世界水泳福岡大会

【 福岡の経済・ビジネス事情 】

7/14~30世界水泳、8/2~11同マスターズが開催~スポーツを取り巻く経済学~【福岡県福岡市】

3年越しの開催となった世界水泳選手権2023福岡大会が、いよいよ7月14日から開幕します。その後、8月2日からは世界マスターズ水泳選手権2023九州大会も開かれます。世界最大・最高の水泳大会である世界水泳および同マスターズを切り口にして、福岡市をはじめ地域の未来について考えてみます。

7月14日、3年越しの世界水泳がいよいよ開幕

画像提供:世界水泳選手権 2023 福岡大会組織委員会

 

約200カ国・地域から約2,400人の参加が見込まれる『世界水泳選手権2023福岡大会』が、2023714日から同月30日まで17日間、福岡市内で開催される。
福岡市における世界水泳の開催は、アジア初開催となった2001年大会から11大会・22年ぶり2回目となる。

 

 

世界水泳選手権とは、世界水泳連盟(旧称国際水泳連盟)が主催する水泳の国際大会だ。
水泳界においては、世界最高スイマーが一堂に集い、夏季オリンピックに次ぐ重要な大会とされている。
1回世界水泳選手権は1973年、ユーゴスラビア(現セルビア)の首都ベオグラードで開催されて、47カ国から686人が参加した。
その後、25年間隔で不定期に行われてきた。2001年に開催された第9回福岡大会以降、世界水泳選手権は夏季オリンピックの前年と翌年の奇数年に開催されている。

 

 

2001年にアジアで初めて開催した福岡大会は、世界初の試みとなる『仮設プール』を導入した大会でもあった。
そして今日、一般化しているレーンに国名や選手名を重ねて映像上に映し出す手法も初めて採用するなど、水泳界において意義深い大会だったといわれている。

 

 

世界水泳選手権2023福岡大会概要

開催期間/ 2023年7月14日〜7月30日(17日間)
種別/   6種別 75 種目(競泳、アーティスティックスイミング、水球、飛込、ハイダイビング、オープンウォータースイミング)
参加人数(見込み)/ 約 200カ国・地域、約2,400
会場/ 【福岡市】マリンメッセ福岡A館・B館、福岡県立総合プール、シーサイドももち海浜公園

 

 

8月2日、世界マスターズ水泳が世界水泳に続いて開幕

画像提供:世界水泳選手権 2023 福岡大会組織委員会

 

世界水泳福岡大会の閉幕後、約100カ国・地域から約1万人の参加が見込まれる『世界マスターズ水泳選手権2023九州大会』が開幕する。
82日から同月11日まで10日間、福岡市、熊本市、鹿児島市の3都市において、世界マスターズ水泳が開かれる。

マスターズ水泳について一般社団法人日本マスターズ水泳協会では、「競泳、飛込、シンクロナイズドスイミング、水球およびオープンウォーターの競技を通して『健康・友情・相互理解・競技』を実現することを目的としたもの」としている。
世界マスターズ水泳選手権大会は、世界水泳連盟が主催するマスターズ水泳の国際大会である。マスターズ水泳界において世界最高峰の大会とされている。

世界水泳連盟では25歳以上を参加資格にしているのに対して、日本では専門的な競技を離れることの多い18歳からの参加を認めている。
日本国内において、2022年時点での日本のマスターズ水泳は、2,836チーム・登録人員2万7,636人となっている。ちなみに最年少は18歳である一方、100歳超の登録者も4人いる。

 

 

世界マスターズ水泳選手権大会は1986年、東京・代々木オリンピックプールで第1回大会が開催された。
世界マスターズ水泳選手権大会は2015年以降、実質的に統合されて、2015年のカザニ大会以降は世界水泳後に続けて開催されている。
同九州大会には、5種別63種目が実施され、約100カ国・地域から選手1万人の参加が見込まれる。

 

世界マスターズ水泳選手権2023九州大会概要

開催期間/ 202382日〜811(10日間)
種別/ 5種別63種目(競泳、アーティスティックスイミング、水球、飛込、オープンウォータースイミング)
参加人数(見込み)/ 約100カ国・地域、約10,000
会場/【福岡市】マリンメッセ福岡A館、福岡市立総合西市民プール、福岡県立総合プール、シーサイドももち海浜公園
【熊本市】熊本市総合屋内プール(アクアドームくまもと)
【鹿児島市】鹿児島市鴨池公園水泳プール

