【緊急取材】「飲食店イートイン安全ガイドライン福岡」が経済回復を後押しする!

2020年4月7日、福岡県を含む7都府県に「緊急事態宣言」が発令され、街から人が消えました。飲食店は休業したり、テイクアウトやデリバリーを行なったりしてきましたが、発令当初は5月6日ごろには解除されるとみられていたものの、感染者数の増加などを理由に「緊急事態宣言」の延期が決定。そんな最中、Facebook上で1つの活動が生まれようとしていました。その活動とは、「福岡独自で飲食店イートインの安全ガイドラインをつくろう」というものです。今回は、この活動の中心メンバーであり、フクリパでもコラムを書いてくれている林田暢明さんに、ここまでの活動を振り返っていただきました。

5月3日(日)夕方、Facebookでお願いされる!

5月3日、Facebookを眺めていると、「勝手にお願いバトン」というタイトルの投稿がありました。それは、福岡市内で飲食店を営む栗田真二郎さんから、林田さんに宛てたもの。


林田暢明さん林田さんのフクリパ記事はこちら

林田さん

栗田さんがなぜ私を指名したのかはわからないのですが、私自身も飲食店を経営していますし、このような状況を理解して動いてくれそうだと感じたのではないでしょうか。私自身も4月上旬に店を休業し、GWが開けたら営業を再開する予定でした。ただ、GWが開けても緊急事態宣言が解除されない状況が見えてきて、このまま営業を再開しても社会から白い目で見られると感じましたので、何かしら基準があった方が飲食店は営業を再開しやすいというのは理解できました。また、1ヶ月は我慢できるけど、それが延長となると営業を再開せざるを得ないという飲食店さんも少なくありません。ここはスピード重視で進めていかねば!と考えました。

と、その日のことを振り返ります。

平常時であれば、メンバーを募集し役割を分担するというチームビルディングから行なっていきますが、今回はスピード重視。まずはさまざまな人の意見を集約しようと、林田さんは、GW最終日である5月6日の夜にzoomミーティングを開催することを決め、栗田さんや林田さんがSNSで参加者を募りました。

5月6日(水・祝)夜、約20名で話し合う!

栗田さん、林田さんを中心にミーティングが開催され、飲食店経営者を中心に約20名が参加。その中には、福岡県議会議員のにえだ元氣さんの姿もありました。

林田さん

お店をリスタートさせるための指標や、どのような条件が整えば営業を再開していいのかといった指標が欲しいという飲食店側の気持ちは理解しつつも、それを政治に突きつけることはリソース的に限界があると考えました。私たちが公務員の状況をわからないのと同じように、公務員の皆さんも飲食店の現状は見えていないはずです。そこで『考えてよ』と丸投げするのではなく、自分たちでガイドラインを策定し、今回は特措法上の実行力のある福岡県に伝えることにしたのです。その窓口になっていただけたらという想いがあり、松下政経塾の後輩で面識のあったにえださんにご参加いただきました。

約1時間のミーティングでは、さまざまな意見が飛び交いました。「業態によってできる店とできない店がある」「ここまで厳しいとお客様が来なくなってしまうのではないか」「ここまでしてくれたら(客としても)安心できる」などなど。ここで集まった意見を一旦集約し、より多くの賛同を得るため、ミーティングに参加していない飲食店店主たちへも広く意見を聞くことに。3日後の5月9日(土)に2回目であり(福岡県へ提案するための)最後のミーティングが開催されることを決め、その日のミーティングは終了しました。

ここで集まった意見をもとに林田さんがベースとなる案をつくり、翌7日にはミーティングに参加していない人たちへも拡散。賛同者は一気に増えていきました。

5月9日(土)夜、ガイドラインが完成。週明け11日(月)に県知事へ届ける!

