珈琲フッコ

1980年創業。二度の移転を経て、大手門の地で今なお息づく自家焙煎珈琲店「珈琲フッコ」【福岡市中央区】

いつの時代でも「カフェ」という存在は人々をトリコにします。近年のSNS人気も相まって、おしゃれなカフェ巡りを楽しむ女性も多い中、にわかに脚光を浴びているのが「昭和レトロな喫茶店」。中年以上の方はノスタルジックを感じ、若者にとってはおしゃれなカフェにないレトロ感が斬新だと感じるんだそうです。そこで福岡に今なお現存する「昭和レトロ喫茶店」をピックアップしてご紹介していきたいと思います!

「珈琲フッコ」があるのは大手門の細い路地沿いのアパートの一室

 

珈琲フッコ」があるのは、明治通りと昭和通りが重なる「荒戸交差点」からほど近い住宅地の細い路地。

 

最寄り駅の福岡市営地下鉄「大濠公園駅」からは4番出口を出て徒歩1分です。

 

 

路地に溶け込むかのように佇むアパート「花田荘」。「珈琲フッコ」はこの一階です。

 

 

目印はこちらの小さな看板。クラシカルでレトロなフォントが愛らしささえ感じさせてくれます、

 

剥き出しのコンクリートとレンガで構成されたヴィンテージ感あふれる空間

 

入店すると、外観からは全く想像できないような、剥き出しのコンクリートとレンガで構成されたヴィンテージ感あふれる空間が出現します。

 

まるでブルックリンにある古いアパートのようなイメージです。

 

 

壁面には廃材が活用されており、アンティークな照明を含めて雰囲気抜群。

 

聞いたところによると、この内装は大家さんがご自分の趣味でリノベーションしてくれたんだそうです。なんとラッキーな!

 

 

そしてこちらは5席だけのオールウッドなカウンター。ペンダントライトそばの棚にはマスターが好きなレコードジャケットが飾られています。

 

マスターとのトークを楽しみたいという方はぜひこちらの席へどうぞ。

 

「珈琲フッコ」がはじまるまで

創業当時から掲げられていたという激シブな看板。実に味があります。

 

珈琲フッコのマスターを務めるのは市原道生さん(69歳)。

 

元々はエンジニアになりたかったこともあり、福岡市内の工業高校に進学。ちょうどその頃の日本は高度経済成長期の真っ只中で、若者の就職先は引く手あまただったんだそうです。

 

その中で、九州産業大学の職員の話があり、高校卒業後は同大学の工学部のゼミの手伝いなどの仕事に6年ほど従事。退職後は好きなバイクで北海道にツーリングの旅に出て、支笏湖のユースホステルなどで数か月住み込みで働いたそうです。

 

やがて冬の到来を前に福岡へと戻り、「さてこれから何をしようかな?」と考えていたところ、たまたま友人が自家焙煎の珈琲店をはじめるという話を聞き、面白そうだと思い立ち上げに参加。

 

やがて友人が中央区大名の築50年の古い建物に「珈琲フッコ」を開業。マスターもそのまま珈琲フッコに在籍し、二人でお店を切り盛りしていました。

 

やがて3年の時が経ち、友人が転職するのでお店を閉めるという話になるのですが、「せっかく軌道に乗ってきたのに閉めるのはもったいない」と事業を承継。

 

以来、一人で珈琲フッコを営んでこられました。

 

二度の移転を経て大手門の地へ

その後、順調に営業を続けてきた珈琲フッコに災難が訪れます。

 

2005年3月に九州北部を襲った、マグニチュード7、最大震度6弱の「福岡西方沖地震」。

 

元々、当時の大名地区は今とは違って古い家屋が点在しており、珈琲フッコが入居していた築50年の建物も近辺の建物同様、営業できないほどの壊滅的なダメージを受けてしまいました。

 

しかし、営業が再開できずに困っているマスターに幸運が舞い込みます。お店からほど近い場所に複合商業ビルがあり、その一室を借りられることになったのです。

 

震災からわずか2ヵ月、珈琲フッコは移転オープンし、営業を再開しました。

 

こちらが創業当初から使っているというフジローヤル社製の半熱風式1キロ焙煎機。40年以上使っていてもこれまで一度も壊れたことがないんだとか。年季の入ったその姿から連想できるように、珈琲フッコの歴史を共に歩んできた名機なのです。

