少女雑誌の投稿で誕生した石村萬盛堂の『マシュマロデー』
石村萬盛堂では1978年のマシュマロデー誕生以降、多彩な告知ポスターを製作してきた(画像提供:石村萬盛堂)
「男性からバレンタインデーのお返しがないのは不公平。ハンカチやキャンディー、せめてマシュマロでも……」。
1977年の某日、博多銘菓『鶴乃子』で知られる石村萬盛堂の石村僐悟社長は、「新商品のヒントはないか」と、少女雑誌のページをめくっていた。
すると、偶然にも女の子が投稿した一文に遭遇したのだ。
この投稿を目にした石村社長は、「男性から女性へマシュマロをお返しする日を、鶴乃子をきっかけとして作れないか?」と発想した。
そのことが、後にホワイトデーとなる国民的なイベントが誕生するきっかけだった。
当時、石村萬盛堂において『鶴乃子』の売り上げが、全体の約8割を占めており、新商品のコンセプトは「バレンタインデーに君からもらったチョコレートを、僕のやさしさ(マシュマロ)で包んでお返しするよ」に決まった。
女性社員らを集めた企画会議において、「マシュマロをお返しする日をいつにするのか?」について話し合った。
その候補日として、下記の3候補日が挙がった。
◇◇◇【マシュマロをお返しする候補日時】◇◇◇
◎バレンタインデーの日付を逆さにした【4月12日】
◎1週間後の【2月21日】
◎1カ月後の【3月14日】
上記のうち、【4月12日】については2カ月近くも空いてしまい、間延びするのではないかという懸念があった。
一方、【2月21日】についてもバレンタインデーから1週間後では、菓子メーカとして多忙過ぎてスケジュール的に厳しいのではないかと心配する声もあった。
結局、日付を決定しないまま、1977年の冬に地元百貨店である岩田屋(現三越岩田屋)」へ提案した。
すると、岩田屋側では、「催事場の閑散期である3月14日がベスト」との回答だったので、【3月14日】を記念日に決定した。
1978年3月14日、男性から女性へのバレンタインデーのお返しとして、マシュマロを贈る『マシュマロデー』が誕生した。
もっとも、当初の数年間は売上的に厳しい時期が続いたそうだ。
百貨店の提案でマシュマロデーから『ホワイトデー』へ改称
「バレンタインデーに君からもらったチョコレートを、僕のやさしさ(マシュマロ)で包んでお返しするよ」をコンセプトとするホワイトデー向け商品(画像提供:石村萬盛堂)
3月14日がマシュマロデーとして、福岡・博多で誕生した1978年、全国飴菓子工業協同組合は名古屋市で開催した総会において、『全飴協ホワイトデー委員会』を発足させた。
そして、2年後の1980年3月14日、『第1回ホワイトデー』を開催している。
「マシュマロだけでなく、もっと幅広くバレンタインデーのお返しの文化としてできないか?」
「マシュマロの〝白〟を想起させる『ホワイトデー』に名称を変更できないか?」との相談が、1980年代半ばに百貨店側から寄せられた。
この結果、マシュマロデーは、ホワイトデーという名前に変わり、お菓子業界に留まらず、その他の食品や衣料品など各業界の参入もあった。
そして今日、ホワイトデーの文化が、広く日本全国に根付いた感がある。
一般社団法人日本記念日協会では、『ホワイト・デー』の項目について、「福岡県福岡市の老舗の和洋菓子店『株式会社石村萬盛堂』が制定」と紹介している。
そして、コロナ禍前だった2019年3月8日、「2019年の『ホワイトデー』の推計市場規模は前年比約8%減の約490億円」という推計も発表していた。
参照サイト
ホワイトデー発祥の石村萬盛堂 ホワイトデーはここからはじまった
https://www.ishimura.co.jp/whiteday/birth.html
全国飴菓子工業協同組合「3月14日はキャンディーを贈る日」
https://www.candy.or.jp/whiteday/okuru.html
一般社団法人日本記念日協会「ホワイト・デー」
https://www.kinenbi.gr.jp/
一般社団法人日本記念日協会『2019年の「ホワイトデー」の推計市場規模は前年比約8%減の約490億円。』
https://www.kinenbilabo.jp/?p=746
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