東京から移住した元放送作家が語る「フクオカ」の魅力と、●●と。⑧

きむ兄が考える新生活の不安解消術 │「置かれた場所で咲きなさい」を言葉通りに受け取らないこと!?

「福岡に行ってからはっちゃけてるよね」と東京の人によく言われるというきむ兄。本当にそうなのか、もしそうならなぜそうなったのか、などなど、内観的なコラムが到着。春になり、新生活を迎えた方の肩の力を抜いてくれるようなエピソードがもりだくさんです。

4月になりました。進学や就職で生まれ育った土地を離れたり、転勤などで見知らぬ土地にやって来たりと、期待と不安の空気が福岡を包んでいます。今回は東京から福岡に移住して1年半が経とうとしているきむ兄が考える新生活での不安を解消する術を綴っていきます。
 
 

福岡に来てエネルギーが増したワケ

 
福岡に移住して1年くらいが経った頃、東京の友人が「きむ兄は東京にいたときよりも、解き放たれた感じがして活き活きしているね。きっと、生活環境が変わって、きむ兄の発するエネルギーが増しているからじゃないかな」と分析してくれました。
 
なるほど確かに。エネルギーが増しているということは、拠点を構えている福岡での生活が馴染んでいて、それが行動や表情に活きているんだなと。東京にいたときも、それなりに自由奔放な活動をしていたので、全く自覚はありませんでした。
 
そもそも、きむ兄が福岡に移住してきた理由は「楽しそうだったから」です。進学や転勤で学校や会社が福岡にあったからでなく、福岡という街の環境に惹かれ、人間関係を構築できそうだからという見立てのもと、福岡にやって来ました。仕事のベースは東京にあったので、「せっかく福岡に来たのだから、福岡でも仕事をつくろう」とたくさんの人にきむ兄を知ってもらうように行動しまくったのは、過去の記事でも書きました。


元放送作家のきむ兄が福岡に惚れ込み42歳で移住しちゃった話 

移住して1年半が経って、お目にかかる方々がみんな面白くて素敵なので、お世辞抜きにして福岡の生活は最高に楽しいですし、「福岡の生活どう?」と質問されても食い気味で「移住して良かった!」と答えています。
 
きむ兄を知っている人からは「きむ兄だったら、どこに行っても楽しく生活できるんじゃない?」と聞かれます。でも、きむ兄は「いや、福岡という街の環境が自分に合っていたんよ」と答えます。それは自分自身の性格をよく知っているからです。
 

 

仕事をすぐに辞めるのはけしからん?

 
今から20年以上前の話です。19歳のころ、きむ兄は高校2年生から3年間アルバイトをしていた池袋の居酒屋を辞め、自宅近くにあった足立区綾瀬の居酒屋でアルバイトとして働き始めました。
 

理由は新しい店の時給が200円ほど高かったから。店は変わるけど、3年働いてきたから問題ないだろうと思ったのですが、きむ兄はその店を2週間で辞めてしまいました。
 
一番の理由は人間関係でした。その店はバイトリーダー的な存在の人がいて、店長の指示をバイトリーダーが受けて、他のバイトに業務の指示が出る仕組みでした。
 
以前の店は店長の指導はあったものの、自ら考えて接客する方針で、どうすればお客さまが満足して帰っていただけるかを考えるので、あれこれと工夫をしていました。なのでマニュアル的なオペレーションもきっちり作り込まれていませんでした。
 
しかし、新しい店はオペレーションが複雑で、マニュアルがびっしり。バイトリーダーから「とりあえず、これ覚えておいて」とマニュアルを渡されました。「えー、面倒くさいな」と思ったきむ兄は、マニュアル覚えをあまりせずに仕事をしていたのですが、バイトリーダーから「いやいや、何やってんの!?」と叱責されました。
 
いま振り返ると、もうちょっと向こうのやり方を覚えておくべきだったかもしれませんが、いまよりも性格が尖っていたきむ兄は、「いや、お客さまが満足して帰れば良いじゃん!?」と思っていました。
 
そんな感じだったので、それが態度に出てしまって、バイトリーダーをはじめ、ほかのバイトの方々ともギクシャクし始めました。仕事を始めて3日目くらいには「木村は使えね〜」的な雰囲気が店には流れていました。
 
「いや、せっかく新しい店に来たんだから、もうちょっとこの店で頑張ってみよう」という考えもあります。むしろこの考えの人のほうが多いと思います。でも、19歳のきむ兄は「なんでこんなところで働かないといけないんだ!」と思い、2週間で辞めました。
 
2週間で辞めた後、きむ兄は3年働いた池袋の居酒屋の店長に連絡を取って、「もう一度働かせてください」と連絡して、またその店で働き始めました。いわゆる出戻りです。
 
このとき、ちょっとした騒動になりました。なんせ3年アルバイトで勤めたので送別会も盛大にやってくれたんです。(きむ兄は当時未成年だったので、ソフトドリンクを飲んでいました)「あれだけ盛大な送別会をしたのに2週間で戻ってくるなんて、なんて厚顔無恥なやつなんだ」と怒られたり、説教を受けたりしました。
 
