※この記事は、非常に個人的かつパーソナルな視点でお届けする下戸の、下戸による、下戸のため(一時的下戸含む)の情報であり、内容は記事公開時のものである。
下戸にも優しい街・福岡へようこそ!
福岡市は街と住居の距離が近く、終電を逃してもタクシーで帰宅できる圏内に住んでいる人の多い、飲兵衛にとって天国のような街である、と語られ始めたのはいつの頃だったのだろうか。
天神、博多という都市を中心に、九州最大の歓楽街・中洲が人々を時にやさしく、時に激しく包み込んで離さない。出張で訪れた人が、あまりにも居心地が良いため定年後の住処として福岡市に居を構えるという現象ももはや珍しくもなんともなくなってしまった。
フクリパの記事「福岡人が「福岡っていいところやろ?」と言ってしまう深い理由!?」でもおわかりの通り、とにかく福岡の人はそんな福岡のことを異常なくらい愛している。2015年の国勢調査では出生時からずっと福岡に住んでいる「ネイティブ福岡人」は6.1%しかいないにも関わらず、である。
「福岡人が「福岡っていいところやろ?」と言ってしまう深い理由!?」より、岩永氏作成
ただ、その現象は裏を返すと、「お酒が飲めない人は生活しにくい街なのではないか」「飲み会で駆け付け3杯できないと仕事がもらえない恐ろしい街らしい」といった噂が出そうなものだが、まぁそんなことは決してない。なぜかというと、確かに「飲めんとかつまらんめーもん!(飲めないなんてあなたは残念な人ですね)」といったニュアンスのことをおほざきになる世代もいるにはいるが、時期尚早、ところがどっこい、てやんでぇべらんめぇ、ニューエイジたちはそんなことはお構いなしに各々のスタイルで福岡という街を楽しんでいるのであーる!
今回はそのひとつの証言として、「下戸でも楽しめる福岡」をご紹介したい。しかし、ただそれだけだと漠然としているので、これまでに東京から出張で来られた方を実際にお連れして、とても喜ばれた2店をその魅力とともにお届けしたいと思う。
飲兵衛夫婦が営む、下戸にも優しい店「捏製作所(つくねせいさくしょ)」
今年8月、京都から移転オープンして5年を迎えた「捏製作所」。先日の「夜の営業、ほぼやめます!郊外の人気店「捏製作所」が昼酒にシフトする理由」でも紹介された店だが、実は開店当初から通っている下戸のひとりが筆者である。
こちらの菅原夫妻はとにかくお酒が大好き。たまにしかとれないお休みに酒蔵見学に行ったり、全国の様々なお店や食材とコラボをしながら、「心地よく楽しんでもらう空間」づくりに勤しんでおられる姿は、趣味を極限まで極めたうえで、そこに次の可能性を見出す、というアスリートにも近い筋力をヒシヒシと感じる。しかし、かといって客に厳しいかというとそんなことは決してなく、現に筆者はガチ下戸にも関わらず、長年心と胃袋を満たしに足を運ばせてもらっている。
日本酒のお猪口を選ぶことができる。密かに集めている作家さんのものも。商売で酒を提供する以上の想いが端々に現れている
酒好き夫婦が営んでいるのに下戸にも敷居が低く感じられるのは、筆者が厚顔無恥だからというのも多少あろうが、本筋は「アルコールの有無ではなく、ゆるゆると美味しいものを食べながら過ごす時間を楽しんでほしい」というお二人の想いに共鳴する人たちが集まっているからなのではないかと推測する。
その証拠のひとつとして、同店にはノンアルコールであっても気が引けることのないメニューが用意されている。ずっと定番の「芦屋 Uffu(ウーフ)さんの美味しいお茶」をはじめ、イタリアから取り寄せられたオレンジの果肉入りシロップで作ってくれる「SABADIの美味しいオレンジジュース」は水割りやソーダ割りも選べて、ちょっとまぁほかでは飲めやしない。国内のオレンジにはない深い香りと絶妙な酸味、充実した果肉っぷりは、バーでカクテルを飲んでいるような気分にすら浸らせてくれる。そしてこれらがアルコールに相当する価格で提供されることで、ノンアルコールであってもしっかり素材を吟味したものなのだとわかるし、そこがわかる人がリピートしているのではないかとさえ思うのだ。
そしてお酒のことばかりではなく、そもそもの話、何を食べてもネーミングから想像のつかないものが出てくる楽しみ、驚き、感動、これぞ「捏製作所」の真骨頂である。特にこちらの捏を食べるとこれまでの「つくね」の概念をボロッボロに崩される。具材の旨みを引き出しつくしたほわっほわの捏で、あなたの辞書の「つくね」が書き換えられる瞬間をぜひ味わって頂きたい。
現在は平日の昼酒を実施しているため、11時からこの世界観を味わえる。ちょっと早めに出張のアポイントが終わってしまい、中途半端だなぁと思う15時、地下鉄で藤崎駅まで移動してもらえれば、そこから徒歩10分たらずで同店に到着である。福岡人は駅からの近さにやたらと厳しいが、きっと県外の方ならこの距離は朝飯前ではないかと思う。
早めに捏ワールドを楽しんでも、まだまだ余裕でもう1軒行ける。なんなら日帰りの飛行機にだって間に合う。あぁ、やはり福岡は素晴らしいところだ。
