【ランキングで知る福岡の実力⑫】

なぜ起業志願者が福岡に多い。それは、活気があり、若者も多く、住みやすく、オープンだからである。

国家戦略特区『グローバル創業・雇用創出特区』の福岡市は、政令指定都市の中で起業志望者の割合が最も高い都市です。国の『グローバル拠点都市』でもある福岡市のベンチャー企業への"投資観"を、1983年から拠点を置くベンチャーキャピタル(VC)、ジャフコ グループ株式会社の山形修功九州支社長に聞きました。

なぜ、福岡市は"創業都市"になりえたのだろうか?

新たに仕事をしたい人のうち起業を希望する人の割合10.2%で第1位――。福岡市の基礎情報をまとめたWebサイト『Fukuoka Facts』によると、福岡市の起業希望者割合は20政令指定都市中で首位である。


(出典:『Fukuoka Facts』)

2020年7月、福岡市は内閣府の『スタートアップ・エコシステム拠点形成戦略』に基づき、東京、大阪、名古屋と共に「グローバル拠点都市」に選ばれている。

なぜ、福岡市は創業希望者が多いのか?

この点について、Forbes JAPAN『日本で最も影響力のあるベンチャー投資家ランキング』2021年版で第1位に輝いた、ジャフコ グループ株式会社九州支社長であり、福岡在住14年目の山形修功さんは、次のように考える。


”日本一のベンチャー企業投資家”でもあるジャフコ グループ株式会社九州支社長の山形修功さん

山形さん

福岡は、元々ベンチャー支援の盛んな地域です。福岡県は、麻生渡・前知事時代の1999年にフクオカベンチャーマーケットを立ち上げて現在も毎月開催しています。
高島宗一郎市長が「スタートアップ都市ふくおか」宣言をした福岡市は、「グローバル創業・雇用創出特区」として創業支援拠点「スタートアップカフェ」を誕生させ、次世代型創業支援施設「Fukuoka Growth Next」(fgn)を発足させたことも大きかったと思います。
福岡市は、活気があり、若者も多く、住みやすい上によそ者を受け入れるオープンなまちです。福岡の地で生まれ育った起業家がいる一方、外国人も含め、他地域から来た人たちが起業しているケースも多々あります。
福岡市は、第三次産業の多い都市でもあり、ITを含めたサービス業で起業しやすいという側面も持っています。福岡への転勤前に「福岡は住みやすく、物価も安く、自然が豊かで食もおいしくて、生活の質が高い」「豊かな生活環境や労働環境の良さが、豊かな発想を生み出すので、福岡には独創的なエンジニアが多い」という話を聞いていましたが、実際その通りでした。

合わせて読みたい⇒第三次産業率No.1!の福岡市。その理由は、「都市型産業」への特化を目指した取り組みにあった。

「投資をしたい企業」「投資をしない企業」。 その違いはどこにあるのだろうか?

2016年1343件・1454億円、2017年1374件・1787億円、2018年1546件・2498億円、2019年1693件・2765億円――。

一般財団法人ベンチャーエンタープライズセンターが2020年9月に発表した『直近四半期 投資動向調査 2020年 第2四半期(4月~6月)』によると、ベンチャーキャピタルの投資件数・投資額は、コロナ禍の影響で2020年上半期は低迷しているものの、2019年まで4年連続で右肩上がりの伸びをみせていた。

山形氏は、投資先である株式会社アイキューブドシステムズ(福岡市中央区・ 佐々木勉代表取締役社長)の株式公開によって多額のキャピタルゲインを獲得した。

ベンチャーキャピタリストの目から見た「投資をしたいベンチャー企業」「投資をしないベンチャー企業」の違いは何なのか? この点について、山形氏は、次のように説明する。

山形さん

投資のポイントとして、3つの要素があります。マーケット(市場)商品・サービス(モノ)経営者・チーム(ヒト)です。
この3要素が全てそろっている、つまり伸びていく市場であり、魅力的な商品・サービスを手掛け、それらを扱うヒトに経営力があれば、VC(ベンチャーキャピタル)が資金(カネ)や情報などの他の経営資源を提供することで更なる成長が期待できます。
しかし、現実的に3要素とも際立っていることはまれです。その場合は、ヒトを最重要視します。ヒトの何をみるか、それは熱意です。「なぜ起業したのか」「なぜ挑戦するのか」という原動力に共感できれば、投資をします。
個性的な経営者が多い中、私が好きなタイプは壮大な野望を抱きつつも、唯我独尊ではなく、他人に積極的に意見や助言を求めるバランス感覚のあるヒトです。実際、そういう経営者への投資が多かったと思います。
とはいえ、成功には運も含めてさまざまな要因があり、決まった方程式はありません。一方、失敗する企業、つまり投資したくない企業は、経験知である程度類型化できます。これもヒトに起因することが多く、例えば理念先行型であったり、計数感覚に疎い経営者の場合、失敗する確率は高いと思います。
市場の立ち上がりを読み間違えたり、ビジネスモデルに難があったりするケースもありますが、多くはヒトの問題です。

福岡のベンチャー企業が世界市場で戦うためには、何が必要となるのか?

