謎解き!フクリパ

世界のごみ問題を解決する『福岡方式』。国内85%を占める福岡生まれ、福岡育ちのごみ処理技術とは。

国内のごみ処理関係者が『福岡方式』と呼び、海外の関係者からは『フクオカ・メソッド』と称される〝福岡生まれ〟〝福岡育ち〟の国内外で活躍する、画期的な廃棄物の最終処理技術があります。福岡大学と福岡市との官学連携で誕生した福岡方式の経緯や国内外で普及した背景などの【謎解き】に挑みます。

海外18カ国で導入されているごみ処理技術『福岡方式』とは?

1人・1日当たりのごみ排出量は 918グラム━━━━。
環境省 『日本の廃棄物処理 令和元年度版』によると、日本で1年間に排出されるごみの総量は 4274万トンに上る。われわれは毎日、1キロ近いごみを排出する中、日本では戦後の経済発展と都市への人口集中で〝ごみ戦争〟と呼ばれる問題が生じた時期もあった。

当時、ごみは野積みをはじめ河川や海洋に投棄されてハエや蚊の大量発生や伝染病の拡大などの問題が生じていた。
かつての最終処分場は、家庭ごみをはじめとする廃棄物を投棄するだけで悪臭や汚水が発生し、周辺環境に悪影響をもたらしていた。また、火災や爆発の原因となるメタンガスが発生し、汚水は地下水を汚染する恐れもあり、大きな問題だった。

従来の最終処分場が抱えていた問題を解決したのが、福岡大学と福岡市によって開発・実用化された『福岡方式』(準好気性埋立技術)だ。

福岡方式は、日本で内陸部に最終処分場を建設する際の標準方式として採用され、さらに海外18カ国で導入されて国際的な評価も得ているごみ処理技術となっている。
 
(画像提供:福岡市環境局)

(画像提供:福岡大学)

高性能でかつ経済的なごみ処理技術『福岡方式』の仕組み

最終処分場の国内標準となり、海外でも高評価を得る福岡方式の開発から実用化に打ち込み、さらに国内外への普及に尽力してきた福岡大学名誉教授の松藤康司NPO法人廃棄物管理アドバイザーネットワーク福岡理事長は、福岡方式の仕組みについて解説する。

松藤理事長

かつての最終処分場が、単なる〝投棄場〟でした。一方、福岡方式は処分場の底部に集排水管を設けて、さらに竪型ガス抜き管と連結させて酸素を自然に取り入れる仕組みによって〝浄化槽〟的な機能も備えています。

福岡方式では、流入してきた酸素が、廃棄物中の微生物を活性化させることで有機性汚濁物質を分解させてメタンガスの発生を抑え、さらに浸出水もある程度まで浄化しています。

このような〝浄化槽〟的な機能も備えた仕組みは、専門家の間では『準好気性廃棄物埋立技術』と呼ばれています。
福岡大学と福岡市が一緒になって開発・実用化した技術だったので、『福岡方式』という名称でも親しまれています。


(図表提供:福岡市環境局)
 

なぜ、『福岡方式』が誕生したのか?

福岡方式の研究が始まった1970年代当時の最終処分場は、今日の途上国と同様に廃棄物の投棄場に過ぎず、メタンガスによる火災発生や漏れ出した汚水による環境被害も相次いでいた。

松藤理事長

当時の福岡市清掃局(現環境局)から福岡大学に最終処分場の状況改善の相談が持ち込まれたことが、福岡方式を開発する端緒となりました。

そして、旧厚生省(現環境省)からの研究費でエアーコンプレッサーを使って廃棄物に空気を排水管から送り込む好気性埋立実験に取り掛かりました。結果的には、空気を強制的に送り込んだ状態と共に比較用として排水管を設置しただけで何もしない状態も設けました。両者を比較してみると、同様に廃棄物の分解が進んでいました。つまり、空気を送り込んでも、送り込まなくても同じ実験結果になったため、好気性埋立は実用的では無いとの結論でした。

しかし、「なぜ、このような結果になったのか」「一体、何が起きているのか」という疑問について徹底的に検討し、原因追究に取り組みました。
そして、何もせずに放置していた状態でも、埋立地の底部に敷設しているごみ汚水を抜くための排水管が酸素の出入り口になり、微生物を活発化させて発生した熱による対流が起きることで酸素が自然に流入していく仕組みを発見しました。

このように酸素の自然流入による微生物の活発化で浄化させているという仮説を福岡市に報告したところ、福岡市から新たに建設する最終処分場の設計を依頼されました。そして、1975年に日本初の準好気性埋立場として、福岡方式を採用した新蒲田埋立場が誕生しました。


 

いまや全国の85%を占める『福岡方式』、なぜ日本標準となったのか?

