謎解き!フクリパ

家庭ごみは4分別。福岡市ゴミ分別の種類が少ない理由とは?〜福岡市の家庭ごみを取り巻く謎を解き明かす!〜

市民からの満足度の高い夜間収集で集められた福岡市の家庭ごみはなぜ、4分別と少ないのか? そして、その後ごみはどのように処理されていくのでしょうか? さらにごみ処理に一体、市民1人あたりいくら掛かっているのでしょうか? 福岡市の家庭ごみを取り巻く【謎】について今回、解き明かしていきます。

ごみの分別や回収のルールが自治体ごとに違うのはなぜ?4分別と少ない福岡市の担当者に聞いてみた。

千葉市 21分別、札幌市 10分別、川崎市 8分別、仙台市 6分別、福岡市4分別……。
同じような政令指定都市であっても、家庭から出るごみの分別数は異なる。

政令指定都市で唯一、ごみを夜間に収集する福岡市では、『燃えるごみ』『燃えないごみ』『空きびん・ペットボトル』を決められた日の日没から夜12時までに家の前や所定の集積場に出すようになっており、『粗大ごみ』は予約での有償回収だ。

なぜ、自治体によって、家庭ごみの分別も含めたごみ出しルールが違うのか?
この点について、福岡市環境局循環型社会推進部の飯干智希計画課長は、次のように解説する。


福岡市環境局循環型社会推進部の飯干智希計画課長


飯干課長

ごみの収集を定めた『廃棄物の処理及び清掃に関する法律』において、一般廃棄物の種類や分別の区分は、市町村が策定する一般廃棄物処理計画で定めるとされています。

同法に基づいて各市町村は、それぞれの地域の特性などを踏まえた上で適切なごみの分別の仕方や収集方法などを定めています。このため、ごみ出しのルールは、各市町村によって異なる訳です。

160万都市である福岡市では毎年、進学や就職・転勤などで約8万人もの人口が入れ替わっていることや、本市が夜間戸別収集を採用していることなどから、市民への分かりやすさや収集運搬、処理処分における環境への負荷、コストなどを総合的に判断した結果、家庭ごみは、『燃えるごみ』『燃えないごみ』『空きびん・ペットボトル』『粗大ごみ』の4分別によるごみ収集を行っています。

 

 

年間収集量は52万8,000トン、それらは9種に分別されてリサイクル・処理へ

福岡市環境局発行の『ふくおかの環境・廃棄物データ集(令和3年度)』によると、福岡市の2020年度におけるごみ処理量は、家庭ごみ30万2,000トン、事業系ごみ22万6,000トンの合計52万8,000トンだった。

 

各政令指定都市の1人1日当たりのごみ排出量をまとめたWebサイト『東京23区のごみ問題を考える』によると、福岡市の1人1日あたりのごみ排出量はは902グラムで、ごみ量の少ない順では20政令指定市で12位だった。

 


出典『東京23区のごみ問題を考える』資料

 

福岡市で夜間収集された燃えるごみ、燃えないごみ、空きびん・ペットボトル、そして粗大ごみは収集後、9分別にした上で以下のように処理されていく。

 

 

◎燃えるごみ

燃えるごみは、福岡市および近郊の西部・臨海部・東部・南部の4カ所にある清掃工場で燃やす。
ごみの焼却で発生した熱エネルギーを用いた発電や熱供給も行っている。
その後、焼却灰は最終処分場へ運ばれて埋立処分される。

 

 

◎燃えないごみ

燃えないごみは、同じく東部と西部の2カ所にある資源化センターで破砕・選別される。
選別された鉄(図表内番号③)やアルミ(同④)は、有価物として売却し、リサイクルしていく。
可燃物(同⓵)は、焼却施設で焼却し、不燃物(同②)は最終処分場で埋立処分される。

 

 

