福岡発!ビンテージリメイクブランド「TRAINERBOYS」全国展開への挑戦

福岡を拠点とする新鋭ブランド「TRAINERBOYS」。今やビンテージのスウェットをリメイクした人気ブランドとして東京のアパレル関係者からも名前が上がるほど。しかし、一時はデザイナーとしての夢を諦める寸前だった過去を持つ勝部さんに、PARQ(パーク)植村さんとの出会いと、これからを伺いました。

デザイナーとして夢をあきらめる寸前だったころ

島根県出雲市出身の勝部さんは、高校卒業後、進学の為福岡へ。福岡大学に入学し在学中は大好きだったファッションの仕事に興味を持ち、陸上競技と並行してセレクトショップの販売員として働いていました。

教職員としての将来も考えますが、怪我をきっかけにファッション界へ進むことを決意。卒業後はセレクトショップの店長兼バイヤーとしての経験、そして売上の実績を積みますが、30歳の時に将来を考えるようになり、自分の服をつくる為に店を辞め、縫製工場へ転職します。


「TRAINERBOYS」デザイナー勝部幹生さん

勝部さん

将来のことを改めて考えた時、自分の本当にやりたいこと=服がつくりたいと思ったんです。ですが、服をつくる上でまず現場で勉強をしたいと思い、自分で縫製工場を探して応募し入社しました。

縫製工場の社長にいずれ洋服をつくりたいことを話したら、裁断は服づくりのすべてがわかるからと、裁断業務を担当させてもらえることになりました。社長は僕の夢を応援してくれ、一から育てようとしてくれたんです。

ですが、縫製工場の給料では生活ができなくなってしまい、1年半で辞めることになりました。その後生活の為に職業訓練校に通い、電気技師の勉強をして電気会社に就職したんです。

消えなかった服づくりへの思い

生活の為にファッションとは全く無関係の業種に転職した勝部さんですが、服づくりの夢は捨てきれず、趣味でつくった自分の服を知り合いの店で販売してもらっていたそうです。


縫製工場を辞めてからも服づくりを続けていた勝部さん

勝部さん

縫製工場に通っていた時に、“自分にしかできないスウェット”をつくりたい!と自分がコレクションしている古着のビンテージスウェットを使ってパッチワークのリメイクを考えたりしましたが、自分の中でも面白くないと思い、とても葛藤しました。

ビンテージスウェットは高価なので、ハサミを入れることも躊躇うぐらいなんですが、ある日思い切って“ビンテージスウェットを2着使って贅沢なスウェットをつくっちゃおうか”と思いついたんです。そこで2枚のビンテージスウェットの表面を使ったスウェットをつくりました。
 
やっと自分の思い描く服ができたので、このスウェットを福岡でモノづくりをしている人に見てもらいたいと、PARQの植村さんを訪ねました
 
植村さんを訪ねて行った日は、偶然雑誌のストリートスナップの撮影をお願いされていたので、頭の先から足先までバッチリ決め込んで植村さんを訪ねました。僕のファッションを見た植村さんの反応がよく、スウェットを見てもらった時にすぐ「一緒にやろうよ」と言われたんです。
 
当時はまだ電気会社で働いていて、コレクションのビンテージスウェットを使って服づくりをしていたので大量生産もできないし、僕の中では現実味がなくて冗談だろうと帰りました。でも半年後にもう一度会いに行った時にまた「一緒にやろう」と言われて、これは本気で言ってくれているんだと思いました。

ストーリーから掘り起こされた「TRAINERBOYS」のコンセプト

そして、プロデューサーである植村さんから、ブランドのストーリーやプロダクトをつくることを教わり、ブランドづくりを一からはじめることになります。


ストリートで着る新しいスウェット「TRAINERBOYS」。素材とデザインが違う両表面で着ることができる、着心地にもこだわりを感じる一着。

勝部さん

最初の1着をつくった時からTRAINERBOYSという名前をつけていたんです。これは僕が陸上競技をやっていたこともあって、チームウェアとしてのスウェットが身近だったからです。
 
スウェットではなく“トレーナー”にしたのは、トレーナーという響きが好きだったことと、辞書で調べてスポーツウェア全体をトレーナーということを知ったのでTRAINERBOYSという名前をつけました。
 
そして、植村さんと一緒に改めてブランドのストーリーを整理していた時に、自分の原点である陸上競技の歴史を調べていて、ひとりの高跳び選手のことを知ったんです。

当時のスパイクは踏み切る足と走る足用に左右別のもの履いていて、素材もデザインも違う。左右違うスパイクを履いて飛ぶ彼の姿を見た時に、かっこいいと思いました。
 
そして彼は、皆がやらなかった新しい飛び方で、オリンピックで金メダルという結果を出すんです。これだと思いました。彼のファッションと成し遂げたことが僕のファッションとリンクしたんです。
 