5月7日に林田さんがガイドライン案をFacebookに投稿し、約70名がシェアすることで、この活動はより多くの人に広がっていきました。栗田さんをはじめ、参加者のつながりで賛同者は約40名の経営者の賛同を獲得。賛同者リストには「一風堂」などを展開する力の源ホールディングスの河原成美社長や「焼とりの八兵衛」の八島且典社長をはじめ、福岡の飲食業界を牽引する方も名を連ねます。

9日夜のミーティングでは、項目を一つひとつ確認しながら、「飲食店イートイン安全ガイドライン福岡」の案が完成。

週明けの5月11日(月)に福岡県議会議員のにえださんが小川知事に直接資料を渡し、2日後の13日(水)には代表者5名が大曲 昭恵副知事に要望書を手渡すことができました。その日の様子はテレビや新聞でも取り上げられ、この活動がより多くの人々に知られることとなったのです。

林田さん

私は家族が暮らす東京で自粛生活を送っているため、県庁へ行っていただいたり取材の対応をしていただいたりは、福岡にいらっしゃる栗田さんたちにお願いすることになりました。副知事とお会いした際、『一緒に協議していきましょう』といっていただけたことは大きな一歩だと思います。現在は担当部署である生活衛生課の方と協議を進めているところです。

5月15日(金)ポスター完成!

一方、林田さんは、このガイドラインを拡散するため、ポスターを作成することを決めます。

林田さん

今回はスピードを重視したかったので、私がポケットマネーを出して、無理をきいてくれる(信頼関係が築けている)デザイナーさんにお願いすることにしました。岡山在住の中西亘さんです。デザインで残念なのって、思ったようなデザインが上がってこなかったときですよね。その点、中西さんは期待以上のデザインを上げてくれるというのはわかっていましたし、実際に最初のデザインの時点でみんなが納得できるものが上がってきました。

私自身としては、今回は非常時なのでワッと集まって、目的が達成できれば解散していいと考えています。映画の「オーシャンズ11」のイメージですね。なので、とにかくスピーディに、クオリティの高いものを作ることを意識しました。

5月14日(木)夜にはポスター案がデザイナーから届き、その日のうちにmessengerグループに共有。意見を集約し、5月15日(金)午前中にデザイナーに修正を依頼し、その日の13時30分にはポスターが完成! 林田さんはそのポスターの版権をフリーにします。この取り組みは地元メディアでも多く取り上げられ、林田さんのもとにもさまざまな問い合わせが入るようになりました。

林田さん

宮城、東京、静岡、岡山から、このガイドラインを参考にしたいと問い合わせをいただき、仙台や岡山では私たちのような飲食店の店主たちから自治体に要望を伝えるなどの活動に発展しています。自治体との協議内容によって、ガイドラインやポスターも変更していけばいいだけのこと。こうやって現場の私たちが先行してやっていくことに、意味があると思っています。

栗田さんの依頼から約10日間で、副知事にガイドライン案を手渡し、ポスターまで完成させるというスピード感は、全国的にみてもかなり早かったという印象です。

林田さん

時間がなかったからできたんですよ。従来、このような活動をするときは、代表は誰がするの? メンバーは? お金は? といったさまざまなことへの調整が必要でした。けれど、今回の「オーシャンズ11」方式は、今後、公共的な動きをするときに、いいやり方だなと感じています。従来のやり方というのは、組織を固めて大群で攻める方法でしたが、今回はゲリラ的にプロジェクトベースで繋がって生まれた方法です。ビジョンやミッションでつながるのではなく、プロジェクトごとにミッションを共有してやっていく、いい事例だと思うんですよね。

私自身も合同会社で会社を運営していますが、よく「人を増やさないの?」と聞かれます。人を増やすと売上を増やさなければならなくなり、そのために営業活動が必要になります。従来の会社運営は資本主義特有の「拡大しなければならない」という性質がありましたが、私の場合、会社はスリムなままで仕事が増えたらパートナーに依頼すればいいという考えなので、今回の方法に近いんですよね。今回は、非常時に繋がれるネットワークを持っていたことがよかったと感じています。

