【 福岡の経済・ビジネス事情 】

ビジネスイベント『MICE』で新たな飛躍を目指す福岡市。産業振興や地域活性化の〝未来航路〟へ進む

2023年5月8日、新型コロナウイルスに対する感染症法上の位置づけが従来の2類から5類へ移行しました。季節性インフルエンザと同じ分類になって今後、平時の社会システムや経済活動に戻り、ビジネス面においても活発化していくことが期待されます。今回、MICEやインバウンド分野における動向に注目していきます

戻って来た訪日外国人客、復調みせるインバウンド市場

 

【画像01】九州運輸局@全国

出典:国土交通省九州運輸局『九州への外国人入国者数の推移について』(2023年5月24日発表分)

 

昨年・202210月から始まった新型コロナ水際対策の緩和後、訪日外国人客(インバウンド)が急増中だ。日本各地の観光地においてインバウンドの姿が目立つ。

 

日本政府観光局が、517日に発表した2023年4月分(推計値)の訪日外国人客数は194万9,100 人となり、前年2022年10月の個人旅行再開以降で最高値を更新した。
そして、コロナ禍前の2019年同月比でも66.6%となる。

 

コロナ禍前の2019年当時にインバウンドのうち約3割を占め、国別で最多だった中国からの入国者が未だほぼ皆無という状況にも関わらず、わずか半年で2019年同月比で2/3まで回復したことになる。

 

このようなインバウンドの回復推移を踏まえ、コロナ禍前の2019年同月水準を上回る時期を2023年8月と予測する野村総合研究所の木内登英エグゼクティブ・エコノミストは、下記のような推計を同研究所のWebサイト内のコラムに記す。

 

「訪日外客数の予測値と20231012月期の外国人一人当たりの消費額に基づいて推計した2023年のインバウンド需要は、5兆9,458億円となった。2月時点の推計値49,580億円から大きく上方修正となった。また、これは、2023年の(名目及び実質)GDP1.07%押し上げる計算だ」

 

現状においては、概ね訪日外国人客は順調に戻って来ており、インバウンド市場は復調をみせているといえそうだ。

 

【画像02】野村総研

 

出典:コラム 木内登英のGlobal Economy & Policy Insight「中国からの入国加速で今夏にも外国人観光客数はコロナ前の水準に:2023年インバウンド需要推計は5.9兆円:供給制約解消が喫緊の課題に」(2023/04/19 野村総合研究所)

 

2023年4月、インバウンドの九州入国はコロナ禍前の3/4まで回復

 

出典:国土交通省九州運輸局『九州への外国人入国者数の推移について』(2023年5月24日発表分)

出典:国土交通省九州運輸局『九州への外国人入国者数の推移について』(2023年5月24日発表分)

 

 

日本各地でインバウンドの回復がみられる中、九州はどのような状況なのか?

 

九州運輸局が2023524日に発表した『九州への外国人入国者数の推移について』によると、同年4月における九州への外国人入国者数の速報値は23万331人だった。コロナ禍前の2019年同月比でも73.5%となっており、3/4弱まで回復している。

 

また、九州運輸局は同日、2023年2月における九州への外国人入国者数(通常入国者数+船舶観光上陸者数〈クルーズ船〉)の確定値を発表した。
2023年2月における九州への外国人入国者数の確定値は、20万1,758人だった。そして、コロナ禍前の2019年同月比でも51.8%だ。

 

通常、外国人入国者数は入国者数とクルーズ船などの船舶観光上陸者数との合算だ。201,758人という数字のうち船舶観光上陸者数は0人であり、全員が通常入国者だった。今回、統計数値を発表した九州運輸局では、次のように分析している。

 

「コロナ禍前の2019年と比較して、多くの市場で新型コロナウイルス感染拡大の影響により減少となっているが、202210月の水際措置の緩和以降、韓国市場を中心に着実に増加傾向にあり、ASEAN市場はコロナ禍前の水準を上回っている

 

出典:国土交通省九州運輸局『九州への外国人入国者数の推移について』(2023年5月24日発表分)

出典:国土交通省九州運輸局『九州への外国人入国者数の推移について』(2023年5月24日発表分)

 

 

インバウンドでのビジネス集客で注目されるMICEとは何か

インバウンド市場が回復していく中、コロナ禍前からよく耳にしていた『MICE』とは一体、どのような内容を指すビジネス用語なのだろうか?

