芽瑠辺

ここは迎賓館?1972年創業の「珈琲 芽瑠辺(メルヘン)」、西新のクラシカル&ゴージャスなレトロ喫茶【福岡市早良区】

いつの時代でも「カフェ」という存在は人々をトリコにします。近年のSNS人気も相まって、おしゃれなカフェ巡りを楽しむ女性も多い中、にわかに脚光を浴びているのが「昭和レトロな喫茶店」。中年以上の方はノスタルジックを感じ、若者にとってはおしゃれなカフェにないレトロ感が斬新だと感じるんだそうです。そこで福岡に今なお現存する「昭和レトロ喫茶店」をピックアップしてご紹介していきたいと思います!

「西新オレンジ通り」沿いにあるレトロな看板が目印

 

珈琲 芽瑠辺(メルヘン)」は早良区西新の商業施設「プラリバ」南側から今川橋に向かう「西新オレンジ通り」沿いにある、レトロな「チモトコーヒー」の看板が目印。

 

最寄り駅の福岡市地下鉄「西新駅」からは徒歩で3分程度です。

 

 

こちらは「芽瑠辺」の外観。アプローチや花壇、壁にいたるまでレンガがふんだんに使用されています。

 

 

時代を刻んできた味のある看板。オリジナルのフォントやデザインも素敵すぎます。

 

 

ドア横にはかつてコーヒー豆の挽売りをしていた頃を偲ばせる挽売りコーナーが。

色褪せた写真がなんともいい味を醸し出しています。

 

 

クラシカルなゴージャスさが漂う店内空間

 

まるで迎賓館を思わせるような背の高いベルベット張りのチェアが並ぶテーブル席。

 

 

入口そばにある円卓席は芽瑠辺の特等席。しかもなんと9人が同時に座れてしまいます。

 

そのゴージャス感たるや、首脳会談でも行われそうな雰囲気。

ちなみに円卓席の上部にある欄間は屋久杉を使っているんだそうです。

 

 

縦に長い店内をさらに奥に進むと一段下がったフロアが出現します。

 

噂によると、かつて西南学院大学が卒業式を迎える頃、県外への就職が決まった卒業生が遠距離で今後彼女と会えなくなるので、

お店の人から見えづらいこの席で別れ話をする場所になっていたんだそうです。

 

そんな甘酸っぱい歴史もあったんですね。

 

 

店内を照らすクラシカルなライトもレトロ感を演出してくれています。

 

 

店内のいたるところに「昭和レトロ」が点在

 

長い年月による本の重みで本棚は変形しています。

 

 

昭和のお店の電話といえば定番のピンク電話。もちろん現役!

よく見るとダイヤルの中央部分には店名が入ってました。

 

 

カウンター内と客席を隔てるのはレンガ造りのアーチ。

その傍らにあるタバコ販売ボックスも懐かしすぎます。昔は飲食店のカウンターでタバコが購入できていたんですよね。

 

芽瑠辺の歴史

マスターの島本栄三さん。創業から50年以上を経た今でもカウンターに立ち続けられています。

 

マスターを務めるのは御年76歳の島本栄三さん。

福岡県八女市のご出身で、高校卒業後は東京の大学に進学されました。時代は高度成長期の真っ只中。まわりが就職活動に励む中、「自分はまだ働きたくなかったから」という理由で、大学卒業後は元々好きだった料理の腕を磨くべく調理学校に入学。

 

その過程で喫茶店を開業すると思うようになり、東京で物件探しをしていたところ、より家賃が安く、土地勘もある福岡で開業することを決意し、帰福。

 

1972年、24歳で中央区大名に「大名メルヘン」を創業されましたが、そのうちに店が手狭になり、3年後には中央区天神に移転。屋号も「天神メルヘン」に変更されました。

 

こちらは今は亡き天神メルヘン。1975年当時の写真。お店の一角にも飾られています。

 

元々、東京の喫茶店「ルノアール」のように、福岡の主要駅のそばに喫茶店をチェーン展開することを目標としていたというマスター。

 

