2020年6月開業!

プロジェクト担当者が語る「カイタック スクエア ガーデン」が福岡・警固に誕生した理由とは?

ジーンズブランド「YANUK(ヤヌーク)」などの自社ブランドや、海外ブランドを取り扱うアパレルメーカー「カイタックインターナショナル」のほか、繊維総合商社「カイタックトレーディング」、総合アパレルメーカー「カイタックファミリー」など主要会社とする「カイタックホールディングス」(本社:岡山県)が、2020年6月、福岡市中央区警固に複合施設「CAITAC SQUARE GARDEN(カイタック スクエア ガーデン)」を開業しました。西日本初、九州初のテナントが多数入居するなど、注目を集める同施設。今回は本プロジェクトの総責任者として陣頭指揮を執る中原伸広さんに、福岡の街の魅力や今回の出店の理由などについてお話を伺いました。

CAITAC SQUARE GARDEN(カイタックスクエアガーデン)について

2020年6月11日にグランドオープンを迎えた「CAITAC SQUARE GARDEN」には西日本初、福岡初を含む19のテナントが出店。ライブハウスや映画館もあり、エンターテインメントの要素も強い施設となっている。

フロア構成—————————-
1F:ヤヌーク福岡、プーマ ストア 福岡、panya芦屋
2F:モダンワークス、クラッシュゲート福岡天神店
3F:キノシネマ天神、ゴールデンブラウン、ミランダエステティック、ピラティズ ジャパン、ボーダー
4F:アビスパコート、鉄板焼三ヶ森、ハバナ

CAITAC SQUARE GARDEN(カイタック スクエ アガーデン)
福岡市中央区警固1-15-38
https://caitacsquaregarden.com/

「小売業として福岡を見たときに、東京の表参道のような場所が欲しい。それがこの場所でした」


福岡で30年以上に渡り小売業に携わってきた中原さん。「天神・大名エリアは家賃の割に売上を上げづらい場所で継続することが難しいんです。この警固エリアにこのような施設ができることで、天神・大名エリアのガス抜きにもなると考えました」。

今回、話を伺った中原伸広さんは「カイタックホールディングス」の事業会社の一つである「アキアゴーラカンパニー」の社長であり、カイタックグループの福岡における不動産事業にも携わっている。

中原

私は18歳のときに福岡に来て新天町にあったアパレルショップの店長をしていました。その後、大名エリアで数多くの店舗を展開してきましたが、ある時期からファンドが入ってきて賃料も跳ね上がり、大名に閉塞感が生まれてきたんです。西通りには海外ブランドなども進出してくるけれど、賃料の割には売上が上がらず撤退してしまうケースも少なくありません。小売業としてどの場所に身を置くかというのを考えたとき、東京に例えると表参道のようなエリアがいいなと考えるようになりました。

そう考えていた中原さんは、あるとき、「セントラルパーク構想」の存在を知る。「セントラルパーク構想」とは、福岡市中央区にある大濠公園と舞鶴公園の一体的な活用を図り、県民・市民の憩いの場として、 また、歴史、芸術文化、観光の発信拠点として、 公園そのものが広大なミュージアム空間となり、 人々に感動を与えるような公園づくりを目指すというもの

中原

構想自体は10年ほど前からあったと記憶しています。私は『Ron Herman Fukuoka(ロンハーマン)』(2014年5月開業)や『BIOTOP FUKUOKA(ビオトープ フクオカ)』(2019年4月開業) の誘致にも携わらせていただきました。当グループには不動産部門もあり、魅力的な土地があれば、その土地を押さえてその環境に適したブランドやショップを誘致し、スタッフを当社で用意します。「開発」と「販売」をセットアップで提供できることは当グループの強みだと思いますね。今回、なぜこの場所に『CAITAC SQUARE GARDEN』をつくったかと聞かれると、『そこに広大な敷地があったから』ではあるのですが、天神ビッグバンが進む天神・大名エリアとセントラルパーク構想が進む大濠公園・舞鶴公園エリアを結ぶ国体道路〜けやき通り沿いであったことは、決断するにあたっての大きな理由となったといえます。

また、大型ショッピングモールにおけるマーケティングに『2核1モール』という考え方があります。それを福岡の街に落とし込んだとき、大濠公園・舞鶴公園エリアと天神・大名エリアが2つの核と考えると、その2つを繋ぐ国体道路〜けやき通りに『Ron Herman Fukuoka』や『BIOTOP FUKUOKA』があり、今回、『CAITAC SQUARE GARDEN』ができたことで街の回遊性がさらに高まっていくと考えています」。

「多くのテナントさんが、このゆったりとした環境や自由度の高さに惹かれて出店を決断してくれました」。


ミニシアター系からファミリー向け作品まで世界各国の作品を幅広く上映する「キノシネマ」。現在はコロナ対策のため1席ずつ空けて営業している。6月26日からはレイトショーもスタート!