 

昨今、注目を集めるMICEの定義について、JTB総合研究所『観光用語集』では、下記のように説明している。

 

MICEとは、Meeting(会議・研修・セミナー)、Incentive tour(報奨・招待旅行)、Convention またはConference(大会・学会・国際会議)、Exhibition(展示会)の頭文字をとった造語で、ビジネストラベルの一つの形態。参加者が多いだけでなく、一般の観光旅行に比べ消費額が大きいことなどから、MICEの誘致に力を入れる国や地域が多い日本でも、インバウンド振興策の一環として、国や自治体により誘致活動が盛んに行なわれている」

 

MICE』という名称自体も下記の頭文字の総称である。

Meeting(会議・研修・セミナー)、

Incentive tour(報奨・招待旅行)、

Convention/Congress/Conference(国際/国内団体や組織、学会等が行う非営利の会議)、

Exhibition(展示会)

 

観光庁は20184月、海外からの外国人参加者数などの基準を満たした『国際MICE』における総消費額は5,384億円、経済波及効果は1兆590億円との推計を発表した。
また、国際MICEの開催、および開催に伴う経済活動で生じた雇用創出効果は日本全体で9万6,000人分となり、税収効果は820億円と推計する。

 

国際会議件数で常に上位の福岡市は、世界水泳選手権大会を契機に更に「国際観光・MICE都市」を目指す

 

博多湾のウォーターフロント地区にあるMICE施設群

博多湾のウォーターフロント地区にあるMICE施設群

 

ポストコロナ時代を迎えてインバウンドでの回復基調がみえる中、観光立国推進基本計画を改訂した国は、〝量から質〟へ舵を切る。
九州においてもインバウンド市況が復調している中、いにしえから中国大陸や朝鮮半島との往来が活発だった福岡市は、どのような状況なのだろうか?

 

この点について、福岡市経済観光文化局観光マーケティング課の担当者は、次のように解説する。

「福岡空港および博多港からの外国人入国者数は、コロナ前の水準に戻りつつある。特に韓国からの入国者が多く、次いで台湾、香港、タイとなっている。韓国やタイについては、直近の入国者数がコロナ前より多くなっており、今後、直行便の回復などによって入国者数のさらなる増加が見込まれる

 

「さらには、旧大名小学校跡地に開業した複合ビル「福岡大名ガーデンシティ」に九州初進出となるラグジュアリーホテル「ザ・リッツ・カールトン福岡」が621日開業予定であり、今後は消費額の高い新たな客層が福岡を訪れるようになることが期待される」

 

一方、MICE分野において、福岡市は1987年に『コンベンションシティづくり構想』をいち早く打ち出した。
そして、博多湾のウォーターフロント地区にMICE受入拠点の整備に取り掛かり、マリンメッセ福岡や福岡国際センター、福岡国際会議場などのMICE施設を集積させ、2021年にはマリンメッセ福岡B館を整備している。

 

福岡市のMICE推進課の担当者は、ポストコロナにおける現在の状況について、次のように分析する。

MICE拠点にマリンメッセ福岡B館が開館し、既存施設との一体的な利用によって、展示会併設型の大規模会議など多様なニーズへの対応が図られている。コロナ禍においては、関連事業者の事業継続を図るため、MICEのハイブリッド開催への支援を行ってきたが、現在は、外国人参加者が会場参加する国際会議の開催も回復してきている」

 

その上で、今後の取り組みについては、次のように意気込みを語っている。

 

