文化事業を続けるための選択

「Yet Cinema Club/fuzkue大橋」を主宰するのは、福岡県春日市出身の川﨑陸さん。新卒から12年ほど東京でデジタルプロダクト開発やブランディングに従事し、2023年に生活拠点を福岡へと移しました。
出発点にあるのは、「鑑賞する時間を守りたい」という思いです。
映画を観ること、本を読むこと。そうした静かな営みは、個人の感性や創造性を育てる時間でもあります。
ところがコロナ禍を経て、映画館や書店などの文化的な場所を維持することの難しさが浮き彫りになりました。その中で、鑑賞の時間を支えていた空間の存在を改めて実感したそうです。

「ミニシアターに限らず文化事業にとって最も重要なことは、存続し続けること。地域にあり続けることで、価値が蓄積され、やがて街の文化を支える存在になっていくと信じています」と川﨑さん。
そこで持続可能な文化拠点の設立を目指し、クラウドファンディングにも挑戦。約2ヶ月で目標額を達成し、2026年2月13日(金)、席数15席・約30㎡の小さな映画館をオープンしました。ランニングコストを抑えつつ、地域の皆さんに長く愛される場所を目指しています。
月にひとつの作品と向き合う映画館

Yet Cinema Clubでは、毎月ひとつの上映企画を丁寧に届ける予定です。「ひとつ」とは1作品、もしくは特集として複数作品を月に3日から1週間ほど上映することを考えているとのこと。
「作品を観るための映画館というより、今月もYet Cinema Clubに行こうと思える関係性になりたい」と川﨑さん。厳選した企画を毎月上映することで、作品と向き合う時間を大切にしてほしいという思いが、この上映スタイルに込められています。
「本を読む」。それだけのための場所
この場所のもう一つの特徴が、映画館と読書空間が共存していることです。上映がない日は、「本の読める店 fuzkue大橋」として開かれています。
fuzkueは東京の初台・下北沢・西荻窪に展開する、読書に特化した店。お茶や食事を楽しみながら、本の世界に没頭できる空間です。
コーヒーやベイクドチーズケーキなど、ドリンクと軽食も提供
持参した本や、店の本棚にある本を自由に閲覧できますが、会話や動画視聴、パソコン作業、ゲームなど、読書以外の活動はできないルールにしているそう。映画館が映画を観る人だけで構成されているように、本を読む人が自然と読書に向き合える空間になっています。
川﨑さんは東京に住んでいた頃からfuzkueのファンだったと言います。店内には「みんなが本を読んでいる」という光景があり、利用者同士がお互いに一定の配慮を持って過ごす空気が生まれている。その循環が読書の時間を豊かにしてくれると考えているそうです。
なぜ大橋という場所を選んだか

川﨑さんにとって、大橋は学生時代の記憶が残る街でもあります。少し背伸びをして訪れていた場所であり、若い人のエネルギーと穏やかな環境が同居する街だと感じているそうです。
「この街に文化の拠点を作ることができたら、どんな化学反応が起きるのだろう?」川﨑さんはワクワクしながら、大橋での開業を決めました。
近年の大橋では、人が集まる場所が少しずつ増えています。 例えば大橋駅前の複合商業施設「OHASHI HILL」のように、地域の人が自然に関わり合う場所も生まれています。Yet Cinema Club/fuzkue大橋もまた、街の中に静かに存在しながら、人と文化がゆるやかにつながる場所として歩み始めています。
今後の上映作品やスケジュールはSNSをチェック
オープニング上映となった2月は「創造と継承」をテーマに、Yet Cinema Clubならではの視点で作品を選定。こけら落とし作品となった「つつんで、ひらいて」(菊地信義氏のドキュメンタリー)に加えて、「わたしは光をにぎっている」(中川龍太郎監督)を上映しました。今後の上映作品や上映スケジュール、予約については、公式SNSをチェックしてください。
【Yet Cinema Club/fuzkue大橋】
住所:福岡市南区向野2-15-19-101 [map]
営業時間や今後の上映スケジュールはSNSをチェックしてください
Instagram:@yetcinemaclub