このプロジェクトがスタートしたのは2年半ほど前のこと。中原さんは当初、力技で国内外の有名ブランドを誘致しようと考えていたという。

中原

肩に力が入りすぎていたのでしょうね。当初、リーシングはなかなかうまく進みませんでした。警固というエリアは住宅街でもあります。途中から、県外や海外からお客を呼ぶのではなく、地元の方に喜んでいただけるようなテナントさんに入っていただきたいと考えるようになりましたね。映画館やピラティススタジオなど、この施設があると地域の皆さんに喜んでいただけるのでは?という視点でお声がけをさせていただきました。


施設内には木々や花が多く配され、開放感たっぷり。子ども連れの方も年配の方も、ゆっくり過ごせる環境が整備されている。

施設内は共有スペースが多く取られ、木々や花に包まれ、テーブルやベンチも随所に配置されている。また、商業施設でありながら、営業時間や定休日は各テナントに任されているところもこの施設の特徴の一つ。商業施設にテナントとして入居する場合、ディベロッパーに販促費を支払うケースが少なくないが、同施設は固定家賃のみを回収している

中原

19のテナントが入る商業施設でありながら、容積率は約50%というのは、かなりゆったりしていると思いますよ。販促に関しても、私たちは何もしないワケではありません。ここは商業施設ではあるけれど、路面店が4フロアに重なっているといいうイメージなんです。それぞれのテナントさんが個別に何かをしてもいいですし、今回のプロジェクトを一緒にやってきた『セブンセンス』(4階)が中心となって横断的にやってもいいと考えています。主役はテナントさんであり、お客様ですから。

テナントの自由度の高さは従来の商業施設とは一線を画しており、その新しいスタイルにも注目が集まるところだが、施設の全体的なコンセプトも明確に定めていないというのも面白い。

中原

大濠公園と同じような立ち位置でありたいと思っています。買う、食べるは二の次で、今からちょっとカイタックへ行ってゆっくりしようと思っていただける場所でありたいですね。先日、施設を巡回していたとき、近所にお住まいの年配の女性2人から『ちょっと、よか施設ができたねー。近いけん来やすいし、イスがいっぱいあって助かる』と言っていただいたんですよ。すごく嬉しかったですね。これからもそう言われ続けたいですし、そのために何が必要かは常に考え続けていかなければと思っています。


イギリスの情報誌「MONOCLE」が選ぶ世界のレストランBEST50にランクインする『GOLDEN BROWN』が九州出店。その噂を聞きつけ、オープン以来、連日行列が続いている。

テナントも決まり、2019年12月にはリリースを発表。九州初、福岡初となる出店も多く、『カイタック スクエア ガーデン』は徐々に注目を集め、2020年4月28日のグランドオープンを待つばかりとなっていたが、新型コロナウイルスの影響により、開業の延期を余儀なくされた。

「この施設をブラッシュアップしながら、あの一帯を全体的に開発していきます」。


「秋ごろには入口付近に3つのポケットショップがオープン予定です。これからも地域の皆さんに喜んでいただける施設づくりをしていきますので、期待してください」と語る中原さん。

中原さんは3月の時点でグランドオープンの延期を決断していた。

中原

私たちはもともと小売業ですので、テナント側の気持ちがよくわかるんです。大手の商業施設の動きも見えますし、テナントさんたちには早め早めの対応をさせていただいていました。当グループとしても大変な状況ではありますが、代表の貝畑の決断によってテナントさんの負担を最小限に抑えることができたと思います。テナントさんからも『対応が早かったので助かった』という言葉をいただきました。

一方で、同グループが運営するショップも全て3月から休業していた。給料は100%補償し、スタッフは自宅待機。働きたくても働くことができないという状況は、スタッフの意識改革につながっていったと中原さんは振り返る。

中原

営業を再開したとき、スタッフが別人になっていました。今回のことで、仕事ができること、外出できることの有り難みを再認識できたことで、彼らのモチベーションは高まっています。

新型コロナウイルスは、ネガティブなことばかりではなく、プラスの変化も生んでいたのだ。

グランドオープンから約3週間。今後について、中原さんはこう語ってくださった。

中原

立ち上がったばかりの今の姿と、1年後、5年後、10年後は変わっていて当然だと考えています。一方で、地元の方に受け入れていただける要素が大きいことは間違いありません。今後は共用スペースでマルシェを開いたり、『アビスパコート』(4階)でブラインドサッカー教室が行なわれたりと、地域に根差した活動も積極的に行なっていきたいですね。

訊けばカイタックグループは、隣接する土地も取得しているという。

中原

これからの5年は『カイタック スクエア ガーデン』をブラッシュアップしながら、あのエリア一帯の開発を行なっていく予定です。国内外の旅行者を受け入れられる宿泊施設や、地域の人々がここに住みたいと思えるようなレジデンスを持ち、新しい生活や食の提案もしていきたいと考えています。

セントラルパーク構想や天神ビッグバンが進む福岡で、地域に根ざし新たな価値観を生み出していくカイタックグループの柔軟な取り組みに期待が高まる。

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編集・ライター
寺脇 あゆ子
松山生まれ、福岡育ち。福岡・大阪の出版社を経て独立。福岡を拠点に全国誌、地元情報誌、webメディアなどで取材・執筆を行なう。美味しいものがある、面白い料理人がいると聞けば、日本全国どこへでもフットワークの軽さが自慢。無類のラグビー好きでW杯は2007年のフランス大会以降、4大会を現地で観戦している。

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