「ほぼ日の学校」が、初の出張授業を福岡で開催した理由

昨年末、福岡市の大濠公園能楽堂にて、「ほぼ日の学校」主催の「ごくごくのむ古典 in 福岡~能楽堂でシェイクスピア!?~」が開催されました。あの「ほぼ日」が、どんな学校を始めたのか、そしてそんな「ほぼ日の学校」が、なぜ福岡に来てくれたのか、河野通和学校長にお話を伺いました。

昨年12/17、福岡にほぼ日の学校がやってきた!

昨年末の12月17日、福岡市の大濠公園能楽堂(福岡市中央区大濠公園1-5)にて「ほぼ日の学校」主催の「ごくごくのむ古典 in 福岡~能楽堂でシェイクスピア!?~」が開催されました。

場内は500席が超満員!さらに桟敷席まで用意される賑わいとなりました。


(撮影:平山賢)

「マクベス」について解説してくれるカクシンハン主宰・木村龍之介さん (撮影:平山賢)
 
テーマは「シェイクスピア」の『マクベス』。いま、注目を集めている演劇集団「シアターカンパニー・カクシンハン」の主宰者で演出家の木村龍之介さんが当日のコンセプトを解説。

能楽堂という和の空間を最大限に活かして、河内大和さん、真以美さん、岩崎MARK雄大さんという3人の俳優が、『マクベス』をぎゅっと凝縮して演じてくれました。


ときに客席に向かって「ほぼ日の学校が~!」といったセリフを投げかけ、自分たちがいまいる空間でのできごとであるという臨場感を醸してくれます (撮影:平山賢)
 
「きれいは汚い、汚いはきれい」という『マクベス』で重要な言葉を手掛かりに、むき出しのステージとむき出しの『マクベス』の韻文がぶつかり合い、授業で習ってもさっぱり理解できなかった『マクベス』の背景が、自然と心の中に飛び込んでくる不思議な空間となりました。


河内大和さん (撮影:平山賢)

真以美さん (撮影:平山賢)

岩崎MARK雄大さん (撮影:平山賢)
 
アフタートークでは学校長の河野通和さん、演出家の木村さん、福岡でのプロモーションを担当した音楽プロデューサーの深町健二郎さん、そしてほぼ日の代表・糸井重里さんが、終わったばかりの公演について、そして古典を学ぶということについて感想を述べあいました。


(撮影:平山賢)
 
「ほぼ日は動く森だ!」という新しいフレーズが糸井さんから飛び出しました。
  
 
そもそも、「ほぼ日の学校」って何?
 
さて、ここで皆さまに「ほぼ日の学校」についてご紹介させて頂きます。

「ほぼ日」は、ご存知の通り、コピーライターの糸井重里さんが代表を務める集団。2017年に株式上場し、現在は「株式会社ほぼ日」として、ほぼ日手帳をはじめとした様々な企画で楽しませてくれています。

そんな「ほぼ日」に、一昨年初め、「ほぼ日の学校」ができました。その経緯を学校長の河野さんに伺いました。


能楽堂の楽屋で河野学校長にお話を伺いました。とても穏やかに迎え入れてくださり、編集部、大感激!

「糸井さんがですね、『古典をちゃんとやりたいなと思っていて』と私に声をかけてくれました。ちょうど私が編集長を務めた雑誌『考える人』の休刊が決まり、新潮社を退職することが決まったあとでした。

『古典をやるなら、河野さんに相談したいなと思っていたんです』と」。
(詳細は「ほぼ日の学校」のサイト内「ほぼ日の学校がはじまる。」をご覧ください。)
 
糸井さんの想いに共感し、ほぼ日への入社が決まった河野学校長。これまで様々な作家や文化人と仕事をしてきたその視点で、「ほぼ日の学校」での古典を読み解く日々がスタートします。


「ほぼ日の学校」の様子。シェイクスピア講座で講義を受け持ったのがカクシンハンの木村さん。この出逢いから、福岡での公演となりました。(撮影:平山賢)
  
 

「ほぼ日の学校」の初の出張授業を福岡で開催、その理由とは?

 
「ほぼ日の学校」は、ほぼ日の本社で開催される99人限定の“白熱教室”。最初に「シェイクスピア」、続いて「万葉集」、「ダーウィン」と進んできました。

─ところでどうして、「ほぼ日の学校」が出張授業に、しかも初の試みの地として福岡を選んで来てくれたのでしょうか?

河野学校長「これはですね、二つめのテーマとして『万葉集』をやっていたときに、ちょうど新元号『令和』が発表されて、太宰府にある坂本八幡宮がその由来となる歌が詠まれた場所である、というニュースが流れたことがきっかけです。

『ほぼ日の学校』は、現在は99人限定の学校ですが、全国で『受けてみたいけれど通えない』という方も多くいらっしゃるので、オンライン講座も始めています。

ただ、オンラインだけでなく、やはりライブで、全国色々な場所に出向いていって、その土地のことを学びながら、出張授業をさせてもらおうという話になったんです。

せっかくなら、その土地の人たちと会話したいですし、『ほぼ日の学校』がどんなことをしているのか、体感してもらえる場を作るのは自然な流れでした。

その第一弾として、先ほどの『令和』の由来の地である太宰府や福岡での開催を検討しました」。
 
─昨年夏頃に視察で来られ、福岡と太宰府のたくさんの場所を、汗をかきながら見られたそうですね。

河野学校長「とても暑かったです(笑)。太宰府という土地は京都よりも早く都市として成立していた場所ですから『日本列島の夜明け』の地だなと思いました。

ただ、ほぼ日がコンテンツを持ち込んで、場所を借りてただ授業をやってもおもしろくないですし、私たちは自分たちが福岡から何かを学ぶつもりで赴こうと考えていたんです。

『進出』ではなく、『仲間を探しに』きたつもりでいました。そこで音楽プロデューサーの深町さんと出逢いまして、『太宰府はもう少し準備をして、まずは福岡市内でやってみよう』となりました」。
 
