アトリエてらた

巨大な壁画に圧倒!画家のアトリエをそのままカフェにした「アトリエてらた」。築50年以上のアーティステックなカフェ【福岡市中央区】

いつの時代でも「カフェ」という存在は人々をトリコにします。近年のSNS人気も相まって、おしゃれなカフェ巡りを楽しむ女性も多い中、にわかに脚光を浴びているのが「昭和レトロな喫茶店」。中年以上の方はノスタルジックを感じ、若者にとってはおしゃれなカフェにないレトロ感が斬新だと感じるんだそうです。そこで福岡に今なお現存する「昭和レトロ喫茶店」をピックアップしてご紹介していきたいと思います!

閑静な六本松の小高い丘の上に佇む「アトリエてらた」

 

今回ご紹介する「アトリエてらた」があるのは福岡市中央区六本松です。

最寄駅である福岡市地下鉄「六本松駅」からは徒歩9分ほど。

まずは駅を出てけやき護国神社方面にしばらく歩くと、「護国神社前バス停」があり、その裏手の道に入ります。

 

 

近年都会化が進む六本松も一本路地を入れば昔ながらの閑静な住宅街が広がっています。

左手に「菊池零社」の鳥居を見ながら直進しましょう。

 

 

その先を右に曲がると上り坂が現れます。そんなに急坂ではないので頑張って上ります。

 

 

やがて三叉路の角に木々が生い茂るこちらの建物が見えてきます。ここが今回ご紹介する「アトリエてらた」です。

 

 

外観はこのような感じです。蔦の絡まる古びた洋館といった佇まい。ここがカフェだなんて初見では分からないかもしれません。

 

 

看板に導かれるまま二階へと上りましょう。登り切ったドアの奥に異世界が待っているのです。

 

 

福岡出身の画家・寺田健一郎氏のアトリエをそのままカフェに

 

 

ドアを開けるなり、まず目に飛び込んでくるのが壁一面を覆いつくす巨大な壁画。ものすごいインパクトです。まさに画家のアトリエそのまま。

 

 

店内は右手にL字型のカウンター席、左手にテーブル席という構成。年季の入ったフロアや色褪せた天井もアトリエだった当時の面影を色濃く残しています。

 

 

店主がDIYで制作したというカラフルなモザイク模様のカウンター。実に味があります。

 

 

テーブル席に置かれたこちらのソファー、なんとジーンズのポケット部分をリメイクし、DIYで作ったもの。

あまりにも芸術的すぎて座るのをためらってしまいますが、そこは遠慮なく座っちゃいましょう。

 

 

壁面の黒板がメニューボードになっているので、オーダーの際はここをチェックしましょう。

ちなみに黒板の上には店主が大好きなデヴィッド・ボウイのアルバムがディスプレイされており、その時々の気分で入れ替わるそうです。

 

 

アーティスト一家・寺田家の系譜が宿る場所

店主を務めるのは故・寺田健一郎氏の次男・黄太さんと奥様の美和さん。かつて様々なアーティストが集うサロンのような場であったお父様のアトリエをご夫婦で復活させ、今なお守っておられます。

 

「アトリエてらた」はその名の通り、福岡出身の画家・寺田健一郎氏のアトリエとして使われていました。

 

その作風は明るい原色がうねる生命力あふれる抽象画。博多が生んだ「九州派」に属し、1951年に二科展に初入選。1959年には二科特選を受賞されました。一時期は西南学院中学校の美術担当講師を務めていたこともあったそうです。

 

谷川雁らの文学運動“サークル村”にも参加し、食通でもあったことで、西日本新聞に連載を持つなど、随筆やテレビでも幅広く活動されました。優しくシャイでいて強じんな博多町人の代表のような人だったそうです。

 

出典:https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%AF%BA%E7%94%B0%E5%81%A5%E4%B8%80%E9%83%8E

 

写真前列右のブルーのシャツ姿の男性が生前の寺田健一郎氏。ちなみに中央左で賞状を持っている方は、日本で初めてユネスコ記憶遺産(世界の記憶)の登録を受けた炭鉱画で知られる山本作兵衛氏です。

 

健一郎氏の存命中、アトリエは芸術家や作家、俳優など、多くの文化人が集まるサロンのような存在だったそう。しかし、健一郎氏が1985年にお亡くなりになられてからは、長い間このアトリエも使われていなかったんだそうです。

 