確かに申し訳ないという気持ちもありましたが、その居酒屋では人間関係も良かったし、「逆に面白いわ笑」「戻ってきてくれてうれしい」と言ってくれた同僚もいました。結局、その居酒屋に戻り、それから放送作家になるまで10年近くメインのアルバイト先になりました。
 
きむ兄はフリーター時代に20ほどのアルバイトを経験しました。居酒屋だけでなく、コンサート会場の誘導整理や工事現場、テレビ番組のセットを作る仕事、深夜の百貨店で従業員用のロッカーを全て新品に交換するというバイトもしました。
 

年単位で続いた仕事もありましたが、業務内容が馴染まなかったり、偉そうにしているバイトの先輩にムカついたりして一日で、中には2時間で辞めたバイトもありました。(当時の皆さま、ご迷惑かけてすみません)
 
「いやいや、就いた仕事をすぐに辞めるなんてけしからん」という意見もあります。確かにごもっともだし、「しんどいわー、ムカつくわー」と思いながら仕事をしていた時期もあります。でも、きむ兄は「あ、自分に合わない環境だ」と思ったら、すぐにその場を離れる決断を下します。
 
 
「置かれた場所で咲きなさい」は必要なマインドか?
 
「置かれた場所で咲きなさい」という本があります。ノートルダム清心学園前理事長で修道女の渡辺知子さんが2012年に出版し、累計発行部数200万部を超えるベストセラーになりました。
 

渡辺 和子『置かれた場所で咲きなさい』詳細はこちら

詳細はこちら

 
渡辺さんは36歳でノートルダム清心女子大学の学長に抜擢されました。しかし、その年齢での学長就任に周囲の反発が激しく渡辺さんは大学内で孤立、精神的に追い詰められた時期もありました。
 
そんな渡辺さんの拠り所だった言葉が、ある神父が渡辺さんに贈った「置かれた場所で咲きなさい」という詩でした。自分の置かれた環境(土)の中で自分らしく「咲く」ために考え、行動することの大切さを説いた言葉です。
 

素晴らしい考えだと思います。きむ兄も放送作家になって数年はかなり歯を食いしばって、仕事をしていました。誰しもそんな時期は必ずやってきます。きむ兄がこうしたフクリパで執筆させていただいているようにまでになった文章力は、間違いなく放送作家駆け出しの頃があったからです。
 
でも、その環境で頑張れたのは、放送作家として「なりたい自分」と「素晴らしい仲間」がいたからです。正直、作家を辞めてもいいやというところまで精神的に追い詰められた時期もありました。夜中に目が覚めて気持ち悪くなってトイレに駆け込んでおう吐した経験も、いまでは笑いながら話せる良い思い出です。
 
とはいえ、仮に放送作家を辞めたとしても、きっと違う人生を生きる選択肢もあったかもしれないと、このテーマで記事を執筆していて思うのです。自分で言うのもなんですが、きむ兄は基本的に我慢強い反面、我慢するのが嫌いな性格です。基本的に興味のあることだけに取り組み、全力で没頭してきたから、いまの自分があると思っています。
 
 

「置かれた場所で咲く必要はない」ときむ兄は考えます

  
つらつらと自分の話を書きました。4月になって福岡に来た人、福岡から離れて東京に行った人、いろいろな立場があると思いますが、できるならその土地や職場が「自分に馴染んだ環境」か見極めるのもいいかもしれません。4月は仕事やらなんやらでバタバタして、あっと言う間に過ぎてしまうので、ちょっと落ち着くゴールデンウイーク頃がよいかと。
 

自分を見つめてみて「精神的にしんどいな」と思ったら、頭の片隅にでもいいので、その環境を離れる選択肢を入れておくといいでしょう。その環境で咲くことができなくても、別の環境で咲けばいいのです。
 
「置かれた場所で咲けなくてもいいと思う。それは単に場所(土)という環境が合っていなかっただけだから」
 
ベストセラーに対抗する気も反発する気もありませんが、きむ兄なりの人生哲学の一つが上記の言葉です。苦労はするべきだけど、苦痛はすべきではないと思うので。
 
 

まとめ

 
環境という意味では福岡は、自然環境と都市機能、クリエイティブとイミテイティブなど、対極にあるもののバランスが絶妙に取れている街だと思います。
 
東京の友人から「表情が穏やかになった」「エネルギーが増した」と言われているきむ兄ですが、それは福岡というバランスの取れた街がそうさせているのかもしれません。
 
福岡で生活していると、仕事や進学で九州各地からやって来た人を多く見かけます。彼らの話を聞くと、福岡という環境に上手に適応していると思います。中には、人生で初めて、生まれ育った土地を離れて福岡で暮らしている人もいます。
 
福岡という素晴らしい環境で、皆さんがそれぞれの花を咲かせることができますようにという願いを込めて、締めくくりたいと思います。

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移住系ライター
きむ兄(木村公洋)
2020年秋に東京から福岡に移住した元・放送作家。現在は中小・ベンチャー企業、フリーランスのPRに関するアドバイス・企画立案戦略をサポート。マスコミ業界に15年いた目線から福岡の魅力、東京との違いを発信します。東京で見なかったもの「高校の同窓会中止のお知らせが新聞の全面広告に載っていた」

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