福岡のコーヒーと酒とジャズのはざま #01

第一幕 福岡のミントンズ・プレイハウス 『屋根裏 貘 (バク)』

FBS「めんたいワイド」やTNC「CUBE」など、福岡ローカルでひっぱりだこのコメンテーター・林田暢明さんの新連載がスタート!テーマは「福岡のコーヒーと酒とジャズのはざま」。コロナの状況に左右されて、なかなか楽しめない喫茶ライフですが、生きる余白を求めてコーヒーにお酒にジャズにと、街へくりだしてみませんか?

「天災は忘れた頃にやって来る」

と云ったのは寺田 寅彦だったと思うのですが、福岡が産んだ災厄、仕事という地獄界に舞い降りた堕天使、悪の華ことG編集長に小突かれて、ついにあのフクリパに林田が帰ってきました。

そんなことを言いつつ、本稿は実はぼくの持ち込み企画ですので、まさに地獄の業火に油を注ぎ込むような文章から始まってしまったわけですけれども、とにかく、これから月に1本のペースで「ジャズらしきもの」にフィーチャーしながら福岡とジャズをご紹介していく、という何とも売れそうにはない企画なのであります。

なぜ「ジャズらしきもの」なのか。

 これは「福岡のジャズについて」と書いてしまうと、本物のジャズを知る、ジャジーな福岡人たちがロックにぼくを攻めてきて、パンクな状況に追い込まれグランジな状態になるのを避けるためという理由が大きいのですが、とにかくッ!あまりジャズを知らないポップな人たちのために、福岡コラム界の星野源として軽文を連ねて参りたいと考えておりますので、ご批判はジャンジャンと編集部まで送らないようにお願い申し上げます。

 ということで、記念すべき第1回目は天神北は親不孝通りにある「屋根裏 貘」をご紹介していきたいと考えています。

屋根裏 貘(バク)

〒810-0001 福岡県福岡市中央区天神3丁目4−14

 本編が始まって3行目で話が変わるんですけれども、ところで、皆さんは「ジャズ」と聞くと、その代表的な都市としてどこを思い浮かべますか?

 パリで流行ったシャンソンからジャズのスタンダード曲になっているものは多いですし、ロンドンもあるよね。いやさミュンヘンでしょう。ジャズ好きは様々な街を想起するわけですけれども、誰もが外せないと感じているジャズ界のプレゼンタティブ。それはニューヨークなのです。

福岡とニューヨークの意外な共通点

 実はジャズ視点でみると、福岡とニューヨークには大いなる共通点があります

 それは九州という地域に限定しての話にはなるのですけれども、福岡は、ニューヨークと同じく、細身の短距離ランナーのような佇まいなんですね。痩せていて、筋肉質で、ボディコンシャスな都市。翻ってみると北の政令市、北九州はさしずめ重量級の選手のようであるのに対し、南の政令市、熊本は羽織袴を着こなして熊本城に鎮座している、いわばIOCの重鎮、といったところか(もちろん、北九州にも熊本にも素晴らしいジャズの名店はたくさんあります)。

 このニューヨークには愛称があって、その名も「ビッグ・アップル」と言うんですね。かっくいー。

 「オレ、ちょっとビッグ・アップル行ってくるわ」

とか言われた日には、お主、できるな、という感じに構えてしまいます。

 実はこの「ビッグ・アップル」という呼称、1940年代にニューヨークを目指して各地から集まったジャズメンたちによって名付けられたんですね。英語で喉仏を「アダムズ・アップル」(禁断の木の実を食べたアダムの喉に引っかかった名残なので男性にしか現れない)と呼ぶのですが、その喉に引っかかった林檎が大きくなりすぎて息苦しいくらい緊張感がある街、というのが由来です。

ニューヨークの名店「ミントンズ・プレイハウス」

 1930年代後半、このニューヨークをジャズの聖地に押し上げた名店というのがあって、それが「ミントンズ・プレイハウス」です。ハーレム118丁目西210番地にあったこのジャズクラブは、ジャズ・ミュージシャンたちのサロンになっていて、まさにこのお店で1940年代に世界を席巻する「ビバップ」が生まれていくんですね。

 ぼくがこのシリーズの第1回に「屋根裏 貘」を選んだ理由は、この「ミントンズ・プレイハウス」の空気感に一番近いと思ったからなんです(もっとも、ミントンズはぼくが生まれる前に閉店しているので行ったことはない)。

