「正しさ」に疲れた私たちに、ギンギラギンのトラック野郎が教えてくれる人生哲学。 福岡映画 #06「トラック野郎 爆走一番星」

ここではないどこかへ踏み出すことの意味が、物理的にも精神的にも変わってしまった2020年。行楽さえも自粛ムードなこの秋、せめて映画のなかくらい日本中を軽やかに旅したいもの。連れていってくれるのは、喧嘩っ早くて情に篤いトラック野郎の一番星こと我らが星桃次郎!福岡映画、第6回目は「トラック野郎 爆走一番星」です。

「乗れよ、乗れ!」

予告編

「トラック野郎 爆走一番星」
1975年/96分
監督・脚本 鈴木則文
出演 菅原文太、愛川欽也、田中邦衛、あべ静江、夏八木勲、春川ますみ

≪あらすじ≫
ギラギラに飾りあげたデコトラを走らせる長距離トラック運転手“一番星”こと星桃次郎(菅原文太)は、姫路のドライブインでアルバイト中の女子大生、瑛子(あべ静江)に一目惚れしてしまう。ケッコンに憧れる桃次郎は、彼女に気に入られようと無理をして自分が文学青年であるかのように振る舞うことに。
そんな折、広島では子どもたちを長崎に残してひとり苦しい出稼ぎ生活を送る松吉(織本順吉)と出会う。桃次郎は相棒の“やもめのジョナサン”(愛川欽也)と協力し、松吉の再出発に力を貸そうとするが……。

≪映画について≫
1960年代半ばからの「任侠映画」、そして1973年からは「仁義なき戦い」に代表されるハードコアな「実録映画」ジャンルでヒット街道を突き進んだ東映。しかしその人気も下火になってきた折、当時撮影予定だった大作企画が飛んでしまい、急遽穴埋めに制作されたのが「トラック野郎」の第1作。制作期間わずか2ヶ月で仕上げられたにもかかわらず作品は大ヒットを記録し、以降のシリーズ化が決定します。

その後シリーズは夏と正月に新作が封切られる、東映のプログラムピクチャーの看板作品へと成長し、1975年から79年までの4年間に10作品が制作されます。当時同じく夏&正月興行で大ヒットを飛ばしていた松竹の「寅さん」シリーズの対抗馬として、双方日本全国で撮影行脚しながら観客動員も支え、邦画興行を「トラトラ対決(寅×トラック) 」で大いに盛り上げました

日本を代表するカルチャーとして近年では現代美術の文脈でも評価される「デコトラ(車体を電飾で飾り、ペイントを施した大型トラック)」文化を世に広めたのも本作で、このシリーズのために、デコトラの連盟団体が発足し、デコトラ文化の監修と全面的バックアップを務めたという胸熱なエピソードも。

今回紹介する「トラック野郎 爆走一番星」は先述の1作目公開からわずか4ヶ月後の正月映画として公開されたシリーズ第2弾。姫路、福岡、長崎、天草を突っ走り、1976年の邦画年間興行収入では7位(7億7,000万円)につける大ヒットを記録しました。

「目をつぶって飛び込んでいけたら、どんなに幸せかしら」


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「トラック野郎」シリーズは、どの作品もたいてい以下の展開がお決まりの筋。

① 喧嘩っ早くて人情に篤いトラック野郎の“一番星”星桃次郎(菅原文太)と相棒の“やもめのジョナサン”(愛川欽也)が主人公
② 桃次郎がマドンナと出会い、恋に落ちる。人伝いにマドンナへ想いを伝えようとするも、伝達者の早とちりや人違いでたいてい別の女性へのプロポーズとなって勘違いを生んでしまう
③ そんな折に、因縁のライバルが登場し、ワッパ勝負(トラック運転対決)や殴り合いの大喧嘩となる
④ さらにそんな折、運転先の街で、困った事情を持った誰かと出会う
⑤ 勘違いさせてしまった女性と別の誰かを、桃次郎たちの力添えで幸せな関係に導く
⑥ 実は訳ありの恋人がいるマドンナも、桃次郎たちの力添えで幸せな関係に導く
⑦ 困った事情を持った誰かを愛機一番星号に乗せて、限られた時間で目的地へ送り届ける怒涛のタイムアタック・ドライブがクライマックス。因縁のライバルやトラック野郎たちの連帯で不可能を可能にする展開がアツい。
⑧ 笑って泣ける桃次郎とジョナサンの物語、やっぱ良いもんだねえ、となって次作も楽しみになる

ご覧の通り「寅さん」とよく似た物語運びなのですが、“粋”な「寅さん」に対して、我らが星桃次郎は“俗”そのもの。ばかばかしい下ネタで豪快に笑いを取りながらも最後にはじーんと泣かせる作品に仕上げるのは「映画はお客さんを楽しませてなんぼ」なサービス精神を持つ鈴木則文監督の映画哲学の反映。自ら長距離トラックに同乗して監督自ら本物のトラック野郎の生態を取材すればこその嘘のなさ。下手に立派に見せようとしない「まる出し」な清々しさが、本作の魅力です

この映画に出てくる桃次郎もジョナサンも、ドライブインに集うトラック野郎たちもマドンナも、市井の人々も、誰ひとりとして完璧でもきれいでもなく、ひとしく人には言えない悲しみや過ちを引き受けて、間違いを重ねながら生きています。決意すべきときに決心しきれぬままある場所に止まったり、どうしようもなくその街にいられなくなった人々たち。

そんな風にしょうもなくて格好悪い「私たち」の人生を、映画は徹底的に肯定します。汗まみれにテカつきながら、真の勇気と覚悟の振るいどころを、何度だって間違って良いという人生の哲学を、登場人物全員が身を持って見せつけてくれます。

近年すっかり「正しさ疲れ」にある私たちだからこそ、いまほんとに見たい映画というのはこういう作品じゃないかな、とも思うのです

「僕がいつでも、連れてってあげますよ」


劇中で博多に到着した際にファーストカットとして登場するのがこの景色。おなじみですね。


川沿いの屋台で文太&キンキンがラーメンをすする場面で登場。当時はここまで屋台があったのだなあ。


瑛子さんの大好きな太宰治の本を求めてエロ本の出店を訪れた桃次郎が乱闘さわぎを起こすのがこの交差点。てそこだけ聞くとなんのこっちゃ、というあらすじですね笑

心の踏ん切りも旅の移動も叶わない歯切れの悪い日々が続くなか、なんだか疲れたなぁ、カラッと楽しくて前向きになれる映画教えてよ、というあなたにこそオススメする一本です。

今回の福岡映画は、「トラック野郎 爆走一番星」、ぜひご覧ください!

トラック野郎 爆走一番星
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今回のPick Up ロケ地はこちら

■西中島橋

■春吉橋

■明治橋

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映画ライター
三好剛平
1983年福岡生まれの文化ホリック社会人。三声舎 代表。企業や自治体の事業・広報にまつわる企画ディレクションをはじめ、映画や美術など文化系プロジェクトの企画運営を多数手がける。LOVEFMラジオ「明治産業presents: Our Culture, Our View」製作企画・出演。その他メディア出演や司会、コラム執筆も。

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