「歴史を面白く学ぶコテンラジオ(以下:コテンラジオ)」を運営する「株式会社COTEN(以下:コテン)」の様々な情報をお届けしている「コテンリレー」。3回に渡ってお届けしている、「コテンラジオ」の制作に携わる“裏方”な方々への直撃インタビュー!最終回の第三弾は、編集チームの鳥飼正幸さん(株式会社BOOK)と西山直也さん(株式会社FUBI)が登場。
コテンラジオの「聞きやすさ」や、音声メディアと映像メディアでのW配信の実現の裏には、プロの編集術、こだわりがつまっていました。音声メディアはどのように作られ、今後どうなっていくのか。編集サイドから見る音声メディアの可能性、始めるならどのようにすれば良いのかについてお話いただきました!
福岡発、全国にファン急増中!「コテンラジオ」とは?
2022年3月に開催されるJapan Podcast Awardsで殿堂入りが確定した「コテンラジオ」。このPodcastを運営している「株式会社コテン」は、福岡発のスタートアップ企業です。
「コテンラジオ」は「株式会社COTEN」の広報活動として2018年11月に始まった歴史系Podcast。株式会社コテン代表の深井龍之介さん、メンバーの楊睿之(通称:ヤンヤン)さんと株式会社BOOK代表の樋口聖典さんの3名が日本と世界の歴史を面白く、かつディープに、そしてフラットな視点で伝えてくれるインターネットラジオです。
そのおもしろさにハマるビジネスパーソンが続出中!
フクリパでは、これまでコテンの代表・深井龍之介さんからスタートしたコテンメンバーのご紹介記事「コテンリレー」をお届けしてきました。
コテンが目指す「世界史データベース」を様々な角度からご紹介しながら、現在は「コテンラジオ」の裏側を計三回にわたってお届けするミニ企画「コテンラジオの裏側潜入レポート」を実施中です!
その第一弾では、「コテンラジオ台本(歴史)チームの膨大な作業工程に見る、「学び」の深淵」として、数十冊に渡るインプットをハイスピードに進める勉強術をご紹介しました。
第二弾の「“リスナー16万人に届ける”コテンラジオの運営に見る、「仕事」のエッセンス」では、運営チームがコテンラジオの前工程から後工程に渡ってどんなことをされているのかをお届けし、さらにはその膨大な工数をやりくりしているメンバーの「仕事のエッセンス」も伺いました。
ということで、コテンラジオの裏側潜入レポート、最終回の第三弾はコテンラジオの編集チームに根掘り葉掘り聞いてきましたので、コテンラジオがどうやって編集されているかをずっと知りたかった方はもちろんのこと、Podcastに興味がある方もじっくりお楽しみいただければと思います!
(「コテンラジオの裏側潜入レポート」は今回で終了ですが、「コテンリレー」は今後も続きます!)
編集チーム2名が意外な縁から田川に集うまで!
満を持して登場の「コテンラジオ」編集チーム。パーソナリティを務める株式会社BOOK代表・樋口さんの「お弟子さん」鳥飼正幸さん(通称:マサさん)と、株式会社FUBIの西山直也さんです。
なんと、たったお二人で編集を担当されていると知りびっくり!
もちろん、細かなサムネイル協力やタイトル考案メンバーもいらっしゃるのですが、ディレクションをマサさんが、実際の編集を西山さんが担当されており、私たちの耳に届く音源はこの二人を通過せずには成り立たちません。
マサさん
まずは弟子のマサさんからご紹介しましょう。
マサ
いわゆる「丁稚奉公」です。
なんと!マサさんのような若い方の口から「丁稚奉公」なるワードが飛び出すとは!