今日のグローバル経済においてはベンチャー企業、中でも最新テクノロジーを得意とするスタートアップは、既存の大企業を脅かす存在になっている。金融界では、スタートアップのうち非公開で評価額10億米ドル超を「ユニコーン企業」と呼ぶ。日本でも経済産業省がスタートアップの海外展開とユニコーン企業の創出を目指す「J-Startup」を立ち上げるなど、国を挙げて支援している。

福岡のベンチャー企業やスタートアップが世界で戦う上で何が必要なのだろうか? この点について、山形氏は次のように話す。

山形さん

まず、“世界で戦う”という思いが大事です。これがなければ始まりません。私も「世界で戦える企業を送り出す」という思いを常に持っています。
もっとも、思いだけではうまくいかず、業種業態にも左右されます。ゲームやエンターテインメントなどで優れたコンテンツをつくれば、言語の壁も比較的少なく、海外でも勝負しやすいとは思いますが、飲食業やサービス業の場合、海外で短期間に業容を拡大するのは容易ではないでしょう。
私個人は、必ずしも海外進出をベストとは思いません。日本国内に十分な市場があるのなら、言語面で不利な海外市場をあえて狙わず、国内のマーケットを取るという戦略は十分ありえます。
逆に、海外展開を考えるのなら、最初からシリコンバレーで起業するという選択肢もあり、実際にそういう起業家も出てきています。でも、福岡に限らず、全国的にも海外展開を目指すベンチャー企業やスタートアップは少ないのが実情であり、気持ちの部分だけでも世界で勝負する気概を持つ起業家が増えて欲しいと願っています。

ベンチャー企業の隆盛な福岡市。今後、どのような都市を目指すべきなのか?

地盤沈下の著しい日本経済の復活に向けて、従来の発想と違う視点を持つ起業家の存在が注目される。既存の大企業も過去の成功体験を捨て、ベンチャー企業やスタートアップと組むことで新しい技術・発想を取り込もうとしている。

一方、自治体も起業支援は重要政策の一つになりつつある。新たな企業の誕生は雇用を生むだけでなく、優秀な若い人材の大都市圏への流出を防ぐ面もあり、地方創生の要になっている。この点も踏まえて、福岡市の今後について山形氏は、どのように考えているのだろうか?

山形さん

東京一極集中は良くありません。東京の対抗馬とまではいかなくても、福岡市にはベンチャー企業が一定程度集積する都市になってほしい。そして、「東京以外なら福岡」という選択肢になると嬉しいですね。
また日本の人口が減っていく中、福岡市には地方都市としての可能性を発揮してほしい。地方から東京へ移り住むのでなく、地方から福岡へ、あるいは東京から福岡へという流れが今後増えて良いでのはないでしょうか。
住みやすい福岡に「こういう企業がある」「こんなエンジニアがいる」ということで国内外から優秀な人たちがやって来て、住んで働き、企業が成長すれば、新たな雇用を生み出します。創業件数だけでなく、株式公開も含めた成功事例を増やせば、優秀な地元人材の受け皿となります。そんな人材が後に起業して新たな企業を成長へ導くといった循環ができたら、福岡市のスタートアップ・エコシステム(生態系)は、次のフェーズに移れると思っています。

福岡市は今、ベンチャー企業やスタートアップ分野においても存在感を発揮している。国内外で起業支援・育成に注目が集まる中、福岡市が自ら挑戦してきた取り組みの情報発信をさらに努めることは九州・日本に留まらず、広くアジア・世界の起業家育成や経済活性化にも寄与するものと、筆者は考える。

< 参照サイト >
わたしたちには夢がある!- 起業希望者の割合(Fukuoka Facts)
一般財団法人ベンチャーエンタープライズセンター『ベンチャーキャピタル等投資動向調査(2020年2Q)』
『Forbes JAPAN』2021年1月号「日本のベンチャー投資家ランキング2021」
【人物図鑑】福岡・九州を地盤に奮闘する、〝日本一〟のベンチャー企業投資家
 

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編集者兼ライター
近藤 益弘
1966年、八女市生まれ。福大卒。地域経済誌『ふくおか経済』を経て、ビジネス情報誌『フォー・ネット』編集・発行のフォーネット社設立に参画。その後、ビジネス誌『東経ビジネス』、パブリック・アクセス誌『フォーラム福岡』の編集・制作に携わる。現在、『ふくおか人物図鑑』サイトを開設・運営する。

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