 

 

世界水泳&マスターズの大会予算は225 億円、経済効果は970億円

画像提供:世界水泳選手権 2023 福岡大会組織委員会

 

世界水泳選手権 2023 福岡大会組織委員会(会長 鈴木大地日本水泳連盟会長)では、世界水泳および同マスターズの来場者数として、約40万人から50万人の観客を見込む。
さらに全世界におけるテレビ視聴者としては、約40億人を想定する。

 

 

今回、世界水泳および同マスターズの大会予算としては、再延期に伴う経費などが生じた結果、当初の予算よりも 45億円程度多い225億円程度を見込んでいる。
大会予算の内訳としては、会場整備費80億円程度、運営費50億円程度、宿泊・輸送費など50億円程度、再延期経費など45億円程度としている。

 

 

一方、大会の収入としては、協賛・寄付・チケット収入などで 35~40億円を見込み、公的助成で 60~65億円程度を確保するとしている。
そして、大会予算のうち、半分程度は福岡市の市費負担となる見込みだ。

 

 

世界水泳および同マスターズを開催することによって、全国において約970億円の経済波及効果が発生するものと試算している。
世界水泳および同マスターズの大会開催による効果として、同組織委員会では、下記の点を挙げている。

 

 

世界水泳選手権 2023 福岡大会組織委員会

世界中に『FUKUOKA』『KYUSHU』が大きく㏚され、都市ブランド力向上の面で大きな効果がある。

各地で開催される事前キャンプにより、全国的に大きな経済波及効果が見込まれる。
宿泊・輸送・飲食に係る消費など、コロナ下で大きな影響を受けた開催都市への直接的な経済効果も見込まれる。

 

 

国際スポーツ大会を数多く開催してきた福岡市、ラグビーW杯の経済効果

画像提供:福岡市(撮影者:Fumio Hashimoto)

 

1995年ユニバーシアード福岡大会、2001年世界水泳選手権大会、2001年ワールドグランドチャンピオンズカップバレーボール(女子、2009年も)、2003年ワールドカップバレーボール男子福岡大会(2007年・2011年も)、2006年世界クロスカントリー選手権福岡大会、2016年ルイヴィトンアメリカズワールドカップシリーズ大会、2019年日本陸上選手権大会、同年ラグビーワールドカップ……。
福岡市では、大規模なスポーツ大会を数多く開催してきた。

 

 

日本ラグビーフットボール協会は2020年6月、『ラグビーワールドカップ2019TM 日本大会 開催後経済効果分析レポート』を公開した。
同レポートによると、ラグビーワールドカップ2019日本大会では、12都市・45試合に172万人の観客が詰め掛けた。
そして、ラグビーワールドカップとしては、2015年のイングランド大会(248万人)2007年のフランス大会(219万人)に次いで、第3位となる観客数だった。また、オリンピックやサッカーのFIFAワールドカップを含めても、ラグビーワールドカップ2019日本大会は、第8位に位置している。

 

 

一方、ラグビーワールドカップにおいて過去最大の経済効果だったとされる日本大会での経済波及効果は、6,464 億円だった。
このうち直接効果3,157億円であり、第一次間接効果2,172億円、第二次間接効果1,135億円となっている。
また、GDP増加分としては、3,515億円(直接効果1,768億円、第一次間接効果1,079億円、第二次間接効果668億円)だった。
さらに税収拡大効果で412億円、雇用創出効果で4万6,340人という数字を弾いている。

 

 

東平尾公園博多の森球技場で3試合が開催された福岡市におけるチケット販売による観客数は、5万2,952人だった。
そして、同レポートによると、福岡市における経済波及効果は143 億円であり、福岡県全域では 154 億円だった。
一方、GDP効果としては福岡市75億円、福岡県85億円となっている。

 

 

スポーツの〝経済学〟、成長産業としてのスポーツを考える

スポーツ市場規模の拡大に向けた数値目標

出典: 2019年版九州経済白書『スポーツの成長産業化と九州経済』(九州経済調査協会刊)

 