マサ
僕は地元福岡で銀行に勤めていたのですが、職業柄、気になる会社は社長について調べる癖があって。そこで師匠へ辿り着きました。BlogやTwitterで師匠の考えを読んで、自分とは全く違う価値観が面白い!と思いましたね。
銀行は良くも悪くもキャリアステップがわかりやすいので、今後の人生がなんとなく想定できてしまって、「面白くないな」と思っていたんです。そんなときにSNSで師匠の「弟子募集」を見て、この令和の時代に弟子って「人生が全く予想できなくて面白い!」と思い、すぐ応募しました。
大学時代にラグビーに打ち込んでからの銀行員という、THE体育会系な人生が180°変わりましたね。
西山
マサ
そんな裏話も飛び出しつつ、マサさんは現在どんなお仕事をされているのか聞いてみました。
マサ
特に音声メディアは、もともと会社の事業というより師匠の趣味的な側面が強いところからスタートしたので、会社としてはいいかねPaletteの運営やクリエイティブ制作なども行っていますが、音声メディアに関しては、師匠と僕しか携わっていません。
2020年9月から弟子業がスタート。すでに1年以上樋口さんのお弟子さんをされているマサさん。前職の銀行マンのままでも十分順風満帆な人生だったのではないかとも思いますが、コロナが様々な世代の人生に影響を与えているひとつの例だなと、改めて時代が変化しつつあることを感じました。
西山さん
さて、一方の西山さんもご紹介しましょう。
西山
そのときは色々とノウハウを教えてもらい、「ITに詳しいおもしろいあんちゃんやな」と思っていたのですが、音声メディアはまだされていなかったと思います。
それから複数回の事業転換を経た後に、海外でのPodcast市場の盛り上がりを見て「日本でもこれからヒットコンテンツが多く生まれ、Podcastが当たり前に聞かれる時代になる」と思い、Podcast制作事業に転換して暗中模索していた中、日本一の番組を作ってる人たちがよりによって福岡にいるんだと知り、しかもあの樋口さんがコテンラジオをやってるんだ!とつながりまして。
ちょうどその頃「Clubhouse」が流行りはじめていて、あるときClubhouseを開いたら僕の友人と樋口さんがしゃべっていたんです。
「あれ?この人はあの先輩だ!」と思い、すぐにルームに入って樋口さんに話しかけました。
「あのときお世話になった西山です!あの時相談したWebメディアは潰しちゃって、今はPodcast事業に転換したばかりでして…」
と伝えると
「えっ?じゃあ頼みたいこと山ほどあるけん、一緒にやろうよ!」
とその場で決まり、業務委託で編集を担当させていただくことになりました。
相変わらず、樋口さんのスピード感は強烈ですね!
そこから西山さんは編集のノウハウを樋口さんに伝授してもらい(時には動画で解説を作って送ってくれたりするそうです)、現在では株式会社BOOKが請け負う10本の音声メディアのほか、自社でも音声コンテンツの受託業務をされているそうです。
コテンラジオの編集過程を本邦初公開!
では、そんなお二人はコテンラジオの編集チームとしてどんなことをされているのか、詳しくお伺いしてみましょう。
チェックリストで進行管理
マサ
特別に、スケジュール管理ツール「Trello(トレロ)」の画面を見せてくれました!
横の列に並ぶのが、10本のメディアたち。
縦の行に積まれているのが、各メディアの工程。工程は大きく分けて7つあり、デモ編集、本編集、BOOK音源チェック、COTEN音源チェック、倍速音源書き出し(COTEN CREW特典用)、サムネイル作成、YouTube書き出し、で完了となるそうです。担当ごとに色分けされており、誰がいまボールを持っているのかが瞬時にわかるようになっています。
マサ
配信にあたって取りこぼしのないように常に改訂され続けているチェックリスト。感覚で動かすのではなく、きちんと言語化する。大変勉強になります!
マサ
コテンラジオは日本のPodcastを代表しているといっても過言ではないと思うんですよ。そんな番組を編集・配信しているという重圧は凄まじいです。僕らのミスが16万人のリスナーさんに影響してしまうということは肝に銘じて、日々取り組んでいます。
前回の運営チームも同じことを仰ってましたが、今や16万人のリスナーを抱えるコテンラジオには、ミスなく遅れることなく番組をお届けするという使命感が漂っています。
これだけの業務を2人で進めていることを考えると、緊張感もかなりのものだということが窺えます。
聞きやすく届ける編集業務
マサ
実際の編集業務は直也くんです。
西山
この画面を見せてもらえるなんて!貴重すぎます!
マサ
画面を見ると、3人の音声が縦に並び、その下にBGM、右枠には同時収録した動画が入っています。
西山
僕がやる編集作業では、カットしたりつないだり、ノイズを減らしたり間(ま)の調整をしたり、という感じです。
恐ろしい数の編集のあと…!!!
1本あたりがかなり長いので、カットもつなぐのも大変そうです。
西山
なるほど!収録する際にも編集のことを考慮した工夫がされているんですね。
西山
また、「えっと」とか「あのー」といった、専門用語で「フィラー」というのですが、そういったものをカットしたりもします。ただこのフィラーにも消していいものと活かしたほうがいいものがありまして、そのあたりは樋口さんにコツを叩きこんでもらいました。
コテンラジオの聞きやすさの理由がここにあったのか!とただただ感服!
