕は長崎出身で「かしいかえん」での思い出はありません。でも福岡の方に話しを聞くと「子供の頃は連れてきてもらうのが楽しみだった」「初めてのデートで行った場所」など皆さん各々に思い出があり、福岡の方にとって、「かしいかえんは、人生に刻まれる凄く大事な場所なんだな」と思いました。


 
僕と「かしいかえん」の関りは、4年ちょっとで、65年の歴史の中ではほんの僅かでしかありません。でも、4年間は凄く濃厚な時間となりました。その感謝の気持ちと、福岡の方へ「かしいかえん」での最後の思い出を作ってもらうためにと、僕はあるプレゼントをすることに決めました!
 
「かしいかえん」は、1956年に香椎花園となる前、「香椎チューリップ園」として1938年に開園しその歴史がスタートしたと聞きました。そこで、「チューリップに始まり、チューリップで終わる」ことで皆さんに喜んでもらえ記憶に残るんじゃないかと考えました。

「香椎チューリップ園」から数えて83年となる長い歴史に幕を下ろそうとしているその瞬間も、開園当時と同じようにチューリップを咲かせ、「当時を知る人にはその風景を思い出してもらいたい」と思い立ち、1万本のチューリップを植えて、最後にチューリップが彩る「かしいかえん」の姿を皆さんの目に焼きつけてもらいたいと思いました。
 
ただ皆さんもご存じと思いますが、チューリップは本来春の訪れを告げる花で、春に開花します。それを真冬の12月に咲かせないといけません。そこでどうするかというと今回は「アイスチューリップ」を植える計画を立てました。
 
チューリップは、球根が冬の時期に寒に当たり暖かい春を迎えることで成長し開花します。アイスチューリップは、その性質を利用し、球根を冷蔵処理し、人工的に冬を疑似体験させた後にハウスで開花調整をすることで、早く咲かせるチューリップになります。
 
ただ、アイスチューリップも通常では年明けの1月、2月に咲くものが主流です。年内に咲かせる球根を探し出して、手配するのには、大変苦労しました。

チューリップと言えば、皆さんはどこの国が浮かびますか?…オランダですよね!今回はそのオランダから冷蔵処理済のチューリップの球根を輸入し、国内でポットに植込みました。

そして今まさに開花調整の最中ですが、自然のものなので12月にしっかり咲いてくれるだろうかという心配もありますが、ここは花の神様へ祈るのみです。
 

「かしいかえん」。本当にありがとう!

 
閉園する「かしいかえん」に、文字どおりチューリップで花を添えられればと思うので、皆さんにもぜひ足を運んでいただきたいと思います。昔の香椎花園を知っている方はその景色を懐かしんでもらい、子供達にはお父さんお母さんと一緒に遊んだ思い出をチューリップとともに刻んでもらいですね。そしてチューリップを見るたびに「かしいかえん」を思い出してもらえればと願っています。
 
福岡市が花で都市の魅力を高めようと推進する「一人一花運動」で周りに花緑が増えています。「みんなの思い出の中には、必ず花と緑がある!」、そんな福岡のまちになって欲しいものです。これからは、福岡市全体を「かしいかえん」のようなまちにしていきましょう!

☆あわせて読みたい⇒「かしいかえん」の想い出を皆さんの心に刻み込んでもらいたい
https://fukuoka-leapup.jp/city/202107.293

【かしいかえん】
住所:〒813-0003 福岡市東区香住ヶ丘7丁目2-1
■開園時間:2021年 11月 平日10:00~17:00、土日祝10:00~17:00
■TEL:092-681-1602
■WEBサイト:https://www.kashiikaen.com/
■閉園特設サイト:https://www.kashiikaen.com/special2021/

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庭園デザイナー
石原和幸
長崎市生まれ。22歳で生け花の本流『池坊』に入門。以来、花と緑に魅了され生花の路上販売から店舗販売、そして庭造りをスタート。その後、苔を使った庭で独自の世界観が「英国チェルシーフラワーショー」で高く評価されこれまで14回出展し計11個の金メダルを受賞。エリザベス女王より「緑の魔術師」と称される。全国で庭と壁面緑化など緑化事業を展開し環境保護に貢献すべく活躍中。

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