やっと普通の日常が戻って来そうですね。
もちろんコロナ禍が完全に収束したわけではないですが、通常勤務に戻った方も多いはず。画面越しでしかなかったコミュニケーションも対面になると直接相手と会話することにより、新たな問題も浮かび上がるのではないでしょうか?
なぜ他者は自分の考えを「分かってくれない」、要求に「応えない」んだと思うようなことがありませんか?そして家族や友人、恋人にも感じることがありませんか?
対話を通して、自分と相手の「奥にある大切にしているもの」に寄り添うことで、新たな選択肢をつくりだす。今回はそのテーマについて考えたい一冊です。
この本は著者のマーシャル・B・ローゼンバーグが考案したNVC(非暴力コミュニケーション)を基に、他者との「わかりあえない」を超えて、共に未来をつくるコミュニケーションを実践していこうという内容です。
内容は読み込んでいかないと少し分かりづらいですが、今回は超簡単に説明します。
NVCの構造はとてもシンプルです。「観察」「感情」「ニーズ」「リクエスト」この4つの要素を常に意識してください。誰かとの問題を抱えた時にこの要素を意識して対話していくことが重要なのです。そしてこの要素を考える上で一番してはいけないのは相手に対しての「強要」なのです。
本の内容としてはこのNVCの仕組みと実際の応用事例、そして社会を変える平和のことばにどんな力があり対立や衝突を防ぐのかが書かれています。国内の事例ではありませんが性差別や貧困問題等の事例には興味深いものが多いです。
みなさんでもすぐ出来るエクササイズも各章の最後に書かれていますので実践してみましょう。
まず自分の目の前の身近な「誰か」とのより深い部分の対話を行いつつ、それがやがて世界の平和につながっていく・・・そんなことを考えながら読んでいただきたいと思います。
僕は本屋です。日々なかなか本が売れません。(観察)
本が売れないと困るのです。(感情)
そうしないと本屋が潰れます、本屋がなくなったら困りませんか?(ニーズ)
お客さんには本を買って欲しい。出来たら来る方全員に。(リクエスト)
これをそのまま伝えていても状況は変わりません。それはそうです。これは僕からの「強要」だからです。お客様には深い部分での僕の「理由」が伝わりません。
本が売れない状況には様々な要因がありますが、あくまでも上記の問題は僕個人の問題であり、押し付けなのかもしれません。お客様にもいろんな事情があります。
だとすれば、お客様を深く「観察」し、どんな思いで本屋を訪れているのか(感情)、何を求めているのかいないのか(ニーズ)、どういう選書や気配り、仕掛けがあれば本を買おうと思うかを常に聞いてみる(リクエスト)。そしていつも冷静で大らかでいなくてはなりません。
これらを深く考えた上で接しなければ、お客様とのより良い関係は築けないと感じました。まだ解決策に明確な答えはありません。でも日々お客様が一冊でも自分のために必要だと思える店づくりを通して「対話」していきたいと考えます。
どんなに苦手な相手でも理解しあえないと思う相手でも、このSVCの4つの要素を基に、より良い関係を作っていけるように皆さんにもぜひ読んでいただきたいです。案外、小さくて身近な平和はこうした努力の積み重ねから出来上がっていくものだと思います。
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「わかりあえない」を越える
目の前のつながりから、共に未来をつくるコミュニケーション・NVC
マーシャル・B・ローゼンバーグ(著/文)今井麻希子(翻訳)鈴木重子(翻訳)安納献(翻訳)
出版社:海士の風
定価:1,900円+税
書店発売日:2021年12月8日
https://honto.jp/netstore/pd-book_31328138.html?partnerid=02vc01