格闘家から、ソーセージクリエイターへ。華麗なる転身
高校時代から格闘家に憧れていた中山さん。「仁義なき戦い」のイメージから、広島に行けば強くなれると思い込み、広島の大学に進学。卒業後は1度就職したものの、1年半ほどで退社し、そこから格闘家としての道を歩んだ。
中山さん
ドットコミュ代表・ソーセージクリエイターの中山浩彰さん。通称「鹿さん」と呼ばれている
鹿や猪などの生肉を加工して販売しているうちに、もっと身近なかたちにして世に送りだしたいと思うようになった。
中山さん
余計な添加物は使わず、広島近郊のフレッシュなハーブなどを使い、とことん素材にこだわりました。肉屋経験もソーセージ修行もしたことがないが故に、とにかく自分たちが追求したいものだけを追求しました。
ストーリーではなく、生き様で勝負する
しかし、すぐに思うようには売れたわけではなかった。中山さんは客観的に分析し、こう考えた。
中山さん
中山さんと、共同経営者の野村俊介さん。ともに元格闘家だけあって見事な筋肉だ
同じようなソーセージをつくっていた人がいたとして、「本場ドイツで10年修行した」っていうバックグラウンドを持っていれば、すぐに売れたと思うんです。だからぼくたちは、元格闘家で猟師で…っていうストーリーではなく“生き様”で売っていこうと決心。そこで誕生したのが「ドットコミュ憲章」です。
ドットコミュ憲章というのは、ホームページにも掲げているルールみたいなもので“ソーセージは単なる商品ではなく、生き方の結果だ”ということを伝えたくて考えたものです。
こうして文章にしていくことは、中山さんにとってはとても大事な作業。自分を、そしてドットコミュを客観的に見る力が養われるだけではなく、頭の中の整理にもひと役かっているのだそう。
中山さん
しかし、早くからそういった場所で販売させてもらったことで「ちょっとこれは味が濃かった」「しょっぱかった」など、お客様からのフィードバックがいただけたことで、どんどんドットコミュのソーセージがブラッシュアップされていったんです。
中には「こういうソーセージがほしい」など、新作のアイデアになるような意見もいただけました。これが本当にいい経験になりましたね。
銀行に融資を断られ、クラウドファンディングに挑戦
だんだん店舗が機動にのってくると、完全「手づくり」が厳しくなり、機械を導入したいと考えるようになった。聞いてびっくり、その機械を導入すれば、なんと4時間かけていた作業が3分ほどに短縮可能なのだとか。
中山さん
そこでぼくもムキになって、資金調達は銀行だけじゃないんだからな!と、クラウドファンディングに挑戦しようと決心。そこからすぐに行動し、3日くらいでほとんど形にしました。
クラウドファンディング自体は初の取り組みだったが、せっかくやるならみんなに面白がってもらいたいと、リターンも工夫。ソーセージ以外にも、オリジナルグッズや、ドットコミュで働ける「「君もドットコミュcrewだ」券」、「支援者オリジナルソーセージ作成」など、バラエティに富んだリターンが用意された。
結果、目標の260万円を上回る480万円ほどが集まった。
中山さん
無事機械も購入し、ソーセージづくりは驚くほどにスムーズになったのですが、その機械の性能が本当に素晴らしかったので、当時の売上に見合っておらず、持て余す結果となってしまいました…。ただ、ラッキーなことに、その2ヶ月後にテレビ出演させていただいたことで、売上も上がり、機械の稼働率もグッと上がりました(笑)。
そして、2020年10月には、2号店を福岡に出店することを目的に、2度目のクラウドファンディングに挑戦。
中山さん
コロナ禍で世間が大変だ〜っていう時期になぜか「やるなら今だ」と直感がはたらいて、何も決まっていない状態でYouTubeをアップしました(笑)。しかもその翌日に、福岡店の店長をやりたいという若者が現れて、そのままお願いすることにしました。それが現店長の奥島敏弘です。
奥島さん
そんな時にドットコミュがスタッフを募集していることを知り、応募。