「今年7月、8月に開催される世界水泳選手権大会は、アフターコロナにおける最大級の国際スポーツ大会であり、国内外から多くの来訪客を見込んでいる。来福される方々へ福岡市の伝統文化や観光の魅力の発信や、多様な食文化に対応するおもてなし店舗など受入環境のさらなる拡充によって来訪者の回遊促進や消費の拡大を促すなど、地域経済の活性化を図るとともに、都市の知名度向上に取り組み、『国際観光・MICE都市』としての目的地になることを目指していきたい」

 

 

実はビジネスイベントで天神が誕生し、福岡市が成長した

 

出典:福岡県立図書館所蔵『絵葉書で見る福岡百景』(九州共進会:大仏及び正門)(福岡県立図書館デジタルライブラリより)

出典:福岡県立図書館所蔵『絵葉書で見る福岡百景』(九州共進会:大仏及び正門)(福岡県立図書館デジタルライブラリより)

 

古来、国内外との人流・商流で栄えてきた福岡・博多の歴史を振り返ってみると、20世紀においては大規模なビジネスイベントを契機に飛躍してきた歴史を持つ。

 

1910年3月に開幕した『第13回九州沖縄八県連合共進会』は、最新技術や産業・物産を紹介する巨大な展示館に加え、五重塔を模した展望閣や博多大仏、さらに初の国産観覧車の登場などで大いに話題を集めた。

 

開催に際して当時、因幡町南側にあった肥前堀を埋め立て、さらに周辺の湿地や遊休地も会場用地として造成した。
そして、10万平方メートルもの広大な敷地が、現在の天神1丁目から2丁目に誕生したのだ。つまり、共進会開催を契機に〝天神誕生〟をもたらし、福岡市の発展や近代化を大きく貢献していくことになる。

 

1927年3月、西公園下の大堀埋立地(現在の大濠公園西側)で東亜勧業博覧会が開幕した。
60日間の会期に159万人もの人々が押し掛けた博覧会に合わせて当時の九州水力電気は市内線を延伸させ、同じく東邦電力は市内線の電車通り(博多駅~天神町)に街路灯を初設置した。
その後、天神町交差点に九州初の信号機も登場した。

 

1989年3月、福岡市の市制施行100周年を記念して『アジア太平洋博覧会-福岡’89(よかトピア)が開催した。
国内から1,056企業・団体、国外から37カ国・地域と2国際機関が出展してパビリオン43館を設置した会場に823万人もの観客が詰め掛けた。
アジアおよび太平洋地域をテーマとした博覧会開催を契機に福岡市は、〝アジアの交流拠点都市〟路線へ踏み出していく。

 

110年余り前のビジネスイベントで天神が誕生した。
そして、福岡市自体もこれらのビジネスイベントを成長エンジンに都市としての成長してきた歴史がある。

 

 

新たなMICE振興が福岡市の新たな未来航路を切り拓く

中村学園大学流通科学部の前嶋了二准教授

中村学園大学流通科学部の前嶋了二准教授

 

コロナ禍明けによって、人々のライフスタイルや地域社会での営み、さらにグローバル経済の動向においても新たなステージへの潮流がみられる。
そして、ヒト、カネ、ビジネス自体も大きく変わろうとしている。

 

福岡市は、日本政府観光局(JNTO)の国際会議統計で2009年から8年連続で東京に次ぐ第2位だった。
そして、福岡市は2013年6月、観光庁のグローバルMICE戦略都市に認定された。
福岡市は20144月、全国に先駆けてMICEの誘致~開催を一括支援する専門部門『Meeting Place Fukuoka』(MPF)を発足させて、2016年には過去最多となる383件の国際会議を開催した。
しかし、福岡市は翌2017年、神戸市と京都市に抜かれて以降、第4位となっている。

 

このような状況下、福岡市は今後、MICEを〝武器〟にして何をすべきだろうか?

