創業は1979年。偏屈ながらも愛すべきマスターがいる「喫茶五圓」【福岡市博多区】

いつの時代でも「カフェ」という存在は人々をトリコにします。近年のSNS人気も相まって、おしゃれなカフェ巡りを楽しむ女性も多い中、にわかに脚光を浴びているのが「昭和レトロな喫茶店」。中年以上の方はノスタルジックを感じ、若者にとってはおしゃれなカフェにないレトロ感が斬新だと感じるんだそうです。そこで福岡に今なお現存する「昭和レトロ喫茶店」をピックアップしてご紹介していきたいと思います!

博多駅前のビル街にありながら、まるで時が止まったかのような佇まいの「喫茶五圓」

九州最大の交通要所である「JR博多駅」。そのメインの玄関口である博多口の西側一帯に広がる「博多駅前2丁目」には、オフィスやホテル、そして最近リニューアルした博多区役所など数多くのビルが立ち並んでいます。
博多駅の博多口から歩くこと5分。目貫通りである「はかた駅前通り」を一本入った通り沿いに、まわりの近代的なビル群と相反して、まるでここだけ時が止まっているかのような古めかしい喫茶店が佇んでいます。
こちらが今回ご紹介する「喫茶五圓」です。

こちらが外観。古びた青いテントや、錆びついたアートコーヒーのスタンド看板からは長い年月が感じられます。

クセがすごいプレートの数々に入店前から圧倒される

喫茶五圓の特長なのが、お店を取り囲むように張り巡らされたプレートの数々。
そのボリュームたるや、入店前から圧倒されてしまいます。。。

プレート看板をひとつづつチェックしてみます。
食事デキマス」「コーヒーをどうぞ」「カレーライスうまいゴルバチョフ」などなど・・・味のある手書きフォントで綴られたクセが強すぎるワードが並びます。
それにしても、なんでゴルバチョフ!?!?
疑念を抱きながら、いざ入店です!!

古き良き「昭和の喫茶店」が今なお息づいている

ドアを開けるなり目に飛び込んでくるのは、これぞまさしく「ザ・昭和の喫茶店」というべき空間。
店内はカウンター席とテーブル席に分かれており、色褪せて所々補修された椅子やテーブル、古びたインテリアはどれも年季が入ったものばかり。

本棚には喫茶店のマストアイテムであるコミック本も充実のラインナップ。「サラリーマン金太郎」「バカボンド」など、近隣のビジネスマンに配慮しているかのような、男臭い硬派なセレクトになっています。

御年78歳。偏屈ながらも愛すべきマスター。

実は今回、アポ無しで伺って直接取材交渉したのですが、

マスター

取材?そんなの全部断りよるもんね。前に○○の取材受けた時、いやな気分になったけん、それから取材は全部断りよーとよ。ごめんなさいね。

うむむ、なかなかの厳しいお言葉。しかし過去に何度かプライベートで利用させていただいており、いつか必ず取材したかったという「五圓愛」を粘り強くお伝えさせていただいた結果・・・

マスター

わかったわかった。じゃああんたの好きなごと書けばいいよ。ただインタビューとかは受けんけんね。

ライター久原

わかりました!ありがとうございます!

ぶっきらぼうな言い方ながらも、その奥にある確かな「優しさ」を感じ取り、取材許可をいただくことに成功!(感謝)


写真右側にひっそり写り込んでいるのがマスターの岡村明生さん。

「インタビューは受けない」と言いつつも、会話を重ねるうちに、次第にお店の歴史をお話ししてくれました。
この店のマスターは岡村明生さん。昭和19年生まれで、御年なんと78歳とのこと。
広島のご出身で、若い頃は関西でプラント設計のお仕事をされていたそうです。しかし、腰を痛めて、仕事を継続できなくなり、奥様のご実家のあるこの博多に転居されました。それを機に、腰に負担の少ない喫茶店の開業を決意。
「あなたとご縁がありますように」という思いを込めて店名を「五圓」と名付け、1979年に開業されました。
当初は奥様のお母様が営んでいた天ぷら屋さんとお店を半々に分けて営業していましたが、数年後に天ぷら屋さんを廃業されたタイミングでお店を拡張し、現在の広さになったそうです。


オープンから5年後、1984年ごろの喫茶五圓。中央にいるのが若かりし頃のマスター。めちゃくちゃダンディーです!

「俺は偏屈だし、元から口が悪いけんね」と笑うマスター。

お店もずっと『いいかげん』な営業してきたし。それでよう44年もやれたと思うよ」。
とは言え『いいかげん』ってことは、『良い加減』って意味でもあるけんね!

