【ランキングで知る福岡の実力】

『全国戻りたい街ランキング』トップ級の福岡市。2万人の雇用を創出したヒトや企業のU・Iターン戦略とは。

コロナ禍が社会システムや経済活動、ライフスタイルに重大な影響を与える中、ヒトやカネ、ビジネスが東京圏から地方へ流出しています。『生まれ育った街に戻りたい』ランキングでもトップクラスの福岡市は、ヒトや企業のU・Iターンについて、どのような戦略や取り組みで臨んでいるのでしょうか?

 

●『全国戻りたい街ランキング2021』の第2位は、福岡市だった

地域応援サイト『生活ガイド.com』(運営:株式会社ウェイブダッシュ)が発表した『全国戻りたい街ランキング2021』において、《生まれ育った街》と《住んでいる街》が違う同サイト会員のうち、住みたい街に《生まれ育った街》を選んだ人の割合で福岡市は、「都会と田舎のバランスがいい」ことや、「行政の手厚い子育て支援施策」などもあって第1位となった兵庫県明石市に次ぐ第2位だった。


(出典:地域応援サイト『生活ガイド.com』(運営:株式会社ウェイブダッシュ))

福岡市は、同サイトが実施する『住みたい街ランキング』の常連でもあり、同ランキング2021では横浜市、札幌市、東京都港区、同世田谷区に次ぐ第5位だった。同サイトの住民意識チャートによる分析において福岡市は、「バランスがよく、どれも比較的高評価だった」。

また、住民からの声としても「コンパクトにまとまっているので移動がしやすい」「飛行機・新幹線・船・バスなどの交通網が発達していて便利」「海や山といった自然も近い」などの意見が寄せられた。中でも「おいしいものが安く食べられる」という声も多かったそうだ。
 

●コロナ禍で〝ヒト〟が東京圏から地方へのU・Iターンを加速

新型コロナウイルスが全世界的に猛威を振るった結果、生活様式や社会システムに大きな影響をもたらした。そして、人々の暮らし方や働き方も大きく変わろうとしている。リモートワークやワーケーションを導入した企業が増え、働く場所の選択肢も広がり、地方への転職・移住を考える人たちも増えつつある。

特にコロナ禍によって従来の弊害やリスクが一気に顕在化したこともあり、東京に一極集中していたヒトやカネ、ビジネスが、地方都市へ流出し始めている。総務省の統計によると、東京圏は2020年7月、8月、11月、12月で転出超過となった。

故郷や地方へ移住して仕事をすることに興味を持つ人の割合は29.2%―――。転職・求人を支援する『doda』による20~59歳の男女・正社員1万5000人を対象にしたインターネット調査「コロナで高まる地方への移住転職ニーズ!Uターン・Iターン転職を望む理由とは?」において、地方移住への関心の高さが明らかになった。

同調査によると、「地方転職に興味がある」と回答したうちの2.6%の人が移住済みであり、3割弱の人が地方への移住転職に興味を持っていた。地方移住の主な理由としては、「実家がある」「自然にあふれた魅力的な環境」「都会の生活に疲れた」だったという。


(出典:転職サービス『doda』)

現状、人口1,400万人の東京圏(東京都、神奈川県、埼玉県、千葉県)は、日本の人口の実に3割弱を占める。このような東京一極集中を是正するために政府は2014年、『まち・ひと・しごと創生本部』を設置。2019年度から5年間限定で、東京圏から圏外などへの移住や起業・就業をする人への支援金制度を設けている。移住支援金は、最大100万円(単身者は同60万円)、起業支援金は同200万円だ。

住宅リフォーム代の支給、定住促進補助金の支給、お試し移住体験、Uターン奨学金返済支援補助制度、ひとり親家庭就学費用助成、2人目以降の子どもの保育料無料……。〝受け入れ先〟となる地方自治体では、積極的な移住者増加策を打ち出す。今後のポストコロナ時代において、〝テレワーク移住〟も注目されており、以前の特集でも立命館アジア太平洋大学の久保隆行教授がその可能性を予見した。
☆あわせて読みたい⇒福岡市の”住みやすさ”が、『日本の都市特性評価』の「生活・居住」分野でトップに!
 