 

しかし、それから13年後、発展を続ける福岡の街で事業を営む上でまたしても問題が発生します。

 

それは大名地区の家賃の上昇。福岡の地価が上がるにつれ、家賃も徐々に高騰を続け、ついに売り上げから家賃を捻出するのが困難な状況になってしまったのです。

 

「このままではもう商売を続けることはできない。閉店するしかないかな」

 

一度は閉店を決意していたマスターの元に、またもや朗報が入るのです。

 

大手門にある古いアパートが借りられるかもしれない

 

それから大家さんとトントン拍子で話が進み、現在の「花田荘」に二度目の移転オープンをしたのが2018年5月。それ以来、この大手門の地で営業を続けられています。

 

エンジニア心に火をつけるコーヒー焙煎

コーヒーの焙煎は、創業当初に友人に教わった程度の完全な自己流なんだそうです。

 

しかし、元々エンジニア志望で工学が好きだったこともあり、感覚ではなく科学的データを元に焼き具合やブレンドのバランスを研究してきたそうで、今でも「おいしい一杯」のために研鑚の日々を続けているそうです。

 

 

珈琲豆は100g/税込580円より購入できます。ブレンドコーヒーから珍しいストレートコーヒーまで10種類前後が揃っています。

 

味の好みをマスターに伝えてお気に入りの味を探してみてくださいね。

 

手造り珈琲と焼き菓子で憩いのひとときを

 

スタンダードブレンドコーヒー(税込600円~)とパウンドケーキ(税込360円)。

 

ブレンドコーヒーはこの「スタンダード」と、ちょっと濃い目の「ストロング」、そしてギリギリまで深く焙煎した「フレンチ」の3種類がラインナップされています。

 

 

スタンダードブレンドコーヒーは、苦みと酸味、コクのバランスのとれた珈琲フッコの看板ブレンド。

 

焼き菓子との相性もピッタリなのです。

 

 

パウンドケーキはベーシックなバニラ風味、ラム酒に漬けたレーズン入り、チョコチップ入りの3種類が用意されています。

 

焼き菓子は他にもフォンダンショコラやベイクドチーズケーキ、クッキーなどがあるので、お好きなコーヒーとのマリアージュを楽しんでみてくださいね。

 

親子二代で珈琲フッコの歴史は続いてゆく

 

マスターと一緒にお店を切り盛りするひとりの女性。随分若いスタッフさんがいるなぁと思いきや、聞いてみるとなんとマスターの娘さんでした!

 

幼い頃からお店に出入りしているうちにコーヒーに興味が湧き始め、現在は跡を継ぐべくお父さんから焙煎技術を学んでいるんだそうです。

 

せっかくなので一緒に写真を撮りましょう!とカメラを向けると、恥ずかしがる娘さんの手を引いてファインダーに収まるお二人。なんともまあ、仲睦まじい事♪

 

 

取材中、マスターの話の中で印象的だったのは「僕は運が良いんです」という言葉。

 

「仲間からのひょんな誘いでお店を手伝うことになり、それから店を引き継いで。地震でお店が営業できなくなってもすぐ移転先が見つかったし、この花田荘に移転できたのもそう。そして娘も跡継ぎになってくれるという。これまで40年以上営業してきて大きなトラブルも一度もないし。振り返ると大成はしなかったけど、結構順風満帆だったと思いますね」。

 

それはきっと、いつも謙虚なマスターのお人柄のおかげなのかもしれませんね。

 

 

珈琲フッコ

住所:福岡市中央区大手門3-5-20 花田荘101

営業時間:13:00~23:00(22:00 O.S)/日曜日のみ 13:00~21:00(20:00 O.S)

電話番号:092-714-5837

定休日:毎週火曜日・水曜日

Twitter:https://twitter.com/coffee_fucco

 

 

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ライター
久原茂保
2001年より福岡発のカフェ情報サイト「CAFE@TRIBE(カフェ・トライブ)」を開設。以来、20年以上に渡り福岡県を中心に数多くのカフェを訪れ、日々取材活動に励んでいる。近年はカフェアドバイザー業やカフェのリブランディング、カフェプロモーションなどカフェ業界の知見とネットワークを活かしたオンリーワンな事業を展開中。グラフィックデザインやWEBデザイン、広告コンサルも。

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