「ドットコミュの福岡店で働きたいです!」と立候補しました。直感的に楽しそうって思ったことと、福岡でひとり暮らしも悪くないな、と思ったことが理由です(笑)。
中山さん
すべてがトントン拍子で決定していったが、決して全くの無計画の思いつきではなく、広島の店舗で製造などをすべて行えば、福岡では冷凍ソーセージの販売とホットメニューのテイクアウト、デリバリーに専念できる、という考えのもとスタートした2号店計画。
物件は大濠公園からもほど近い場所。ドットコミュのソーセージBOXをテイクアウトして、ぜひ大濠公園で食べてほしいなという思いで、物件を選んだのだそう。
しかし、ソーセージなどの輸送費用などを考えれば、広島市内に出店するのが一般的ではないだろうか。なぜ2号店の場所に福岡を選んだのかをうかがってみた。
中山さん
ドットコミュ2号店(大濠公園店)で提供されている「盛合せBOX」
あとは、ぼく自身が普段から「不安」と「緊張」と「混乱」を感じながら仕事したいタイプっていうのも理由のひとつですね(笑)。安心安全な道では、自分がわくわくしないんですよね。
2度目のクラウドファンディングも大成功、しかし、どこか不満が残る結果となったという。
中山さん
ただ、自分自身に不満が残ってしまったというか…最初に挑戦したクラウドファンディングの時には、とにかく“やってやる!”という熱い想いを抱えていたんですが、2回目となると、自分自身のわくわく感が減って、どこか守りに入ってしまっているように感じたんです。
リターンに関しては、前回にも増してユニークなものを取り入れようと、最短5分で終わる「世界一狭い工場見学」や「ドットコミュ結婚式」など、ほかにはないものを盛り込みましたが、ぼくの性格上、何度も同じことにチャレンジするっていうのは向いてないのかもな、という発見にもなりました。
もし次資金調達したいということになれば、クラウドファンディング以外の手段でやってみたいですね。
最後に今後の展開についてもうかがった。
中山:柔術でチャンピオンになりたいですね。
―えっ?
中山:自分の中で1番優先順位が高い目標です(笑)。ジョコビッチがグルテンフリーの本を出したじゃないですか。すごく衝撃だったんですよ。だからぼくは柔術で優勝して、その裏側では当たり前のようにソーセージ食ってる、みたいな“生き様”を見せたいな、と思っていて(笑)。
―なるほど…(笑)。ちなみに福岡店はこれからの展開についてはお考えですか?
中山:近いうちに、福岡店をKIOSKみたいなお店にしたいな、と思っています。広島のクリエイターたちがつくる雑貨などを店頭に並べて販売する予定です。そうすれば、広島らしさも少し感じてもらえるお店になるかな、と。
―それは楽しいですね!この広さも、ちょうどKIOSKっぽい感じで。ドットコミュとしての展望についても教えてください。
中山:まず、5周年記念のイベントを開催したいと考えています。内容についてはまだ検討中なんですが、直径2.5cmのソーセージをぐるぐる巻いて、直径5mのソーセージをつくりたいな、と思っているんです。
ー直径?ですか?
中山:そうです(笑)。一体何メートルのソーセージをつくればいいんでしょうね。肉は約400kg必要みたいです。
くわしくはドットコミュのブログにて
それから、3号店を福岡以外の地方都市に出店する予定です。…でも、なんかちょっとおもしろくないかもな、とも思っていて(笑)。せっかくならソーセージの本場・ドイツに出店するくらいじゃないと、おもしろくないですよね。
とにかく楽しい取材だった。どんな質問を投げかけても、想像だにしない答えが返ってくる。常に石橋を叩いて渡る性格の私からすれば、「そんなことやって大丈夫?」ということも、中山さんは圧倒的に楽しんでしまう。(そんなところが少しうらやましい…)これからも彼、そしてドットコミュは、わくわくを提供し続けてくれるだろう。
■ドットコミュ大濠公園店
住所:〒810-0053 福岡市中央区鳥飼2-1-49
営業時間:土日 10:00〜17:00
月火木金 11:30〜19:00
水曜定休