2/10(金)公開・全国ロードショー!映画『バビロン』と福岡史でたどる1920年代

エンタメと福岡の歴史をクロスさせる「フクリパエンタメデスク」。今回は、2/10(金)に全国公開される映画『バビロン』のネタバレなしのご紹介とともに、同時代の福岡の歴史を見ていきます。

映画が映画然としていく時代

時は1920年代。第一次世界大戦が終わり、世界恐慌へと突入していく直前の黄金期が舞台。
場所はまだ砂漠だらけのアメリカはハリウッドに、ブラッド・ピット演じるムービースター、ジャック・コンラッドが主役です。
よく「狂騒の時代」と表される1920年代のアメリカにおいて、まだまだ「映画」がサブカルチャー中のサブカルチャーだったという事実からはじまります。
 
「●●座」の大部屋俳優よろしく、とある映画製作会社の看板役者だったジャックは、出演する作品がどれも大ヒット。大衆に映画という文化が溶け込みはじめたその頃、『華麗なるギャッツビー』さながらに映画界はうなぎのぼりに成長発展を遂げていきます。
 
まもなく発表となるアカデミー賞®は年に一度の大注目の賞レースですが、そうした映画業界が映画然としていく黎明期の様子を、我々は知ることはできません。
本作では、そうした日を追うごとにいい意味でも悪い意味でも調子にのっていくムービースター・ジャックを通して、この時代の空気を味わうことができます。
 
ところで。
この時期の映画は、まだ「サイレント」だったことをここで示しておかねばなりません。
そう、役者はあくまでもパントマイムこそが「演技」であり、音や声、そして「セリフ」なるものは存在しないのでした。
ゆえに、広大な砂漠に組まれた「セット」は、あるエリアで戦争ものの撮影がなされていたかと思えば、すぐ隣で喜劇が演じられており、と、いまでは考えられないほどのカオスっぷりなのです。
 
音のない世界での映像製作など、現代の我々には想像がつきませんが、あっちこっちでドッカンドッカンとやり散らかす大量製作から多くの作品が生まれていたという事実を本作を通して体感できることは、この映画がハリウッド黎明期を描こうとしたひとつの目論見のように感じます。
 
さて、そんなジャックですが、技術の進化に伴い、映画に「音声」が組み込まれていくことで運命が変わっていきます。セリフが絶必となり、字幕係の仕事がなくなる…そう、いま我々が「ChatGPTなどのようなAIにとって代わられる職業リスト」なる記事に内心震えを禁じ得ない心境と同じく、ジャックにも銀幕のスターからの凋落がやってきます。

一方、映画界に夢を持つ青年・マニー(ディエゴ・カルバ/写真右)はふとしたきっかけからジャックの付き人のポジションを獲得。前に後ろに右に左にと、ジャックを通してプレゼンスを高めていく彼が果たす役割も、この物語では重要なポイントです。
 

© 2022 Paramount Pictures. All Rights Reserved.

ネタバレにならないように、しかしここは現代を闘うビジネスパーソンにはぜひ注目してもらいたいシーンをご紹介します。

大部屋女優さながらに、撮影に張り付いてゴシップ記事を書いているコラムニスト・エリノア(ジーン・スマート)のもとを、ジャックが訪ねるシーンがあります。サイレントの時代が終わり、自分では何が原因なのかわからないままに、主役の座をおろされ苦悩するジャック。ご意見番であり情報通であるエリノアであれば、自分に本当のことを教えてくれるのではないかと問うのですが、このとき彼女がジャックに告げた言葉は、後身にいつ道を譲るべきなのかといった悩みや、何をもって「生きている」と言えるのかを人生の問いとして持っている人には、かなり響くことと思います。

そしてこのやりとりは、ラストで鮮やかなまでに伏線回収されますので、ぜひ刮目いただきたいところです。
 
 
 

注目の製作陣

本作が公開前から話題になっていることの最重要ポイントは、『ラ・ラ・ランド』の監督であるデイミアン・チャゼルがメガホンをとっていること。しかも、構想は15年前にさかのぼります。

また、本年度のゴールデン・グローブ賞作曲賞を受賞したジャスティン・ハーウィッツがアカデミー賞®作曲賞、プロダクションデザイナーのフロレンシア・マーティンが美術賞、そして、メアリー・ゾフレスが衣装デザイン賞にノミネートされており、「狂騒の時代」と言われることの多い、連夜繰り広げられる映画関係者のアンタッチャブルなパーティのシーンは圧巻。

特にヒロイン・ネリーを演じるマーゴット・ロビーの演技は要注目。田舎娘がマニーとともにスターダムにのし上がっていく様はまさにアメリカンドリームであり、このパーティでの輝きはミュージカルを見ているかのような美しさです。


© 2022 Paramount Pictures. All Rights Reserved.