そんなダジャレを入れることも忘れません。自称偏屈と言いつつも、会話の端々にユーモアが感じられます。

お店の内外にある数々のプレート看板は、全てマスターが彫刻刀を使って手彫りして作ったんだそうです。

ちなみにずっと気になっていた「ゴルバチョフ」についてお尋ねしてみたところ

ゴルバチョフはね、実は俺の友達なんよ。あいつはいい奴でね。モスクワ大学の法学部出とるんよ。そして奥さんのライサさんも綺麗な人でね・・・

どこまでが本当の話かわかりませんが・・・とにかくマスター、面白い人です!

なかば強引に勧められるカレー。されど納得の美味しさ!

卓上に置かれたメニュー。お食事系はビーフカレー、ピラフ、ハンバーグ、トーストなど全9種類あり、全てコーヒーまたは紅茶とのセットになっています。

裏面はドリンクメニュー。全7種類の至ってシンプルな構成です。しかし、このご時世にコーヒー一杯400円とは!ありがたい限りです!

席に座るやいなや、「カレーでいいやろ?」とマスター。ここ五圓に来ると、なかば強引にカレーをお勧めされてしまうのです。
「あ・・・じゃあカレーでお願いします」と言い終わらないうちに、そそくさとカレーを準備し始めるマスター。気がつけばあっという間にカレーがテーブルに。提供までの時間は約2分という早さ!
ちなみにカレーをお勧めする理由を聞いたところ「他のメニューを作るのが面倒だから」という答えが返ってきました・・・。さすがマスター(笑)

気を取り直してカレーをいただきます。具材は牛肉メインのシンプルな自家製カレー。
サラサラのルーをスプーンですくって、ご飯とビーフを乗せていただきます。スパイシーな味わいは、これぞ昭和の喫茶店の味!添えられたたっぷりの福神漬けもいいバランスです。

カレーのあとはコーヒーをいただきました。食事セットのコーヒーは小ぶりのかわいいカップで提供されます。片手で入れるスタイルのシュガーポットも昔懐かしいアイテム。
食後の一杯をいただきながらノスタルジックな空間を楽しみましょう。

マスターとお客さんのやりとり

取材中、カップル客が来店されていて、一緒にカレーを食べておられました。
二人が食べ終わったお皿を下げる時、マスターとのやりとりが聞こえてきました。

マスター

あれ、カレーの福神漬けが残っとるよ?

彼女

私、お漬物が苦手なんです

マスター

そんな言うたって、もったいなかろーが

彼女

どうしても食べられなくて

マスター

そうか。じゃあ彼氏に食べてもらって

彼氏

え、あ、はい・・・

マスター

食べ物は粗末にしたらいかんけんね

やがて彼氏が福神漬けを食べ終わり、カップル客はお会計へ。
マスターのひとことで、ちょっぴり微妙な空気になっていましたが、代金を支払って退店しようとしている二人に、マスターはニッコリと笑顔でこう言いました。
「またおいでね!」
その声を聞いた二人は微笑み返しながらお店を後にしていきました。

喫茶五圓のまわりはオフィス街ということもあり、ランチタイムは多くのお客さんが押し寄せます。そして常連さんの多くは「カレーセット」を注文します。入店するなり「カレーでいいやろ?」と言われ慣れているうちに、五圓=カレーという方程式が成り立っているのです。

マスターもご高齢となり、現在のランチタイムは息子さんと娘さんが主にお店に立たれています。そしてランチタイムが終わり、お店が落ち着いた時間帯からマスターはお店に立ちます。

ちょっぴり口が悪くて、自称偏屈とは言いつつも、ウイットに富んだトークも面白く、滲み出る人柄は隠せません。

そんな愛すべきマスターがいる、博多のレトロ喫茶店「五圓」。ぜひ一度訪れてみては?

喫茶五圓

住所:福岡市博多区博多駅前2-7-1
営業時間:8:00~だいたい日没まで(お客さん次第)
電話番号:092-473-9430
定休日:日曜日

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ライター
久原茂保
2001年より福岡発のカフェ情報サイト「CAFE@TRIBE(カフェ・トライブ)」を開設。以来、20年以上に渡り福岡県を中心に数多くのカフェを訪れ、日々取材活動に励んでいる。近年はカフェアドバイザー業やカフェのリブランディング、カフェプロモーションなどカフェ業界の知見とネットワークを活かしたオンリーワンな事業を展開中。グラフィックデザインやWEBデザイン、広告コンサルも。

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