一方、今回の活動に参加したメンバーは、どのように感じているのでしょうか。2人の飲食店店主に話を聞いてみました。

「紅蓉軒」(春吉)の下田さんの場合

街中華として親しまれる「紅蓉軒」は、3月後半になっても平日のお昼は満席の状態が続いていたそうです。そのような状況で、下田さんは「感染したくない」という想いが徐々に強くなっていったそうです。お店を開けている状態では感染リスクは高まりますし、テイクアウトのみの営業を続けるにしても買い出しが必要になり、接触機会の8割削減は難しいと、休業を検討し始め、緊急事態宣言が発令される直前に休業に入ります。

下田さん

うちの場合はありがたいことに先代が頑張ってくれて家賃もかかりませんし、早く収束させるためにも、自分を守るためにも、ここはきっぱり休業することに決めました。そんなある日、栗田さんから「一緒に(ガイドラインをつくる活動を)しませんか?」とお声がけいただいたんです。

正直なところ、最初はどのようなことが始まるのかをあまりわかっていなくて。林田さんとは、数ヶ月前にFacebookで繋がったばかりでした。テレビでの発言が面白いなと思っていたので、今回のメンバーに林田さんがいると聞き、これは面白そうなことが始まるぞ!と直感しましたね。また、流行りのzoomを体験してみたいという好奇心のようなものもあって。1回目のzoomミーティングが終わる頃、ようやくどういうことが始まるのかを理解しました。

そう話す下田さんは休業を決めるときも、営業を再開することを決めるときも、すべて自分の感覚で動いてきました。

下田さん

今回の活動に参加して、自分が感覚的に考えて行動していたことが正しかったという確信を持つことができました。自分が感染しないために、接触機会を8割削減するために何をすればいいのか。全面休業することも、自分の感覚で決めましたね。今回のガイドラインに書かれているようなことも、本来は自分で考えてやるべきことなので、営業を再開するにあたって、自分たちがやるべきこと、お客様に協力していただくことは、ある程度理解していました。それが間違っていなかったという確認ができましたし、同じ気持ちの人がたくさんいることに安心しましたね。

下田さんは今回のことで約30年ぶりに県庁を訪れたそうです。

下田さん

栗田さんたちと一緒に県庁へ行き、副知事に私たちの想いを伝えました。今回、私が伝えたかったのは、うちのような小規模なお店はガイドラインに書かれていること全てに取り組むことができなくても、このガイドラインをベースにそれぞれが考えて取り組むことはできるということです。飲食店は小規模のお店が殆どですから、そういったお店の方々も受け入れやすいものになっているということを知って欲しかったんですよね。


↑メニューにガイドラインを挟み、お客様への周知徹底を図る下田さん

下田さんは5月26日(火)からの営業再開を決め、このガイドラインをもとに「紅蓉軒」独自の取り組みを決めました。そして、営業を再開することを馴染みのお客様に伝えたところ、さっそく15人という団体の予約が入りそうになったそうです。けれど、ガイドラインでは1グループの人数を制限しようという項目があり、下田さんはそのお客様に「ガイドライン上、その人数では受けることができないので、人数を調整して欲しい」と伝えました。

下田さん

このガイドラインの存在は、お墨付きというよりも、お店にとってのお守りなんですよね。ガイドラインに沿っているという話をするとお客様も納得してくださいます。このガイドラインに掲載されている内容に対して難しいと感じる飲食店も少なくないと思いますし、拒否反応を示される方もいらっしゃるかと思います。けれど、このガイドラインはあくまでも“ものさし”なので、まずは近しい飲食店の店主から、『こんなんできたけんやってみらん?』って声をかけて、この活動を広めていきたいと思いますね。

■紅容軒

「餃子のラスベガス」「Yorgo(ヨルゴ)」(大名)の川瀬さんの場合


↑国体道路沿いにある「餃子のラスベガス」の店頭には、手洗い場が設けられた

国内外からファンが訪れる人気店「餃子のラスベガス」と「Yorgo」を営む川瀬一馬さん。海外の状況を見ているうちに「日本もいずれ飲食店が通常営業できなくなる」と確信し、3月に入った頃からテイクアウトなどの準備を進めていたそうです。