【捏製作所】
■TEL:092-833-5666
■住:福岡県福岡市早良区藤崎1丁目14−5 大産藤崎コーポ103 [MAP]
■営:土〜水曜11:00〜19:30(料理OS18:30)、金曜17:00〜22:00(料理OS21:00)
■休:木曜、他不定休あり
■Facebookページ:https://www.facebook.com/%E6%8D%8F%E8%A3%BD%E4%BD%9C%E6%89%80-877345802356207/
■Instagram:https://www.instagram.com/tsukune_seisakusho/
下戸のためにあるような店。全国に誇る茶酒房「万(よろず)yorozu」
捏でノンアル昼酒を楽しんだあと、「ザ・博多!」「これぞ福岡!」というものも堪能したいであろう出張者にはこちらをオススメするとして…
●「野菜巻き・鳥皮・肝・つくね・豚バラ・新参モノ、福岡が誇る焼鳥6選」
https://fukuoka-leapup.jp/article/72/202008.108
●福岡の大人は「春吉」で飲んでいる。春吉絶品グルメ5選
https://fukuoka-leapup.jp/article/72/202007.94
ぜひ〆に足を運んで頂きたいのが、赤坂にある「万 yorozu」だ。正式には「茶酒房」と呼ぶべきか。
もちろんお酒も出してもらえるのだが、特筆すべきはそのスタイルにある。オーナーである徳淵さんは、バーテンダーとして活動しながら、長きにわたり現代日本をテーマに茶・酒・食と分野を広げながら修行してきた。2012年に「万 yorozu」を開業し、世界中へ伝統文化を伝える活動も行っている。
外観からしてすでにデザインが極まっているのだが、中に入ると、茶釜を中心にしたカウンターと、奥に時を重ね大切に使われてきた味のある家具とソファの半個室。日本の文化の美しさをとらえる徳淵さんの眼をクリアしたものだけが並ぶ、洗練されつつも心が解きほぐされるようなその空間で、ぜひ究極の玉露や日本茶を楽しんでみて欲しい。旬の彩を模したお菓子を選ぶ瞬間、ここが現代版のお茶室なのだと深く理解できる。
菓子箱からひとつ選ぶ。毎回悩みに悩む瞬間
かつて東京から来られた出張者をこちらにお連れした際に、「東京にないよ、こんなお店!」と絶賛された。これは日本三大都市のひとつが福岡であると信じて疑うことのない福岡人にとっては至福の瞬間である。何より、冒頭で「下戸にも優しい街・福岡へようこそ!」と詠ったが、とはいえノンアルコールだと少し気が引けてしまう場面がないと言えば嘘になる。これは下戸ならではの悩みなのだが、その懸念をまったく考えなくていいことが「万」の魅力でもある。下戸はお茶のお任せコースを頼み、アルコールを楽しみたい人は元バーテンダーの徳淵さんにしっかりリクエストして好きなものを頼んでもらう。こんな我が儘の叶う場所はなかなかない。
プロが煎れるお茶は格別である。2煎、3煎と変わっていく日本茶の世界を一度知ると、自宅でも丁寧に日本茶を煎れてお客様をお迎えしたいと思うようになるのだ
また、2階はギャラリー空間になっているのだが、年に一度、七草粥の日には先着順で特別メニューを頂ける。日本が持つ文化について気づかされ、季節季節をゆっくりと、しかししっかり愉しむことで、日本人に産まれた喜びを改めて感じさせてくれるのだ。
徳淵さんとの会話には、こうした気づきがたくさん散りばめられているので、感性を磨きたい、美しいものにふれたい、そんな背伸びをしてみたい人は、ぜひ一度訪ねてみて欲しい。
天神、博多いずれにもタクシーで帰ることのできる距離ゆえ、ホテルに戻れなくなることもない福岡の良さを時間の許す限り堪能してもらいたいと心から願っている。
【万 yorozu】
■TEL:092-724-7880
■住:福岡県福岡市中央区赤坂2丁目3−32 [MAP]
■営:1階[万] 12:00より24:00、2階[分室]12:00より不定 ※予約制
■休:日曜
■HP:http://www.yorozu-tea.jp/
■Facebookページ:https://www.facebook.com/yorozu109/
■Instagram:https://www.instagram.com/yorozu.bunshitsu/
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いかがだっただろうか。今回ご紹介したのは下戸が下戸なりに楽しめ、これぞ福岡が誇るニュースタイル、と思われる2軒であったが、基本的に福岡の飲食業界の人は飲兵衛が多いが下戸にも優しい。店を愛する気持ちにアルコールは絶必ではないのだ。彼らの世界観にふれ、共鳴できるお店はまだまだたくさんあるのだから、これからも、堂々と「福岡下戸グルメ(もちろん自称)」の看板を背負いながら飲み歩きたいと思っている。