モードからカジュアルまで幅広く着こなすことができるストリートで着る新たなスウェット。ビンテージスウェットの生地で、両表面で着ることができる僕のスウェットの、“古き良きを愛して新しいものを着る”という、自分でも意識していなかったコンセプトを掘り起こされました。

新ブランド「TRAINERBOYS」の東京展示会が転機に

勝部さんは、2018年に植村さんと共にTRAINERBOYSを立ち上げます。そしてブランドとしての第一歩を踏み出すのです。


勝部さんとPARQ代表の植村浩二さん

勝部さん

僕のスウェットは大量生産できないものだと思っていました。ですが植村さんに「こんな大量生産できないものを大量生産したら、世の中に広まるよ」と言われたんです。
 
工場や資材の手配などアパレルブランドを立ち上げる時に必要なものすべてを教えてもらい、僕が最初につくった1着からパターンを取り、ビンテージ加工をしました。
 
日本に二台しかない加工機で、水を使わず生地を傷めずビンテージの風合いを再現し、今まではビンテージスウェット2枚でつくっていたものを、新品でつくれるようになりました。そして、東京で展示会を開いたんです。
 
まだ会社員だったので、植村さんに展示会を託し、福岡で連絡を待ちました。結果は大手ブランドが運営するセレクトショップとの取引が次々に決まり、大成功

TRAINERBOYSのストーリー性と誰もが身につけてきたスウェットを、“ビンテージの風合いを新品で出す”という新しいカタチで表現した商品が各ブランドの心を掴んだと聞きました。
 
展示会で、植村さんが僕をファッション界に戻そうとしてくれたんです。植村さんにただ雇われるのではなく、結果を出したブランドのデザイナーとして、ファッション界に戻るきっかけをつくってくれたんだと思っています。
 
この展示会から半年後に会社を辞め、正式に植村さんの会社に入社しました。展示会は自分が好きなものが何かを再認識する機会にもなりました。ファッション以外の仕事は全然面白くないんです。僕はファッションが好きなんだ、服づくりがしたいと改めて思いました。
 
現在は、TRAINERBOYSのデザイナー、PARQで展開する各ブランドの生産管理とストアマネージャーを兼務していて、従業員としてではなくパートナーとして働く為に、日々学びを得ています。

ブランドづくりに必要なものは経験、知識、そして歴史を知ること

一度はファッション界を諦め、そして戻ってきた勝部さんにとってブランドづくりとは、これからモノづくりを目指す人に伝えたいことは何でしょう?


「TRAINERBOYS」はスポーツウェアに敬意を表しながら、ストリートで着用できる服作りを信念とするブランド。 

勝部さん

ブランドとして新しいものを発表していくには、経験、知識、そして温故知新というか過去の洋服の歴史から学ぶことが大事だと思っています。
 
僕たちが経験してきたアメカジや古着文化、モードといったファッションだけでなく音楽や映画などその時代をつくってきたものを知って欲しいですね。
 
これからは“個”がないと生きていけないんじゃないかと思っています。誰にもできない、自分にしかできないと思えるものを見つけて欲しいです。

次世代のファッション界を担う福岡発の新ブランド

福岡のファッション界を牽引してきた植村さんが、40歳を過ぎ次の世代へチャンスを与えたいと思っていた時期に出会ったのが勝部さんでした。

そして福岡では少ない“モノづくりをしたい”という思い、縫製工場で働き、辞めた後でも自分で服をつくり続けている勝部さんの本気の思いが植村さんを動かし、ブランドとしてのTRAINERBOYSが誕生しました。
 
勝部さんは植村さんから、改めて洋服が持つ機能美の大切さや、モノをつくる上での細かい気遣い、接客も含めていかに洋服を愛するかということを教えてもらっているそうです。

福岡からはじまる新ブランドとして、TRAINERBOYSが多くの人に愛される存在になることを期待しています!


■勝部幹生
1983年生まれ。島根県出雲市出身。福岡大学スポーツ科学部スポーツ科学科卒業。大学卒業後、セレクトショップのバイヤー兼店長を経て、服づくりをしたいと縫製工場へ転職。その後福岡のファッション界を牽引するPARQ植村浩二氏と出会い、2018年にビンテージリメイクブランドTRAINERBOYSを展開。博多阪急の新鋭ブランド出店に選ばれるなど、話題の新ブランドとして活躍が期待される福岡発のブランドとなっている。


PARQ(パーク)
福岡市中央区平尾1-4-7 土橋ビル1A
TEL : 092-406-6671
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ライター
山内 亜紀子
福岡女子短期大学音楽科卒。卒業後ラジオ局の番組制作に関わる。その後転職し、福岡の数々の情報誌とWEBメディアの編集・ライターを勤める。編集では映画紹介やコラム、インタビューを経験。2015 年よりフリーの広報、ライターとして主に映画、グルメ、旅行コラムを執筆中。

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