健一郎氏には二人の息子さんがおられました。長男の太郎さんと次男の黄太さんです。

 

太郎さんは画家の父の影響を受け自らも造形作家となり、弟の黄太さんはロックバンド「ザ・ゴーグルズ」のギタリストとして活動。

 

やがて兄弟は佐賀の吉野ヶ里町に、太郎さんの工房兼ギャラリー「アンプ・ギャラリー&カフェ」をスタートさせました。

 

やがて黄太さんの妻の美和さんも加わりカフェを運営していましたが、2007年、不慮の事故で太郎さんも46歳の若さでお亡くなりになられたのです。

 

父と兄の死に直面し、憔悴していた黄太さん。しかし妻の美和さんと共に新しい夢を見つけます。

 

「かつて人々が集っていた父のアトリエを復活させたい」。

 

そんな夢を形にすべく、2011年11月にカフェ「アトリエてらた」をオープンさせたのです。

 

一角には寺田健一郎氏が生前愛用していた画材やデッサンに使用する裸婦像がそのまま展示されています。天井に届きそうなほど大きな本棚にはアートに関する書物がぎっしり。

 

寺田健一郎氏の長男・太郎さん。生前は造形作家として活動されておられました。店内でも至る所でその作品を見ることができます。

 

こちらの独創的な鉄の椅子も太郎さんの作品。ちなみに「太郎」という名前は父・健一郎さんが敬愛する「岡本太郎」氏から拝借し、名付けたんだそうです。

 

 

名物「ヤッホーカレー」と「シナモンチーズケーキ」は必食!

 

アトリエてらたの看板メニューと言えば、やっぱりこの「ヤッホーカレー(1,050円)」。ご飯の量はS(200g)・M(250g)・L(300g)から選べます。

 

他にも、ご飯370gにルーが通常の1.5倍の「大盛り(1,380円)」、ご飯130gにルーが半分の「ハーフ盛り(660円)」など様々なバリエーションでオーダーできるのが特徴です。

 

 

見た目は普通のカレーですが、実際には北インドスタイルのスパイシーチキンカレー。

鶏ガラをじっくり一晩煮込んだスープに大量のタマネギとトマト・しょうが・ニンニクで作るカレーはしっかり辛いながらも、辛さと同等のうまみが感じられる一品。この味のファンになり足繁く通う方も多いんです。

 

ヤッホーカレーは、元々吉野ヶ里の「アンプ・ギャラリー&カフェ」で提供していた看板メニュー。ネーミングの由来を尋ねたところ、「アンプ・ギャラリー&カフェ」は山の中腹にあり、山=やまびこ=ヤッホーというイメージから名付けたんだそうです。

 

 

こちらは創業当時から変わらないメニューのひとつ、シナモンチーズケーキ(550円)とコーヒー(500円)

NYチーズケーキを思わせるずっしりと重いチーズケーキの上にはシナモンがたっぷり。聞くところによると、焼く前と焼いた後の2回もシナモンをかけているそう。このスパイシーさがたまりません。

 

 

アトリエてらたは全席喫煙OK。

アーティスティックな空間の中、ラジオから流れる音楽を聞きつつ、コーヒーとタバコにどっぷりと浸れますよ。

 

 

なんと!ヤッホーカレーはハウス食品からレトルトカレーとして販売されているんです。

お店でも買えますので、お土産にぜひおひとついかがでしょうか?

 

 

アーティスト一家・寺田家の生家であり、父のアトリエでもあり、人々が集うサロンでもあった「アトリエてらた」。

 

まるで時が止まったかのような異世界をぜひ体験してみてくださいね。

 

 

アトリエてらた

住所:福岡市中央区六本松3-5-28

営業時間:昼 12:00〜15:00(LO 14:30)/ 夜 17:30〜25:00(LO 24:30)

電話番号:092-771-4445

定休日:不定休

Instagram:https://www.instagram.com/atelier.terata/

 

 

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ライター
久原茂保
2001年より福岡発のカフェ情報サイト「CAFE@TRIBE(カフェ・トライブ)」を開設。以来、20年以上に渡り福岡県を中心に数多くのカフェを訪れ、日々取材活動に励んでいる。近年はカフェアドバイザー業やカフェのリブランディング、カフェプロモーションなどカフェ業界の知見とネットワークを活かしたオンリーワンな事業を展開中。グラフィックデザインやWEBデザイン、広告コンサルも。

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