 親不孝通りを南から入ってすぐに右手にあるビルの細い階段を昇っていき、重そうな、でも実際はそんなに重くはない引き戸をガラガラと開けると、入ってすぐ左手にギャラリーが、右に折れて中に入ると昭和から時の流れを止めてしまったようなレトロな喫茶スペースが現れます。


この看板が目印


階段を昇ると…


左手がギャラリー、右手が喫茶

 今年(2022年)御歳82歳を迎えるマスターは、アマチュアの域を脱した変態的写真家であり、ママも知的でウィットに富む会話を楽しめるインテリジェンス。スタッフたちは文芸の世界を目指していたり俳優を目指していたりとやはり芸術に関わっていて、また、そこに集まるお客さんたちも映画監督だったり作家だったりと強者揃い。


ちなみにギャラリーはこんな感じ

 ぼくは初めてのカウンターに座って、そこに集う皆さんとの会話をひとしきり楽しんだあと、

「ここは福岡のミントンズ・プレイハウスや〜」

と彦摩呂のように叫んだのでした。

 ちなみにミントンズ・プレイハウスが一流のジャズクラブになった一番の要因は、すぐ目の前にあったアポロ・シアターでプレイしたミュージシャンの夕食を全て無料にしたためだったのですが、屋根裏 は如何にアートに携わっているといっても無料にはなりません。しかし、他を寄せ付けぬ圧倒的コストパフォーマンスで、サイフォンで点てるコーヒーが美味なのは言うまでもなく、ぼくの一押しのコンボは「赤ワイン(ボトル:3,300円/税込)」と「どて焼(600円/税込)」です。


ママのコーヒーは格別


赤ワイン


林田オススメの「どて焼」


ちなみに喫茶メニューやランチメニューはレコード盤に書かれていて、これがまたイイ!

貘的ジャズは「ビル・エヴァンス」と「セロニアス・モンク」

 ちなみに屋根裏 貘はジャズ喫茶もジャズバーというポジションも自認していないのですが、ママに「どんなジャズが好きなんですか?」と訊ねてみると「ジャズピアノが好き、ビル・エヴァンスとか」という答えが返ってきました。そんなわけでBGMはジャズピアノがメインで流れています。

 先に述べた場の力も含めて、まさに福岡の「ジャズらしき」場所。

 終わりも近づいてきたということで、らしい一曲を完全に林田の主観に基づいて紹介したいと思います。

 セロニアス・モンクの「エビデンス」。

 ビル・エヴァンスがお好き、ということでしたので、ビル・エヴァンスから選ぼうと思ったのですが「ミントンズ・プレイハウス」といえば、セロニアス・モンク、もしくはチャーリー・パーカー。ピアニストということも相俟って、今回はモンクの一曲を。
 
モンクの名を冠していることから「ビバップの高僧」とか「ジャズの伝道師」とも言われるセロニアス・モンク。

 この曲は「Just Me, Just You(私だけ、あなただけ)」というジャズの名曲がモチーフになっています。「Just Me, Just You」ということは、意味は「Just Us(私たちだけ)」。「Just Us」の発音が「Justice(正義)」に似ている。正義に必要なのは「Evidence(証拠)」ということでその名が付いた、知的ユーモアが溢れた一曲。

 これを読んだそこのあなた、すぐに親不孝に走り、そのエビデンスを見よ!

 最後に、マスターにも「どんな音楽が好きですか?」と同じ質問をしたのですけれども、その回答はロッド・スチュワートであったことをご報告しておきます。

【屋根裏 貘(バク)】
■TEL:092-781-7597
■住:福岡市中央区天神3-4-14 [MAP]
■営:12:00~22:00
■HP:http://artspacebaku.net/wiki/index.php?%E5%B1%8B%E6%A0%B9%E8%A3%8F%E8%B2%98

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カフェ&バー TAO オーナー、総務省地域力創造アドバイザー
林田暢明
清川にあるカフェ&バー TAOオーナー。日本銀行、政策シンクタンクを経て総務省地域力創造アドバイザー。プロジェクトマネジメント、ファシリテーションを活用した地域活性化の活動に従事し、北九州市立大学ビジネススクールで特任教授として教鞭を執る。近年はFBS「めんたいワイド(木曜レギュラー)」、TNC「CUBE」でコメンテーターを務めている。12月14日に初の著書「ねころん語」を出版。

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