川瀬さん

この状況で何を守るべきかと考え、家族と従業員、お世話になっている仕入れ先や大好きなお店だけは絶対守ろうと決めたんです。テイクアウトに関しては、自分のお店だけでするよりも、何店舗か集まってやった方が話題にもなるし、話題になれば購入してくださる方も増えると考え、4月2日(木)から準備をはじめ、4月6日(月)から「テイクアウト福岡」(現在は終了)をスタート。参加店も徐々に増え、反響も大きかったのですが、プラスの反響もある一方でマイナスの反響もあって戸惑いもありましたね。また、盛り上がるのも早かったけれど、2週間ほどでその盛り上がりもかなり落ち着きました。数字の流れを見ていても、テイクアウトだけでずっとやっていくのは難しいことを実感し、4月には衛生担当を1人決めて、店内営業のための準備を始めました。


↑2席ごとにパーテーションで区切られたカウンター席

川瀬さんが講じた感染拡大防止対策は、かなり厳しいものでした。店頭に設けた手洗い場で手洗いと消毒をし、入店前には靴底を消毒、カウンター席にはパーテーションを設置しています。また、お客様の連絡先も必ず聞き、万が一のことがあった場合はいつでも連絡を取れる体制を敷きました。川瀬さんがここまで入念な対策を講じたのは、自分に嘘が付けなかったからと言います。

川瀬さん

4月7日に店内での営業を休止することを決めたとき、SNSなどに『お客様の安全と従業員の安全を守るために店内営業を休止します』と書きました。緊急事態宣言は解除されたものの、新型コロナウイルスがなくなったわけでもないですし、お客様や従業員の安全が担保されたわけでもありません。けれど、経営的な側面からも営業を再開せざるを得ない状況もあります。営業を再開するにあたって、4月7日に書いたことに対してどこまで責任を持てるのを考えた結果が、これらの対策なんです。自分の言葉に責任が持てないのはカッコ悪いですしね。

そんな川瀬さんは、2回目のzoomミーティングから、今回のガイドライン策定に参加します。

川瀬さん

この話を聞いたときは、とてもいいことだと思いました。うちは独自で考えて早い段階から動いてやってきたけれど、周りにはどうしていいかわからない人も多くて。お店側の目線からもですが、お客様目線からも、何かしらの基準があった方がいいというのはずっと思っていたことでした。このガイドラインに書かれていることは、当たり前のことだと思っていましたが、否定的な意見があったことは正直驚きましたね。今は売上や利益よりも安全を考える時期です。外食産業全体で安全に対して担保して、少しずつ回復させていくことが大切だと思っています。安全であることの実績をつくり、それを認知してもらわないと、回復させていくことは難しいでしょう。とはいえ、このガイドラインは強制するものではありません。ガイドラインをベースにそれぞれが考え、意識が高まっていけばいいのではないかと思いますね。

■Yorgo

■餃子のラスベガス

「紅蓉軒」や「餃子のラスベガス」の店頭には、このガイドラインのポスターが貼られています。私たち、飲食店を利用する側からすれば、そのような対策が講じられているお店ほど、安心して利用できるということにもなります。そのような視点で店選びをしていけば、街全体の感染拡大防止対策の意識が高まっていくことでしょう。まずは福岡から。安心して外食が楽しめる街になることが、経済回復に繋がっていくのではないでしょうか。

■飲食店イートイン安全ガイドライン福岡はこちら
https://drive.google.com/file/d/1c2k5xknAKWcHqKXjZXmyZ-sB-SH_rrlf/view

■ポスターはこちらよりダウンロードできます(ご自由にご使用ください)
https://drive.google.com/open?id=1h3N3O66bYf5df2osV2RRpUvHi6Kxs20T

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フクリパ編集部
フクリパ・デスク(中の人)です。飛躍する街・福岡の 過去を知り、現在を理解し、未来を想像する、様々な情報をいち早くお届けします。「こんな記事が読みたい!」というリクエストは、各種SNSのメッセージにて承ります!

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