誰かのコメントをカットしたりずらしたりすると、当然動画の絵と合わなくもなりますが、そこも細かく調整しているそうです。
こだわり満載のコテンラジオ!編集チームに聞く、Podcastの始め方
今回、Podcastランキング上位をキープするコテンラジオの編集チームに直接ノウハウを聞けるということで挑みましたが、プロのノウハウが詰まった本当に贅沢な番組なんだなと改めて実感。
これは、なかなか簡単に始めるのは難しいのかもしれません…。
個人がメディアを持って発信し続けることが重要
西山
もちろん、テクニックとしてマイクはこぶし一つ分をあけてしゃべるとか、エアコンなどのノイズに繋がるものは切ったり、例えばクローゼットなど反響が少ない場所で録音する、カーテンを閉めてできる限り反響を抑えるといった初心者でもできることもあります。
編集ソフトもマイクも、こだわりだしたらキリがありませんが、ただ、何よりも続けることが大事で、そしてできれば好きなことでやるほうがいいなと思います。
イェール大学の研究では、感情が一番伝わりやすいメディアは音声のみのメディアなのだそうです。あるグループで会話をしている様子を被験者に見せて発話者の感情を推測してもらう、という実験なんですけど、映像+音声を見せた場合よりも音声のみ聞かせた場合の方が発話者の感情を正確に推測できた、という結果が出ているんです。
だからこそ、深井さん、ヤンヤンさん、ムロさんがマジで歴史が好きで情熱を持って取り組んでいることと、樋口さんがそんな3人の話をマジで面白がっていることがリスナーに伝わってるんだと思うんです。
そのくらい、その人の人となりが出やすいメディアなので、「上司に言われたからやる」とかは一発でわかっちゃうと思います。ぜひ皆さんには好きなことでチャレンジしてもらいたいなと思います。
僕はコテンラジオが音声メディアの道を切り拓いていると思っていまして、もっとたくさんの人に気軽に始めてもらえたらなと思って活動しているという側面があります。
マサ
自分はどんな人間なのか。興味があることや、できること、やりたいことといった情報を発信しながら、同じような考えの人や自分のスキルを必要としている人と出逢って仕事が生まれていく、そんな時代だと思うんです。
直也くんが言うように、音声メディアは感情や思いがダイレクトに伝わるメディアですから、自分のことを知ってもらうのにもとてもいいと思います。
スマホ一つで簡単に始められるので、ぜひ皆さんもPodcastにチャレンジしてみて欲しいです。
まずはZoomなどの使いやすいもので始めていい
西山
発信をする上で一番大切なのは、続けることだと思っています。ですので、まずは「Zoom」のような使いやすいものから始めて、徐々に複雑なことも調べて覚えていけば良いと思います。
環境をいきなり整えるよりも、まずは自分の好きなことで、楽しんで続けることが一番大事であり、これからは属人的なコミュニケーションこそがビジネスを回していく鍵になるということを考えると、音声メディアは「やらない理由がない」んだなと二人のお話を聞いて改めて思いました。
やれる気がした、その「今」がチャンスです
今回は、コテンラジオの編集チームのお二人に実際の編集の流れを伺いました。
コロナがきっかけでいいかねPaletteを知り、樋口さんの弟子をやっているマサさん。コテンの新たなビジョンでも重視される「メタ認知」を意識し、自社を構造的に理解しようと経営にも活かしている西山さん。そんな二人が日々工数を見直し、どんどん聞きやすさが増してリスナーも増えている「コテンラジオ」は、歴史そのものに対する熱量もさることながら、アウトプットの編集チームもコテンラジオそのものに対してはもちろんのこと、Podcastそのものの可能性にも熱い想いを秘めていました。
お話を伺いながら、せっかくなのでこれからPodcastを始めたい人にもヒントになることを聞けたらと思っていたのですが、途中まで、
「あ、これはなかなか始めるのは難しいのかもしれない」
と感じていました。しかしコテンラジオも初めからこの体制だったわけではなく、樋口さん・深井さん・ヤンヤンさんの3人で始まっています。続けることで仲間が増え、今の体制になり、今なお改善を続けています。まず始めること、そして続けることの大切さを改めて感じたインタビューでした。
西山さんは「遠くない将来に皆さんの地元の友達が当たり前に音声コンテンツを聞いている世界になると思っています。」と仰っており、音声メディアの未来に大きな可能性と期待を感じ、一人でも多くの人にこのメディアの魅力が伝わればと語ってくれました。
みなさんがいまこの記事を読んでくださっているスマホやパソコンさえあれば、Podcastは今日からでもスタートすることができます。
台本から運営、編集と、本当に真剣に、想像を絶する工数をかけて「コテンラジオ」を届けてくれているメンバーは、リスナーが発信側にすぐにまわることのできるこの「Podcast」の魅力を日本一実感している人たちなのかもしれません。
ぜひ「コテンラジオ」をお手本にしながら、皆さんもPodcastを始めてみてください!
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