◎空きびん・ペットボトル

再資源化が可能な資源ごみである空きびん・ペットボトルは回収後、選別処理施設で選別・梱包される。
びんについては無色(同⑥)、茶色(同⑦)、その他(同⑧)に分別されていく。
そして、ペットボトル(同⑨)と共にリサイクルされる。

 

 

◎粗大ごみ

粗大ごみは、予約制による有料回収となっている。
回収した粗大ごみは、使えるものと使えないものに分けられる。
使えないものは、可燃系の粗大ごみと不燃系の粗大ごみに分別した上で、それぞれ処理されていく。
一部、状態の良い家具などの使えるもの(同⑤)はリユースされる。

 


資料提供:福岡市


飯干課長

東京2020オリンピック・パラリンピックで授与されたメダルは、『都市鉱山からつくる!みんなのメダルプロジェクト』で全国各地からの廃棄家電や廃棄電子機器などからのリサイクル金属で造られました。
レアメタルに代表される貴重な資源を廃棄された家電製品や電気機器などから回収する〝都市鉱山〟に対応して福岡市では、2010年6月から使用済小型電子機器回収モデル事業を始めました。
そして、2013年8月から回収ボックスを増設して現在、市内42か所で回収しています。
2020年度に家庭ごみだった使用済小型家電から回収したリサイクル量は132トンでした。
また、2020年度のごみ処理量52万8,000トンに対してリサイクル量は23万2,000トンであり、リサイクル率は30%強となっています。

 
環境省『一般廃棄物の排出及び処理状況等(令和2年度)について』によると、ごみの排出・処理状況におけるリサイクル率20.0 %であり、算出方法が異なるため一概に比較することができないものの、福岡市のリサイクル率は全国平均を約10%上回っている。

福岡市民1人のごみ処理費は売電・資源化効果で年間1万円弱

福岡市環境局施設部の西川浩一工場整備課長は、次のように語る。


福岡市環境局施設部の西川浩一工場整備課長

西川課長

まずは、リデュース(Reduce)、リユース(Reuse)、リサイクル(Recycle)の取り組みにより、ごみを減らすことが大切です。

その上で、それでも発生する燃えるごみについて、清掃工場で焼却処理を行っています。
焼却時に発生する熱エネルギーは有効活用して高温・高圧の蒸気による発電も行っており工場での使用電力を賄うだけでなく、余剰電力は電気事業者に対して売電しています。

 

環境省発行の『一般廃棄物処理事業実態調査の結果(令和2年度)について』によると、2020年度末時点で全国に1,056カ所のごみ焼却施設がある。
このうち36.6%にあたる387施設が発電設備を備え、ごみ焼却による総発電量は100億キロワット時強であり、238万世帯分の年間電力使用量に相当する量だった。

 

福岡市の燃えるごみは、直営の西部工場と臨海工場、九州電力との共同出資で設立された株式会社福岡クリーンエナジーが運営する東部工場、福岡都市圏南部環境事業組合が運営する福岡都市圏南部工場で焼却処理されている。

 

市内の燃えるごみ焼却による2020年度の発電量は約2億5,300万キロワット時で、これは一般家庭約7万3,000世帯分の年間使用量に相当する。

 

そして、『ふくおかの環境・廃棄物データ集』(令和3年度)によると、直営の西部工場と臨海工場における2019年度の売電収入は7億700万円だった。
売電収入に加えて、資源物などの売却収入2億3,100万円を控除した福岡市民1人あたりの一般家庭ごみの処理コストは9,877 円となる。

 

環境省『一般廃棄物の排出及び処理状況等(令和2年度)について』によると、ごみ処理事業経費は2兆1,290億円であり、国民1人あたりに換算すると、1万6,800円となっている。算出方法が異なるため一概に比較することができないものの、福岡市民1人あたりの一般家庭ごみの処理コストは、国民1人あたりに比べておよそ4割余り安くなっているといえる。

 

 


 焼却処理施設 西部工場(画像提供:福岡市)


焼却処理施設 臨海工場(画像提供:福岡市)

 

 

『プラ新法』で今後、ごみ出しルールは変わるのか!?