─福岡の人って、『なんで福岡やなくて先に太宰府なん?』みたいなこと言いそうですもんね(笑)。

河野学校長「そうそう(笑)。そういう土地柄の個性も知った上で、色々な場所を見ていたら、大濠公園の中にステキな能楽堂があるじゃないですか。『ここでシェイクスピアをやったらおもしろい!』とピンときました」。
 
そして太宰府での講演も決定しました!
▼今回は開催見合わせとなりました▼ ※ 2月27日追記
【「ほぼ日の学校 大宰府特別講義」延期のお知らせ】
ー耳より情報
ほぼ日の学校春の出張授業in福岡太宰府を開催します。講師は細胞生物学者で歌人でもある永田和宏さん。「万葉から現代までの酒の歌」と題して、特別講義を行っていただきます。
 
ほぼ日の学校 太宰府特別講義
「万葉から現代までの酒の歌」
■日時:2020年3月7日 (土)
15:30開場、16:00開演 (17:30終演予定)
■会場:太宰府天満宮社務所2階余香殿ホール
■講師:永田和宏さん (歌人、細胞生物学者)
■チケット:全席自由 2,000円 (税込)
※ご参加の方みなさまに、会場にてほぼ日の学校オンライン・クラス一ヶ月体験クーポンをプレゼントします。

■応募方法など詳しくは、下記ページをご覧ください。
https://www.1101.com/n/s/gakkou_event_dazaifu2020/index.html
※すでに満席の可能性があります。あらかじめご了承くださいませ。
 
 
「ほぼ日の学校」河野学校長から見た、「福岡」とは
 
─公演は、前売りでほとんどの席が埋まってしまうほどの盛況ぶりだったそうですね。実際に、福岡の地を見てこられて、どんなことを感じられましたか?

河野学校長「そもそも『ほぼ日の学校』は、知のエンターテイメントをどう根付かせるか、がテーマです。

大人になって、学ぶという機会が減り、しかしどこかで『もう一度、ちゃんと勉強したいな』と思うことってありませんか?けれど、大学が行っている公開講座などだと敷居が高いし、ついていけるかも不安。

一方、ほぼ日の学校が考える『学び』は、正解を導き出すためではなく、おもしろいから勉強しようという楽しみを主眼にしたものです。

『おもしろそうなもの』に飛びつく好奇心の強さやフットワークの軽さは、福岡という土地、人柄にとても合っているなと感じました。

みんなで『勉強するって楽しいよね』と言い合える輪が拡がっていくことを願っています。

そんな福岡ですが、街が大きくなっていく中で、上物ではなく、地層を深く掘る作業…というか、おもしろいもの、みんなが忘れていたものを掘り起こすことがおもしろいな、と感じました。

歴史があり、人口も増えていて、基本的にとても豊かで暮らしやすい街ですので、シビックプライドも高いですよね。

でも一方で、福岡という街の潜在的なマグマや、足元の宝物に少し無頓着な面もあるように思います。

これは決して否定的なことではなく、資源の乏しい環境であれば、たったひとつの資源を掘って磨いて、それは必死になるものですが、福岡にはたくさんの魅力があり、資源があり人がいるので、すでにあるものだけでも十分に満たされているんです」。


 
─ただ、「もっと深いものに触れたい」、という渇望もある、ということですね。

河野学校長「そうですね。それこそが、今回『ほぼ日の学校』を福岡でやってみようと思った理由です。

アフタートークでも出ましたが『普段、頭の中で考えているとりとめのないことを共有しあい、深掘りするというおもしろさ』。

ビジネスの学びだと数年で古くなってしまうけれど、古典の学びは絶対に古くならないし、最先端の私たちが向き合うことで、自ずと新しいものになるのではないかと考えています。

つまり、古典もその昔に体感したことや考えられたことを即時的に伝えるために書かれたものだったのですが、年月が経ち、なんだか難しくてありがたい『覚えるべきもの』という存在になってしまっている。でも、違うんです。

今私たちが葛藤したり格闘したりしていることと同じようなことを、当時の人も思い考えていて、それを伝えるために整えられたものなんです。

だからこそ、今の人がそれを楽しく学んで、その結果新しく生まれるもの、それがおそらく次の世代に残せるものになると思います。『学びこそ、エンタメ』なんです」。
 
─次回の太宰府ツアーも楽しみにしています。
「これから『ほぼ日の学校 in 福岡』の活動はもっとおもしろくなると思います。そして福岡で芽吹いたようなものを、全国のたくさんの場所で見つけていきたいですね」。

ほぼ日の学校
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フクリパ編集部
フクリパ・デスク(中の人)です。飛躍する街・福岡の 過去を知り、現在を理解し、未来を想像する、様々な情報をいち早くお届けします。「こんな記事が読みたい!」というリクエストは、各種SNSのメッセージにて承ります!

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