この時代を描く他の作品と異なり、ただただ黄金期、何もかもが規格外な輝かしさだけでなく、おそらくこちらが現実だったのではないかと想像させてくれる、退廃と奔放の混沌とした世界。世界大戦とパンデミックから逃れ、地に足のつかないふわふわした日常の中に潜む不安と混乱が、美しい音楽とダンスに閉じ込められています。何かのPVを見ているかのような、実に現実感のない世界は冒頭からいきなり展開されるので、ぜひ注目して欲しいところです。


© 2022 Paramount Pictures. All Rights Reserved.

最後に、終盤にこの100年のハリウッド映画の歴史を映像で見せてくれるシーンがあるのですが、ここもまた、これまで映画にどっぷりつかってきた人も、ロングヒットをたまにしか見ない人にも、ぜひ映画の歴史をタイムリープするひとときとして味わってもらえたらと思います。
 
 
 

一方、1920年代の福岡とは

パンデミックと戦争に見舞われている現在、100年経っても人類はあまり変わらないのかもしれないとも思えますが、では当時の福岡はどのような様子だったのかを、福岡県立図書館所蔵の1920年の地図から、何点かピックアップしてご紹介し、結びとしたいと思います。
 

出典:福岡博多及郊外地図(『帝国都会地図』9)/大淵善吉(編集者)/駸々堂旅行案内部(発行所)【福岡県立図書館ふくおか資料室】
http://www.lib.pref.fukuoka.jp/hp/tosho/kindai/H24/hyojun/0492829a.html
 

●大濠公園も護国神社もない

福岡市の庭とも呼べる大濠公園。中国にある「西湖」がモデルとされているこの地が整備されたのは、1929年(昭和4年)のこと。ゆえに、まだ「大堀」と刻まれています。お城の輪郭もしっかりと残っており、当然ですが、その南に位置する福岡縣護国神社も姿かたちはさっぱり見当たりません。
第一次世界大戦後の復興期、あちらこちらが整備されていく、まさに過渡期にあたります。
 
 

●暗渠がない

天神は今泉から薬院六ツ角へと抜ける「上人橋通り」の由来は、まだこのあたりが暗渠(道路や鉄道の下を下水や灌漑用水等を送・排水するため横断する埋設構造物で、その構造は地中に埋設されているため直接下水や用水が地表に現れていないもの)になっておらず、殿様のもとに日延上人が囲碁の相手をする際、川が増水して移動できなかったことからかけられた橋の名だと言われています。
つまり、国体道路の下には今でも水が通っていて、暗渠になっているというこの事実、意外と知られていないトリビアでもあります。
(同じく、黒門川も暗渠になっていますが、この地図ではまだ川として存在しますね)
 

●海岸線がまったく違う

この地図で特筆すべきことはきっと「福岡築港計画予定設計」の赤文字でしょう。
現在の築港や那の津などは、ここから約20年をかけて整備されていきますので、まだまったくその姿は見えていません。しかし、その「予定」が赤線で描かれていることは、ハリウッドほどではないにせよ、福岡市中心部も沸き立つ復興期にあったことを示しています。
 
他にも、よく見ると「あら?」と思う場所がそこかしこにありますので、ぜひリンク先の地図を拡大して楽しんでいただけたらと思います。
>>福岡博多及郊外地図(『帝国都会地図』9)/大淵善吉(編集者)/駸々堂旅行案内部(発行所)【福岡県立図書館ふくおか資料室】
 
 

映画『バビロン』 ※R15+



© 2022 Paramount Pictures. All Rights Reserved.
https://babylon-movie.jp/
2/10(金)よりユナイテッド・シネマ キャナルシティ13、T・ジョイ博多ほか全国ロードショー

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