5月3日(日)夕方、Facebookでお願いされる!
5月3日、Facebookを眺めていると、「勝手にお願いバトン」というタイトルの投稿がありました。それは、福岡市内で飲食店を営む栗田真二郎さんから、林田さんに宛てたもの。
林田暢明さん(林田さんのフクリパ記事はこちら)
林田さん
と、その日のことを振り返ります。
平常時であれば、メンバーを募集し役割を分担するというチームビルディングから行なっていきますが、今回はスピード重視。まずはさまざまな人の意見を集約しようと、林田さんは、GW最終日である5月6日の夜にzoomミーティングを開催することを決め、栗田さんや林田さんがSNSで参加者を募りました。
5月6日(水・祝)夜、約20名で話し合う!
栗田さん、林田さんを中心にミーティングが開催され、飲食店経営者を中心に約20名が参加。その中には、福岡県議会議員のにえだ元氣さんの姿もありました。
林田さん
約1時間のミーティングでは、さまざまな意見が飛び交いました。「業態によってできる店とできない店がある」「ここまで厳しいとお客様が来なくなってしまうのではないか」「ここまでしてくれたら(客としても)安心できる」などなど。ここで集まった意見を一旦集約し、より多くの賛同を得るため、ミーティングに参加していない飲食店店主たちへも広く意見を聞くことに。3日後の5月9日(土)に2回目であり(福岡県へ提案するための)最後のミーティングが開催されることを決め、その日のミーティングは終了しました。
ここで集まった意見をもとに林田さんがベースとなる案をつくり、翌7日にはミーティングに参加していない人たちへも拡散。賛同者は一気に増えていきました。
5月9日(土)夜、ガイドラインが完成。週明け11日(月)に県知事へ届ける!
5月7日に林田さんがガイドライン案をFacebookに投稿し、約70名がシェアすることで、この活動はより多くの人に広がっていきました。栗田さんをはじめ、参加者のつながりで賛同者は約40名の経営者の賛同を獲得。賛同者リストには「一風堂」などを展開する力の源ホールディングスの河原成美社長や「焼とりの八兵衛」の八島且典社長をはじめ、福岡の飲食業界を牽引する方も名を連ねます。
9日夜のミーティングでは、項目を一つひとつ確認しながら、「飲食店イートイン安全ガイドライン福岡」の案が完成。
週明けの5月11日(月)に福岡県議会議員のにえださんが小川知事に直接資料を渡し、2日後の13日(水)には代表者5名が大曲 昭恵副知事に要望書を手渡すことができました。その日の様子はテレビや新聞でも取り上げられ、この活動がより多くの人々に知られることとなったのです。
林田さん
5月15日(金)ポスター完成!
一方、林田さんは、このガイドラインを拡散するため、ポスターを作成することを決めます。
林田さん
私自身としては、今回は非常時なのでワッと集まって、目的が達成できれば解散していいと考えています。映画の「オーシャンズ11」のイメージですね。なので、とにかくスピーディに、クオリティの高いものを作ることを意識しました。
5月14日(木)夜にはポスター案がデザイナーから届き、その日のうちにmessengerグループに共有。意見を集約し、5月15日(金)午前中にデザイナーに修正を依頼し、その日の13時30分にはポスターが完成! 林田さんはそのポスターの版権をフリーにします。この取り組みは地元メディアでも多く取り上げられ、林田さんのもとにもさまざまな問い合わせが入るようになりました。
林田さん
栗田さんの依頼から約10日間で、副知事にガイドライン案を手渡し、ポスターまで完成させるというスピード感は、全国的にみてもかなり早かったという印象です。
林田さん
私自身も合同会社で会社を運営していますが、よく「人を増やさないの?」と聞かれます。人を増やすと売上を増やさなければならなくなり、そのために営業活動が必要になります。従来の会社運営は資本主義特有の「拡大しなければならない」という性質がありましたが、私の場合、会社はスリムなままで仕事が増えたらパートナーに依頼すればいいという考えなので、今回の方法に近いんですよね。今回は、非常時に繋がれるネットワークを持っていたことがよかったと感じています。
