求められる役目を、精一杯演じることの大切さ
番組出演の際によく芸人さんと一緒になります。テレビの前では面白おかしくしているだけの部分しか見えない彼らですが、実は裏側では大変な努力をしています。番組にキャスティングしてもらうように自身の特徴や個性の売り込み、つまり収録現場ではできることの幅を広げ、少しでもテレビカメラを向けてもらうために、オーバーアクションをするなど、アピールのすごさに驚かされます。
僕も負けまいと頑張りますが、気合が入りすぎて空回り…、いつも「先生はリハーサルの方が面白いですね」と笑われる始末です。そもそも僕に笑いを求められてないでしょうし、「張り合うな」という話ですが、ついつい負けず嫌いが出てしまいます。
その人に求められる役目というのがあるわけで、芸人は楽しませ笑いをとり、役者は演じ、ミュージシャンは歌い、奏(かなで)ます。また、MCは円滑に面白く進行し、ディレクターは現場の指揮を執ります。最終的に、それぞれには「視聴者に楽しんでもらう」という目標があります。
僕の役目は、庭園造りから町おこしなど多岐にわたる
僕の役目は、「庭をデザインして造る」ことや、「緑や花を使ってクライアントの目的を叶える」ことです。仕事の依頼は、南は沖縄から北は北海道までとエリアも幅広く、内容も一般的な庭園造りから町おこしなど多岐にわたります。
さらに集客やブランド作りなど緑や花で付加価値を付けた効果にも期待されます。そうした時に、「芸人が他のタレントとどう差別化し特徴を出して売っていくか」ということと同じ状態が、僕にも押し掛かってきます。
「どうしたら、石原和幸が造った作品として特色がだせるのだろうか?」
「他の造園屋とどうしたら差別化ができるのだろうか?」
「クライアントが求めているものをどう表現しようか?」
ーーなどと悩みます。
例えば地域に寄り添った案件の仕事だと、先ほど僕は全国から造園の仕事依頼があると書きましたが、その場所場所での県民性や地域性、文化、地形、気候などに、それぞれ特色があります。その特色を「庭園デザインにどう取り込み、どう活かすか」と考えます。
長崎色を出す庭園を造るには、長崎独自の文化「和華蘭」が最高のテーマとなる
僕は長崎出身なので、今回は仮に長崎に当てはめて実際に考えてみたいと思います!
「長崎ってどんなまちでしょうか?」
「皆さんはどんなイメージを持っていますか?」
まずは、「坂のまち・長崎」ですかね。長崎は斜面地が広がる町で、坂や階段が多く生活には苦労があります。ですが、その地形から生まれる独特なまち並みは、他県にない立体的な景色と世界三大夜景に認定される夜景を作り出し、多くの人を惹きつけて、魅了します。大きなまちの特徴となっています。
次に挙げるとしたら、「異国文化が絡み合うエキゾティックなまち」でしょうか!?
日本には和と洋の良いところを合わせた「和洋折衷」という言葉があります。皆さんもご存知かと思いますが、長崎では鎖国をしていた江戸時代に唯一海外との交易窓口になっていたことで、他のまちにはない日本と西洋、中国の文化が混ざり合ってできた独自の文化が作り出されました。
それが日本を表す「和」と中国を表す「華」、オランダを表す「蘭」を集合させ「和華蘭(わからん)」です。いわゆる混ぜこぜ、長崎の言葉でいうとチャンポンですね!
長崎色を出す庭園を造ろうとしたとき、和洋折衷を超えた長崎独自の文化「和華蘭」は、個性を出すうえで最高のテーマになるのです。
地域の特色を理解し活かせるストーリー作りをし、その魅力を伝えることが大事
地形が生み出す魅力と独自の異国文化が作り出す特色など、長崎の特徴が見えてきました。さて、この2つの特徴を実際の庭園でどのように表現していくことができるでしょうか?
斜面が生み出す長崎の立体的な風景は、みかん畑のように自然石を積んだ段々畑のような花壇を造り、長崎市の花であるアジサイを入れて植栽をすることで、より長崎らしい景色を作れそうです。
これにライトアップをすると、夜景にも負けないさらに素敵な庭になりそうです。「和華蘭」文化の表現するために、盆栽や灯籠、石畳、レンガ、ステンドグラス、中国ランタンなどの国色を出せるアイテムを使い、植栽と絡ませることで異国情緒溢れる庭園が表現できるのではないかと考えます。
立体的で異国情緒溢れる庭、面白そうです。どこかで造りたくなりました!
他の何かと差別化しようとするとき、まずは「その特色を理解し活かせるストーリー作りをし、魅力を伝えることが大事」なのです。
次回は、「福岡の特色を活かした庭を造ったら」というところから、福岡の魅力や文化などに迫り、仮想庭造りをしてみたいと思います。