●〝超成長都市〟福岡市へのヒト・企業誘致で2万人雇用創出

 世界のチャレンジャーを福岡市へ集める――。2021年10月4日、「天神ビッグバン」での規制緩和の第一号ビル「天神ビジネスセンター」を会場に、オンライントークセッション「福岡から世界への挑戦!福岡だから実現できる新たなビジネスの可能性。」が開催された。

当日は、福岡市の髙島宗一郎市長をはじめ、天神ビジネスセンターを手掛けた福岡地所株式会社の榎本一郎社長らがスピーカーとして登壇して、福岡の未来ビジョンや世界への挑戦方法を語り合った。


(出典:福岡市シティプロモーションサイト『Fukuoka Facts』)

同セッションを企画した福岡市経済観光文化局創業・立地推進部企業誘致課長の中村大志さんは、次のようにコメントする。

中村さん

クリエイティブ関連やコールセンター、健康・医療・福祉、環境・エネルギーなどの分野を絞った〝ドブ板営業〟で企業誘致に取り組んでいます。
今後、都心開発で高機能なオフィスが増えていくことは、企業や人材の〝受け皿〟として魅力を増していくことであり、大きなチャンスです。
優秀な人材や企業を福岡市に呼び込んでいくことで、新たな好循環を生み出していきたいと思います。

福岡市では、8年連続で企業誘致件数50社を突破している。過去10年間の累計で500社超となっており、雇用者数でも2万人余りを数える。

一方、企業サイドでは、福岡市の魅力や可能性をどのように見ているのだろうか。地場広告代理店・株式会社西広と大手広告代理店・株式会社博報堂九州支社の経営統合で2020年4月に発足したのが、株式会社九州博報堂だ。同社の初代トップに就いたのは地元出身で長年、博報堂グループの人事を手掛けてきた江﨑信友代表取締役社長だ。自らも〝Uターン〟就任となった江﨑社長は、次のように語る。

江﨑社長

福岡の住みやすさを通じて人間らしく暮らせる点は魅力であり、強みだと実感しています。ただ、たとえ期間は短くても東京での暮らしや仕事を一度経験することは大事だと考えます。
当社では、《九州を豊かにしたい》との思いを持つ人と一緒に地域の未来をつくっていく〝九州愛〟採用を行った結果、Uターン・Iターン者が新卒採用や中途採用の大半を占めます。一度、外での経験を積むことで能力と共に地元愛も高まるのはないでしょうか。


 

●移住転職(U・Iターン)支援会社からみた福岡の魅力と可能性

地方移住において課題になるのは、大きく分けて「仕事」「住まい」「子育て・教育」「医療・福祉」の4つだ。中でも仕事については、大きなテーマとなる。

地方の場合、大都市圏に比べてその絶対数が少ない上に自分のキャリアを生かせる仕事や、やりたい仕事を新天地で見つけることが困難なケースもある。大都市圏で働きながら、遠隔地となる地方への移住転職活動をする場合、難易度も増す。 「首都圏のハイクラス人材が地域で活躍できる社会をつくる」を事業ビジョンに掲げて、地方への移住転職を支援する株式会社YOUTURNの高尾大輔代表取締役は、次のように語る。

高尾代表

暮らしやすさで定評のある福岡は、幸福感を感じられるちょうど良い都市サイズに加えて、〝余白〟がある点も魅力だと考えます。
余白とは足りない部分でなく、《これから何かできる》という可能性を秘めた伸びしろです。福岡の企業がUターン者を歓迎して期待する中、人生設計やキャリア形成において東京よりも豊かな生き方ができることも提案していきたいと思います。


 

●《福岡の強み=地域性✕官支援✕民力》をヒト・企業のU・Iターンに活かす

コロナ禍による大きなうねりに乗じて、東京圏をはじめとする域外から〝ヒト〟を引き寄せられる魅力が高まれば、移住転職(U・Iターン)も増えて、さらに企業進出や不動産投資というビジネスやカネなどの新たな〝投資〟も呼び込んでくる。

〝住みやすさ〟という最大の地域資源を持つ福岡市は、おいしい食や豊かな自然、コンパクトで交通アクセスにも優れた利便性なども相まって、『住みたい街』としても全国トップクラスの評価と人気を博している。福岡市が今後、新たなヒト、ビジネス(企業)、カネの獲得に向けて、行政による支援、そして民間による事業活動を両輪としていくことで新たな〝福岡市の魅力〟が生み出されていくものと考える。

【参照サイト】
地域応援サイト『生活ガイド.com』『全国戻りたい街ランキング2021』
8年連続50社突破!! -本社機能・成長分野の立地企業数-
「福岡から世界への挑戦!福岡だから実現できる新たなビジネスの可能性。」
ホンネの転職白書 「コロナで高まる地方への移住転職ニーズ!Uターン・Iターン転職を望む理由とは?<15,000人に調査>」
※参考: 住民基本台帳人口移動報告 2020年(令和2年)結果

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編集者兼ライター
近藤 益弘
1966年、八女市生まれ。福大卒。地域経済誌『ふくおか経済』を経て、ビジネス情報誌『フォー・ネット』編集・発行のフォーネット社設立に参画。その後、ビジネス誌『東経ビジネス』、パブリック・アクセス誌『フォーラム福岡』の編集・制作に携わる。現在、『ふくおか人物図鑑』サイトを開設・運営する。

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