今日、全国にある約2,000箇所の一般廃棄物の最終処分場のうち実に85%が、福岡方式によるゴミ埋立地だ。福岡方式が最終処分場の日本標準になった経緯について、松藤理事長は次のように解説する。

松藤理事長

廃棄物行政の問題解決に取り組む全国の自治体などで組織した『全国都市清掃会議』が1976年に開催された発表会で福岡方式の成果を報告すると、大きな反響を呼びました。早速、札幌市、仙台市、横浜市、神戸市が最終処分場に福岡方式の導入を決めました。

一気に日本の北~南にある大都市で福岡方式が導入し、すべての自治体から「浸出水に含まれる汚濁物質が減った」という報告が相次ぎ、実用段階での実証結果を得ました。このような成果を踏まえて1979年、旧厚生省(現環境省)が制定した廃棄物最終処分場の性能指針において、国の補助金で一般廃棄物の最終処分場を建設する場合、福岡方式を標準構造とすることを規定しました。


 

現地で調達できる資材を使う『福岡方式』は、世界でも認められた

福岡方式は、マレーシアを皮切りにイランや中国、イタリア、ドミニカ、ベトナム、ブータン、サモアなど18カ国で正規採用された実績がある。開発途上国の経済発展や生活水準の向上を目指す日本のODA(政府開発援助)の一環として、マレーシアへJICA(独立行政法人国際協力機構)の衛生埋立の専門家として1988年から2年間赴任した松藤理事長は、福岡方式の国際展開について明かす。

松藤理事長

赴任時、マレーシアの最終処分場は典型的な投棄型のごみ捨て場で、まるで20年前の日本へタイムスリップしたような状況でした。現場では毎日、メタンガスによる火災が発生して消火作業に追われていました。

このため、まず既存の最終処分場の改善として、がれきや廃ドラム缶などの廃材を用いてガス抜き構造にすると、火災や黒煙は日を追って減少して半年後には草木も生え始めました。その後、次のステップとして、福岡方式の進化型である『循環式準好気性埋立システム』を廃材の再利用による低コストで完成、運営して見事に成功しました。

マレーシアから帰国した翌1991年から福岡大学では、JICAの国別研修の拠点として廃棄物埋立技術の研修員の受け入れを始めました。今日では、120カ国以上から約2,000人の研修生に技術指導し、彼らが福岡方式を海外へ広めています。

現地で調達できる資材をローカルマテリアルとして使う福岡方式は、高度な技術が不要な上に低コストでの建設・管理できる、地球にやさしい埋立方式です。
2011年には地球温暖化を抑制する新しい技術として、国連からも認定を受けました。また、国連ハビタットも福岡方式に注目し、ケニアに最終処分場のモデル建設をしたことでアフリカでも広がっています。



(画像提供:福岡大学)

2017年10月、国際学会『国際廃棄物管理会議』は、「長きにわたって世界全体に準好気性埋立を広めた」と福岡方式の功績を評価して特別賞を贈った。福岡市に福岡方式を提案した1975年から実に42年の歳月を経ての〝大金星〟となった。
 

福岡方式にみる産学官連携の福岡スタイルに今後も期待

 地域社会が抱える課題に対して、行政からの理解と協力を得た大学が、自らの知見や科学的手法、さらに〝現場主義〟に徹した結果、福岡方式(準好気性埋立技術)が誕生した。
そして、日本標準となり、さらに海外へ普及していくことで人々の生活を快適なものにしている。
産学官でのつながりの強さは、福岡という土地柄の特徴の一つであり、第2、第3の『福岡方式』『フクオカ・メソッド』が今後、登場してくることが大いに求められる。
 
出典)『FukuokaFacts』
【参考サイト】
世界のごみ問題は「福岡方式」が解決している!-福岡大学と福岡市が共同開発。福岡発のごみ埋立技術 
環境省大臣官房廃棄物・リサイクル対策部企画課循環型社会推進室『日本の廃棄物処理の 歴史と現状』
博多の豆知識 vol.76 先駆的な福岡方式のゴミ処理

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編集者兼ライター
近藤 益弘
1966年、八女市生まれ。福大卒。地域経済誌『ふくおか経済』を経て、ビジネス情報誌『フォー・ネット』編集・発行のフォーネット社設立に参画。その後、ビジネス誌『東経ビジネス』、パブリック・アクセス誌『フォーラム福岡』の編集・制作に携わる。現在、『ふくおか人物図鑑』サイトを開設・運営する。

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