いつもフクリパをお読みいただきありがとうございます。
2020年2月22日にスタートした「フクリパ」。福岡の魅力を、様々な角度からご紹介して参りましたが、その中で、編集部なりに気づいたことがひとつあります。
─それは、私たちは、長い歴史の営みの連続した先に生きていて、それを次の世代につむいでいく過程にいるのだ、ということ。
街中でありながら、歴史を身近に感じられる存在のひとつに「神社」があり、「神社はオンラインもLGBTQも受け入れる。香椎宮「Eカシヒノミヤ」を通して改めて知る、神社の「在り方」。」では神社は時代とともに常に新しいものを受け入れながら進化している、という知見をいただきました。
(神社界の皆さまにとってはきっと当たり前のことだと思いますが…)
香椎宮の木下権禰宜に、福岡大学3年生の大塚さんが取材しました
そしてもう一つが、このメディアのスタートとほぼ時を同じくして発生した「新型コロナウイルス」。今もなお、現在進行形で私たちの生活に影響を及ぼしていますし、仮にコロナが収束したとしても、また新たな感染症と向き合う可能性がある、ということを身に染みて感じた1年でした。取材先へ伺うのも細心の注意を払いつつ、しかし福岡の「今」は刻々と動いているわけで、前に進もうとする力を感じる我が街の様子を、少しでも多くお届けしようと記事を更新して参りました。
コロナは経済をはじめとした私たちの生活と同様に、歴史とともに進化をし続ける神社にも多大な影響を及ぼしました。本日は、そんな神社の新たな取り組みについてお届けします。
コロナで神社もいろいろ大変です!
「3密」という言葉が春頃から多用されるようになり、本来であれば喜ばしいはずの「神社」の神事にもこのワードは影響しはじめました。
神社はそれぞれが独立した存在でありながら、「神社庁」というところに所属して、様々な行事について話し合ったり取り決めを行ったりしながら日々私たちにお参りの機会を提供してくれているのですが、この「お参り」が、ことごとく「3密」。
例えば、福岡の人にとっては夏の訪れを告げる「博多祇園山笠」も、「お櫛田さん」こと櫛田神社での神事として700年を超える歴史を持っていますが、今年はついに、この山笠が中止となる事態に陥りました。
秋の風物詩である筥崎宮の「放生会(ほうじょうや)」も、泣く泣く中止となりました。「放生会の開催期間中に、ほぼ間違いなく台風が来る」、というのが福岡の人の肌感覚にある季節のできごとだったのですが、今年はそれも感じることなく秋になってしまいました。
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「初詣どうする」問題もありました
そうなると、気になるのが「初詣」。大晦日の除夜の鐘を聞いたら、あたたかい服装で神社にお参りに、という「一年の計は元旦にあり」は令和3年は実現できないのか?
今回編集部が福岡県神社庁に取材させて頂いたのは、まさにこの疑問からだったのですが、かなり前から様々な議論が繰り返され、令和3年のお正月は「幸先詣(さいさきもうで)」という形で期間を広く設定して行われることになったということです。
発想の源となったのは、来年の幸先が良くなることを願って、年末に「どうぞ良いお年をお迎えください」と挨拶し合う日本の文化。新年の幸福を願う気持ちをお参りに、という想いがこめられています。
10月20日には、福岡県神社庁の西高辻庁長と櫛田神社宮司、宗像大社宮司の両副庁長の3人が小川県知事に初詣の分散化を申し入れました
こちらが幸先詣のポスター
例年、お正月の三が日には福岡県内で約1500万人の参拝客が見込まれるとのことですが、この「密」を分散しながらも初詣の機会を残すために考えられたのが「幸先詣」です。
詳細は、2020年12月1日から2021年2月28日までを初詣の期間として特別に設定し、この期間に参拝された場合、通常の三が日と同じようなお守り、お札、破魔矢などをお分けいただけるほか、おみくじも新年版をひくことができたり、神事を受けることができるというもの。「幸先がいい」の「幸先」を冠とし、年末から来年のお祈りを先んじてすることができる、という特別な形態となっています。
そう、つまり、いまこの記事を読んで頂いている方は、読み終わられたあとに近所の神社でお参りをされても「初詣」が叶うというわけです。
「幸先詣」の期間は神社ごとに異なりますが、幸先詣期間中は、新年用のお札、お守り、破魔矢などをお分けいただけます
なお、幸先詣の期間は各神社ごとに異なりますし、神職さんが常在されている神社に限られますのでご注意ください。また、手水の使い方が変わっていたり、鈴緒を一時的になくしていたりしますので、各社の手順に従って、お参りしてくださいね。
この「幸先詣」こそが、神社は時代や文化とともに常に変化している、まさにそのひとつの現象。まさかリアルタイムで実体験することになるとは、誰も思っていなかったのではないかと思います。せっかくなので、潮目を感じながら、噛みしめて幸先詣に臨みたいですね。
「三社参り」は全国区ではない!?
そしてこうした「幸先詣」という特別な形になった背景には、福岡の人の「初詣」に対する特別な想いがあるからではないかとのことです。
というのも、福岡の人にとってはきっと「え?全国やろ?」と思っている「三社参り」。これ、実は福岡をはじめとしたごく一部の地域のみの風習だってこと、ご存知でしたか?
これは諸説ありますが、「福岡の独特の初詣風習であることは間違いない」とのこと。
昔から日本人は『三』という数字を好みます。我々も三種の神器、三本の矢、三人集まれば文殊の知恵など、『三』はまとまりや安定感がある印象が強いようです。
ただ、なぜそれが「福岡」周辺のみの風習なのか、その謎はまだ解明されていないそうです(引き続き、編集部でこの謎を追いたいと思います!皆様有力な情報をお持ちでしたらぜひ編集部までご連絡ください!)。
福岡県神社庁は、今回の「幸先詣」で、参拝期間の“分散”とともに、一か所の神社に集まりすぎない、近所の神社に足を運ぶという意味での“分散”も呼びかけています。実は福岡県内には3,300を超える神社がありますので、普段忙しくして素通りしている近所の神社をめぐってみるのも、新しい発見があっておすすめですよ!
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[撮影協力:櫛田神社]