かつて福岡市内を走っていた路面電車の「今川駅」のそばにあり、当時は西新より栄えていた「今川橋」のたもとである場所にビルが新築されることを知り、その一階に2号店を出店することに。

 

しかし、同じ「メルヘン」という屋号のお店が近くにあったことを受け、店名を漢字の「芽瑠辺」に改め、1978年にオープンされました。

 

当時の西新エリアは安い映画館が多く、西南学院大学のお膝元でもあったこともあり、お店の隣にあった「西新アカデミー」で映画を見た帰りの方や、学生さんがデートで来店するなど、多くのお客さんで賑わっていたんだそうです。

 

1981年頃の雑誌の紹介記事。西新が早良区ではなく西区だったり、コーヒーが250円だったり、「粋な店」「一番グーな席」というワードチョイスに時代の流れを感じますね。

 

1990年にはバブル時代に突入。不動産の価格が高騰し、そのあおりを受け、テナントとして入居していたビルが売却されることになり、15年続いた「天神メルヘン」は閉店。

 

当初の目標であったメルヘンのチェーン店化も、コンビニやファミレスが台頭するなど時代の変化もあり断念。

 

以来、この「芽瑠辺」1店舗だけで営業を続けておられます。

 

2店舗を営業していた当時のマッチ。メルヘン=天神店、芽瑠辺=西新店で屋号が異なっていたことがわかります。

 

 

手作りの喫茶メニューの数々

 

それではメニューを拝見。ブレンド・アメリカン・ストレートなどのコーヒーからクリームソーダやミルクセーキなどの懐かしいドリンクまで豊富なラインナップ。

 

現在は食事メインの営業スタイルとなっており、定番のパスタ・サンドイッチ・カレーの他、ピラフや生姜焼き、ポークカツにビーフステーキまで充実しており、西南大生の良き憩いの場所になっているんだとか。

 

 

 

今回オーダーしたのが芽瑠辺おすすめの「エビフライとハンバーグ」のセット。

デミグラスソースをたっぷりかけたハンバーグに大ぶりのエビフライ、ゆで卵にサラダ、ライスにスープが付いて税込1,200円。

これぞまさに「昭和の洋食」といったビジュアルです。

 

 

10センチ以上の長さと肉厚のエビフライは、でっぷり太って食べ応えも抜群。

手ごねハンバーグもジューシーな肉汁にあふれていて、まさに「老舗の味」が堪能できます。

 

 

そして懐かしのメニューをもう一品ということで「ホットケーキセット(税込850円)」をオーダー。

一時期流行したパンケーキのような派手さをとことん排除した、バターとシロップだけのプレーンなパンケーキです。

 

 

シロップをたっぷりかけて、バターを絡めていただきます。

シンプルなその味わいは、昔懐かしい喫茶店のホットケーキの味そのまま。

ブレンドコーヒーとの相性も良く、ノスタルジックなひとときを満喫できました。

 

 

一般的に「西新」と言えば、城南線を隔てた西側にある「西新中央商店街」や「中西商店街」のイメージが強いですが、「芽瑠辺」のある「西新オレンジ商店街」は街の喧騒とは無縁の閑静な通りになっており、ゆっくりとコーヒーや食事を楽しむにも最適です。

 

レトロでノスタルジックな店内で、あなたなりの過ごし方を満喫してみてくださいね。

 

 

珈琲 芽瑠辺(コーヒー メルヘン)

住所:福岡市早良区西新1-7-10

営業時間:12:00~21:00

電話番号:092-851-9827

定休日:日曜日・祝日

 

 

 

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ライター
久原茂保
2001年より福岡発のカフェ情報サイト「CAFE@TRIBE(カフェ・トライブ)」を開設。以来、20年以上に渡り福岡県を中心に数多くのカフェを訪れ、日々取材活動に励んでいる。近年はカフェアドバイザー業やカフェのリブランディング、カフェプロモーションなどカフェ業界の知見とネットワークを活かしたオンリーワンな事業を展開中。グラフィックデザインやWEBデザイン、広告コンサルも。

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