2022年4月、プラスチックごみの削減やリサイクル促進の強化を目的とした『プラスチック資源循環促進法』(プラ新法)が施行された。
従来、分別収集した廃プラスチックの処理施設が近隣に無い場合や処理財源が足りない場合、多くの自治体では廃棄プラスチック製品を燃えるごみとして燃やすか、あるいは燃えないごみとして埋立処分をしてきた。

しかし、世界の潮流として、使用済みプラスチックを可能な限りリサイクルして、焼却は最終選択肢とする流れだ。
日本でもプラ新法を通じて各自治体にプラスチックごみ分別基準の策定や住民への周知を求めている。

福岡市では、プラスチックのリサイクル推進に向けた課題検証を目的に2022年5月23日~2023年3月31日、プラスチック製品の回収モデル事業を実施している
今後、プラ新法で福岡市のごみ出しルールも変わっていくのだろうか。
この点について飯干課長は下記の見解を示す。


飯干課長

現在実施しているモデル事業などにより、今後のプラスチックリサイクルのあり方を検討していきたい。 

循環型社会づくりの視点で福岡市の未来と可能性を考える

人は生きている限り、ごみを出し続ける宿命にある。

これらのごみを単なる廃棄物としてみるのではなく、エネルギー源や都市鉱山などの〝宝の山〟にしていくための創意工夫が今後、さらに求められるであろう。

福岡市は、ごみの夜間収集やごみ処理の福岡方式で高い評価を得ている。
これらに続く第3の柱を生み出していく挑戦も今後、必要になると考える。

 

 

福岡市のごみ処理施設:(中間処理施設)施設の概要


画像提供:福岡市

 

クリーンパーク・西部
◎所 在 地  福岡市西区大字拾六町1191
◎総敷地面積 14万3,500平方メートル

焼却処理施設 西部工場
◎焼却能力 750トン/日(250トン/日×3基)
◎発電能力 1万キロワット
 
クリーンパーク・臨海
◎所 在 地  福岡市東区箱崎ふ頭4-13-42
◎総敷地面積 9万7,700平方メートル

焼却処理施設 臨海工場
◎焼却能力 900トン/日(300トン/日×3基)
◎発電能力 2万5,000キロワット
 
クリーンパーク・東部
◎所 在 地   福岡市東区蒲田5-11-2
◎総敷地面積 21万8,000平方メートル
焼却処理施設 東部工場
◎焼却能力 900トン/日(300トン/日×3基)
◎発電能力 2万9,200キロワット
 
クリーン・エネ・パーク南部
◎所 在 地   春日市大字下白水104番地5
◎総敷地面積 9万5,000平方メートル

焼却処理施設 クリーン・エネ・パーク南部
◎焼却能力 510トン/日(170トン/日×3基)
◎発電能力   1万6,700キロワット

 

参照サイトはこちら

【参照サイト】福岡市環境局『ふくおかの環境・廃棄物データ集(令和3年度)』
【参照サイト】環境省『一般廃棄物の排出及び処理状況等(令和2年度)について』
【参照サイト】福岡市環境局計画課「プラスチック製品回収モデル事業」5月23日(月)から実施
【参照サイト】仙台市『他都市のごみ分別の実施状況について』
【参照サイト】東京23区のごみ問題を考える

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編集者兼ライター
近藤 益弘
1966年、八女市生まれ。福大卒。地域経済誌『ふくおか経済』を経て、ビジネス情報誌『フォー・ネット』編集・発行のフォーネット社設立に参画。その後、ビジネス誌『東経ビジネス』、パブリック・アクセス誌『フォーラム福岡』の編集・制作に携わる。現在、『ふくおか人物図鑑』サイトを開設・運営する。

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