九州・沖縄におけるスポーツ産業市場規模は2012年時点で6,306億円であり、九州のIC生産額と同規模だった━━━━。
九州経済調査協会がまとめた2019年版九州経済白書『スポーツの成長産業化と九州経済』では、「スタジアム・アリーナ、プロスポーツ、周辺産業、スポーツ用品の4分野のいずれも全国シェア10%を上回っており、九州には一定の産業の厚みがある」とした上で前述の数値を推計している。

 

 

政府は20166月、『日本再興戦略2016』において、〝スポーツの成長産業化〟を柱の一つに位置づけている。
そして、スポーツ施設の魅力・収益性の向上、②スポーツ経営人材の育成・活用とプラットフォームの構築、③スポーツと・健康・観光・ファッション・文化芸術等の融合・拡大の3つを主要施策として打ち出す。
2012年時点において5兆5,000億円とされていたスポーツ産業市場規模を2020年に10兆9,000億円に引き上げ、2025年には約3倍となる15兆2,000億円まで伸ばすという目標を掲げている。

 

 

先述の数値目標が達成された場合、2025年における九州・沖縄の市場規模は1兆7,245億円に達するという見通しだ。
この数字は、九州・沖縄における鉄鋼(1兆6,725億円)や化学工業(1兆6,947億円)の出荷額を上回る規模となる。
公益財団法人九州経済調査協会の松嶋慶祐調査研究部次長は、次のように解説する。

 

 

松嶋慶祐次長

スポーツに関わる分野は広く、これら関連産業も含めて成長産業とみています。

つまり、スポーツ振興に留まらず、関連施設の整備をはじめ、ツーリズムも含めた観光分野、ヘルスケ分野、IoT産業、さらに市民スポーツなども含めて成長産業として捉えています。

街や地域における賑わいを創出していく仕掛けとしても、スポーツは有効です。
そして、シビックプライドをはじめとする地域への誇りや地元への愛着を生み出していくことも期待されています。
今後、地方創生に向けた一つのコンテンツとしてもスポーツを位置づけるべきではないでしょうか

 

公益財団法人九州経済調査協会の松嶋慶祐調査研究部次長

 

 

スポーツ都市・フクオカにおける新たな可能性

福岡市には、野球の福岡ソフトバンクホークス、サッカーのアビスパ福岡、バスケットボールのライジングゼファー福岡など多彩なプロスポーツチームがあり、さらに毎年11月には大相撲九州場所もやって来る。
これらのプロスポーツの存在に加えて大規模なスポーツ大会の開催は、次代を担う子どもたちをはじめ市民の夢や希望を育み、市民スポーツの普及・振興にも大きく寄与していく。
さらに地域経済の活性化や都市ブランド力の向上にもつながっていくものとみられている。

 

 

都市経営の基本となる総合計画を新たに策定していく福岡市では、これらのスポーツ面における実績と蓄積を一つの地域資源として、〝スポーツ都市・フクオカ〟という要素も織り込んでいくことは新たな都市の魅力づくりにつながると考える。

参照サイト

世界水泳選手権2023福岡大会公式Webサイト
https://www.fina-fukuoka2022.org/

 

世界水泳選手権2023福岡大会組織委員会会議の開催について
https://www.city.fukuoka.lg.jp/data/open/cnt/3/104595/1/230123_sekaisuiei_release.pdf?20230123180918

 

(公財)日本ラグビーフットボール協会「ラグビーワールドカップ2019TM日本大会 大会成果分析レポート」公開のお知らせ
https://www.rugby-japan.jp/news/50498

 

ラグビーワールドカップ2019日本大会 開催後経済効果分析レポート
https://rugby-rp.com/2020/06/24/worldcup/51932/amp

 

2019年版九州経済白書』スポーツの成長産業化と九州経済
https://www.kerc.or.jp/report/image/hakusyo2019.pdf

 

一般社団法人日本マスターズ水泳協会『マスターズ水泳とは』
https://www.masters-swim.or.jp/about_10rules.php

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編集者兼ライター
近藤 益弘
1966年、八女市生まれ。福大卒。地域経済誌『ふくおか経済』を経て、ビジネス情報誌『フォー・ネット』編集・発行のフォーネット社設立に参画。その後、ビジネス誌『東経ビジネス』、パブリック・アクセス誌『フォーラム福岡』の編集・制作に携わる。現在、『ふくおか人物図鑑』サイトを開設・運営する。

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