一方、今回の活動に参加したメンバーは、どのように感じているのでしょうか。2人の飲食店店主に話を聞いてみました。
「紅蓉軒」(春吉)の下田さんの場合
街中華として親しまれる「紅蓉軒」は、3月後半になっても平日のお昼は満席の状態が続いていたそうです。そのような状況で、下田さんは「感染したくない」という想いが徐々に強くなっていったそうです。お店を開けている状態では感染リスクは高まりますし、テイクアウトのみの営業を続けるにしても買い出しが必要になり、接触機会の8割削減は難しいと、休業を検討し始め、緊急事態宣言が発令される直前に休業に入ります。
下田さん
正直なところ、最初はどのようなことが始まるのかをあまりわかっていなくて。林田さんとは、数ヶ月前にFacebookで繋がったばかりでした。テレビでの発言が面白いなと思っていたので、今回のメンバーに林田さんがいると聞き、これは面白そうなことが始まるぞ!と直感しましたね。また、流行りのzoomを体験してみたいという好奇心のようなものもあって。1回目のzoomミーティングが終わる頃、ようやくどういうことが始まるのかを理解しました。
そう話す下田さんは休業を決めるときも、営業を再開することを決めるときも、すべて自分の感覚で動いてきました。
下田さん
下田さんは今回のことで約30年ぶりに県庁を訪れたそうです。
下田さん
↑メニューにガイドラインを挟み、お客様への周知徹底を図る下田さん
下田さんは5月26日(火)からの営業再開を決め、このガイドラインをもとに「紅蓉軒」独自の取り組みを決めました。そして、営業を再開することを馴染みのお客様に伝えたところ、さっそく15人という団体の予約が入りそうになったそうです。けれど、ガイドラインでは1グループの人数を制限しようという項目があり、下田さんはそのお客様に「ガイドライン上、その人数では受けることができないので、人数を調整して欲しい」と伝えました。
下田さん
■紅容軒
「餃子のラスベガス」「Yorgo(ヨルゴ)」(大名)の川瀬さんの場合
↑国体道路沿いにある「餃子のラスベガス」の店頭には、手洗い場が設けられた
国内外からファンが訪れる人気店「餃子のラスベガス」と「Yorgo」を営む川瀬一馬さん。海外の状況を見ているうちに「日本もいずれ飲食店が通常営業できなくなる」と確信し、3月に入った頃からテイクアウトなどの準備を進めていたそうです。
川瀬さん
↑2席ごとにパーテーションで区切られたカウンター席
川瀬さんが講じた感染拡大防止対策は、かなり厳しいものでした。店頭に設けた手洗い場で手洗いと消毒をし、入店前には靴底を消毒、カウンター席にはパーテーションを設置しています。また、お客様の連絡先も必ず聞き、万が一のことがあった場合はいつでも連絡を取れる体制を敷きました。川瀬さんがここまで入念な対策を講じたのは、自分に嘘が付けなかったからと言います。
川瀬さん
そんな川瀬さんは、2回目のzoomミーティングから、今回のガイドライン策定に参加します。
川瀬さん
■Yorgo
■餃子のラスベガス
「紅蓉軒」や「餃子のラスベガス」の店頭には、このガイドラインのポスターが貼られています。私たち、飲食店を利用する側からすれば、そのような対策が講じられているお店ほど、安心して利用できるということにもなります。そのような視点で店選びをしていけば、街全体の感染拡大防止対策の意識が高まっていくことでしょう。まずは福岡から。安心して外食が楽しめる街になることが、経済回復に繋がっていくのではないでしょうか。
■飲食店イートイン安全ガイドライン福岡はこちら
https://drive.google.com/file/d/1c2k5xknAKWcHqKXjZXmyZ-sB-SH_rrlf/view
■ポスターはこちらよりダウンロードできます(ご自由にご使用ください)
https://drive.google.com/open?id=1h3N3O66bYf5df2osV2RRpUvHi6Kxs20T