柔軟な発想と質へのこだわりで、明太子の新たなニーズを探る
戦後に「明太子」という特産品が誕生して以来、福岡のメーカーは製法や素材など研究を重ねて独自の味を追求してきました。そのおかげで県内には200社を超える明太子ブランドが生まれ、福岡名物として全国的に知られることになったのです。
しかしながら、近年ではメイン市場である贈答品の売り上げがじわじわと減少を続けているそう。各社とも危機感を持って新商品やニーズの開拓に努めている中生まれたのが、博多の明太子を代表する、稚加榮・椒房庵・島本の3社で行う「博多めんたいプロジェクト」のアイデアです。
素材にこだわり抜いた、島本食品の明太子
外尾さん
――島本食品さんは企業としてかなり早くからネット販売に取り組んでいらっしゃいましたよね。それに単独でクラウドファンディングも活用されていたとか。そういった試みも打開策のひとつだったんでしょうか?
島本食品さんが、最初に行ったクラウドファンディング。自分たちの品質へのこだわりを発信したいと「幻の明太子」プロジェクトに取り組んだ
外尾さん
そうなると卸売り先に遠慮することも無いので、自社販売サイトの導入にも抵抗が少なかったんですね。クラウドファンディングというプラットフォームも、今まで世の中に無かった価値を作り出すという姿勢に共感できましたし、自分たちの力を十分に発揮できるのではと挑戦しました。
「うちの明太子が一番」クラウドファンディングで検証!?
自社で進めたクラウドファンディングが成果を収め、いよいよ「博多めんたいプロジェクト」と称した他社との共同企画が立ち上がりました。
それが「博多の辛子明太子【稚加榮・椒房庵・島本】が競演!採算度外視の世にも贅沢な味くらべ」です。
Makuakeで行った「博多の辛子明太子【稚加榮・椒房庵・島本】が競演!採算度外視の世にも贅沢な味くらべ」のトップページ
――よくあるコラボレーションや共同開発というわけではなく、「稚加榮」「椒房庵」「島本食品」それぞれが今回のために作った明太子を出すという内容に驚きました。明太子メーカーとしての“腕だめし”的な面もあるのかと。
外尾さん
だしの旨みが存分に味わえる「椒房庵」の明太子
それを実際に問うてみようという企画でもあるんです。直接競うわけなのでピリピリした感じに取られちゃうかもしれないのですが、お互いプライドもあるし、面白いじゃないかとご賛同いただけました。
▶各社の味へのこだわりはこちらをチェック。明太子ジャーナリスト・田口めんたいこさんによるインタビューも掲載。
――これだけ大手が集まると反響も大きかったのでは?苦労した点などはありましたか?
外尾さん
実際、この企画を出した後は、「ぜひうちも参加したい」と手をあげてくださる企業もたくさんいらっしゃったので、コロナ禍でどの企業も厳しい時期ですが、少しでもみなさんを勇気づけることができたのなら嬉しいですよね。
Makuakeの記事掲載時には「頂上決戦」と銘打った人気投票もスタート!気になる投票結果はこちらから
同志でもあるライバルと、九州の未来を見つめて
Makuakeで行われた「博多めんたいプロジェクト」は大成功。結果、目標金額の30万円を大きく上回る600万円を超える収益が集まったのですが、それでもコスト的に厳しかったとか。それもそのはず、各社とも採算度外視で取り組んでいたというのですから。
外尾さん
ぷちぷちとした粒感が際立つ「稚加榮」の明太子
それに、この企画を行う前は「最近どう?」くらいの軽い挨拶をする程度でしたが、今では売り上げやコロナ対策とか、腹を割って話せるくらい仲良くさせてもらっています。自社の利益だけを考えるのではなく、お互いが苦しい時に手を差し伸べる。一方で、ライバルとして切磋琢磨できる。そんな良い関係が築けたのも感謝ですね。
――明太子に全力で向き合った商品とライバル同士の清々しい関係性が、応援購入された方にも伝わったのではないでしょうか。だからこそ、次なる動きも気になるところ。今回のプラットフォームとなったMakuakeからも大きな期待が寄せられているそうですね。
外尾さん
3社ともに、また面白いことをやりたいね、という話はよく上がっていますし、いくつか合同企画も進んでいます。それに、もっとたくさんの企業と取り組むことができれば、より面白いことができるんじゃないかな。
投票結果と共に「博多明太子図鑑の製作」や「九州国立博物館で明太子博物館を実施」することなど、今後の活動の一部が情報解禁された
――これからも消費者としても楽しみなニュースが聞けそうですね。明太子以外の業界とのコラボレーションもゆくゆくは?
外尾さん
外尾さんのお話を聞くと、まるで少年漫画を読んでいるような印象を受けました。よく見かけますよね。ライバル同士が全力で拳を交えた後に「お前やるな」「お前もな」なんて親友になるシーン。お互いの実力を認め合って、その後に頼もしい仲間になっちゃうアレです。ドラマティックな胸熱展開は、応援する皆さんや業界を超えて、地方活性化への新たな扉を開けてくれたようです。
何よりも、稚加榮さんや椒房庵さん、島本食品さんがそれぞれ「うちのが一番」と太鼓判を押す明太子をもう一度味わいた〜い!食べ比べの続編、大いに期待しています!
株式会社島本食品
1976年創業。北海道産のスケトウダラをメインに質にこだわる商品づくりを進め、現在は、博多駅前店や新宮店など直営店を4店舗展開。惣菜や博多名物、ブーランジェリーなど、手がける商品も増えている。1998年には、業界に先駆けてネット通販サイトを開設。今回の企画を手がけた常務取締役の外尾透さんはWEBマスターとして通販サイトの運営にも携わっている。
https://www.simamoto.co.jp