福岡映画 #05「僕達急行 A列車で行こう」 好きなものがあることがあなたを輝かす。福岡へやってきた転勤青年とその友人が繰り広げるサクセスストーリー。 

コロナ以降のこれから、自分はどう生きていくか。なんて考えるほどに不安がつのってしまう。そんな時には、どうかこの映画のことを思い出してみてください。シリアスになり過ぎたあなたをすっとぼけた可笑しみでゆるませつつ、人生を豊かにするヒントを教えてくれる。福岡映画、第5回目は天才監督・森田芳光の遺作「僕達急行 A列車で行こう」です。

「芸は身を助けるじゃないですけど…、趣味は持つものですね。」

「僕達急行 A列車で行こう」
2011年/117分
監督・脚本 森田芳光
出演 松山ケンイチ、瑛太、貫地谷しほり、ピエール瀧、村川絵梨、松平千里

あらすじ
「のぞみ地所」に勤める会社員・小町(松山ケンイチ)は、列車からの風景を見ながら音楽を聞くのが好きなマイペース青年。東京の町工場「コダマ鉄工所」の二代目である小玉(瑛太)とは、互いに異なる楽しみ方で鉄道を愛好し合う親友同士。

小町は、福岡にある九州支社への転勤を命ぜられ、のぞみ地所が工場用地開発を提案したいソニックフーズの筑後社長(ピエール瀧)を口説き落とすことに。堅物で知られる筑後社長に本社の面々が苦戦するなか、小町はすんなりその懐に入る。実は小町と小玉は鉄道ファンとして、筑後社長と意気投合した仲だった。

小町と小玉、2人の仕事と恋愛模様を折り込みながら、登場人物ひとりひとりが、それぞれ自分だけの趣味や楽しみを持っていることで豊かな人生を見つけていく、軽妙なサクセスストーリー。

「色んな考え方が、あるもんですね。」

本作をご覧いただくにあたって僕がまず何より推したいのは、「どんなにしょうもなく、他愛のないものでも良い。自分が心から夢中になれる何かを“たったひとつでも”持っていさえすれば、それだけでその人生はほとんど大丈夫」としてくれる圧倒的な“肯定感”です。

これは森田芳光監督の多岐にわたる作品群に通底する「人は誰でもひとりひとりがそれぞれに面白い」という作品哲学に他ならず、長編デビュー作「の・ようなもの」(1981)からずっと一貫したものでもあります。

この映画の登場人物たちは皆、自分にしかわからない趣味、楽しみを持っています。それは誰かから見れば自分とは異質で、理解しづらいものですらあるのですが、誰一人としてそこに文句はつけず「まぁ、それも好き好きだからなァ」くらいの態度で互いに尊重し合う。こうして他人とのあいだにまず「わかりあえなさ」を認めたうえで、わかりあえる部分を見つけられたときに、ささやかな喜びをかみしめる。この誠実でやさしい姿勢に、僕なんかはもう見ている間じゅうずっと「良いなあ。。」としみじみ多幸感を感じてしまうのでした。

加えてその「誰のためでもない」、すなわち「誰の役にも立たない」はずだった自分だけの趣味や楽しみが、ときに誰かと繋がることで、思わず仕事や恋愛を好転させる駆動力になったりする。今、どう生きていけば良いかとシリアスこじらせちゃった読者の方には、まさしくこういう場面をこそ見て欲しい。本作独特のすっとぼけた可笑しみも助けて、肩のチカラが抜けるような安心感を感じてもらえるはずです。

「福岡は飛行場が近くて良いですわねえ」「まぁ、でも…僕は博多駅を使うとります」

そして本作には、たくさんの福岡のロケーションが登場します。

主人公は不動産デベロッパー「のぞみ地所」社員という設定なだけあり、社宅がわりに案内されるのは百道浜の高級マンション(ネクサス百道レジデンシャルタワー)!劇中では室内のようすや部屋からの景色まで見られて、ちょっと得した気持ちになります。からの通勤手段は、地下鉄藤崎駅。このあたりの正確な動線設定も福岡市民としては「うん、うん、ちゃんと合うとります、合うとります」と嬉しくなります。


シーサイドももち海浜公園からネクサスタワーを見る。筆者も良く行くきもちーエリア


地下鉄藤崎駅。このあたりホントに住みやすい街なのです

また、笑わされながらもハッとする場面もあります。

全国屈指に空港と都心が近いコンパクトシティ」であることは、福岡人なら誰もが疑わず打ち出したがるこの街のセールスポイント。東京からやってきた女社長も良かれと思って「福岡は飛行場が近くて良いですわねえ」とご機嫌うかがいに切り出すも、隠れた鉄道ファンであるクライアントの筑紫社長はムスッとして「まぁでも…僕は博多駅を使うとります」と返す始末。ウーム!人それぞれの価値観を大切にする本作ならではのこの場面、福岡人には特に効いたはず。読者のサラリーマンの皆さんは、くれぐれもその福岡企業の社長さんは鉄道好きじゃないか、再確認しておきましょうね。


とはいえやっぱり便利なんですよ〜福岡空港


福岡人にはおなじみの福博であい橋も登場。瑛太くんがここにいたんだなぁ

上記にあげた以外にも、名店「BAR HIGUCHI」、JR博多駅、渡辺通、 福岡東映プラザビル、福津恋の浦ガーデンなど本当にたくさんの福岡が登場します。

下記のメイキング映像では福岡での当時の撮影の様子がご覧いただけますよ。

ということで今回ご紹介した「僕達急行 A列車で行こう」。

個人的にも見るたびに多幸感に包まれて救われた気持ちになる、本当に大好きな一本です。ぜひ、作品を見て、楽しい福岡めぐりまでセットでお楽しみください。


僕達急行 A列車で行こう
脚本・監督:森田芳光 Blu-ray&DVD発売中
発売・販売元:バンダイナムコアーツ (c)2012『僕達急行』製作委員会

今回のPick Up ロケ地はこちら

■シーサイドももち海浜公園

■福岡市営地下鉄 藤崎駅

■福博であい橋

■福岡空港

【福岡空港完全ガイド】旅も遊びも!最新施設から周辺スポットまで!福岡空港の楽しみ方 の記事はこちら

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#福岡映画
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映画ライター
三好剛平
1983年福岡生まれの文化ホリック社会人。三声舎 代表。企業や自治体の事業・広報にまつわる企画ディレクションをはじめ、映画や美術など文化系プロジェクトの企画運営を多数手がける。LOVEFMラジオ「明治産業presents: Our Culture, Our View」製作企画・出演。その他メディア出演や司会、コラム執筆も。

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