JTB勤務時代に福岡地域戦略推進協議会の観光部会『MICEワーキンググループ』のチーフとしてMPFを立ち上げた、中村学園大学流通科学部の前嶋了二准教授は、次のような見解を示す。

 

「当初の『国際会議開催件数で第2位』はブランド戦略の一環であり、数字の維持については難しい面もありました。現段階では、開催順位という〝数字〟よりも、MICEによるイノベーションの誘発や成長産業の育成などの成果である〝レガシー〟が大事です」

 

「レガシーやイノベーションの発生事例を明らかにし、市場にアピールすることが必要です。特にスマートテクノロジー、再生可能エネルギー、食、メディカルサイエンス、コンテンツ産業、スポーツなど福岡を中心とした九州の成長産業に関するレガシーを可視化することは、今後、国際会議を活用した福岡地域の持続的経済発展には重要です」

 

国際会議を契機としたイノベーションの事例としては、九大発の宇宙ベンチャー QPS研究所による小型SAR衛星があります。これは2005年に福岡で開催された国際宇宙会議(IAC)を機に、北部九州の地場企業と九州大学とが結集して生み出したもので、現在、世界から注目を集めています」

 

「現状、『起業特区』政策によってスタートアップに関する支援体制が整えられている福岡市には、優秀な若者らが集まって来て、自発的にスモールMICEを開催して、大いに盛り上がっています。今後、これらの取り組みも生かしていきながら、MICEを切り口に国際化やビジネス化をいかに実現していくかという点が評価されていくのではないでしょうか」 

 

コロナ禍明けという〝天〟の時を迎えた福岡市は古来、国内外との往来や交流で栄えてきた〝地〟の利を有する。
今後、MICEを切り口に福岡・博多のDNAともいえる産学官での〝人〟の和を通じて、産業振興や地域活性化へいかにつなげていくか。
いま、まさに福岡市の真価そのものが、問われているといえそうだ。

 

参照サイト

『訪日外客数(2023 4月推計値)』◇4月︓1,949,100人、200万人に迫る(2023 5 17⽇発表)
https://www.jnto.go.jp/news/20230517_monthly.pdf

 

野村総合研究所『コラム 木内登英のGlobal Economy & Policy Insight「中国からの入国加速で今夏にも外国人観光客数はコロナ前の水準に:2023年インバウンド需要推計は5.9兆円:供給制約解消が喫緊の課題に」』
https://www.nri.com/jp/knowledge/blog/lst/2023/fis/kiuchi/0419_2

 

国土交通省九州運輸局『九州への外国人入国者数の推移について』(2023425日発表分)
https://wwwtb.mlit.go.jp/kyushu/content/000295956.pdf

 

『観光立国推進基本計画』
https://www.mlit.go.jp/common/001299664.pdf

 

観光庁 国際観光部 MICE室『MICEの意義』(20234月)
https://www.mlit.go.jp/kankocho/shisaku/kokusai/content/001604251.pdf

 

観光庁「我が国の国際MICE全体による経済波及効果は約1兆円!」(2018年4月18日)
https://www.mlit.go.jp/common/001231979.pdf

 

統計で見る日本:法務省『出入国管理統計』
https://www.e-stat.go.jp/stat-search/files?page=1&layout=datalist&toukei=00250011&tstat=000001012480&cycle=1&year=20230&month=11010302&tclass1=000001012481

 

九州運輸局 『九州への外国人入国者数の推移について』
https://wwwtb.mlit.go.jp/kyushu/press/00001_00710.html

 

西日本鉄道創立110周年記念誌『まちとともに、新たな時代へ』第1部 天神発展史 第1章戦前、戦後の天神と西鉄(1868年~1955年)
https://www.nnr.co.jp/110th_history/pdf/02.pdf

 

日本政府観光局「2019 JNTO 国際会議統計を発表~参加者数は過去最多水準を記録、開催件数は 8 年連続で過去最高~」
https://www.jnto.go.jp/news/20201127.pdf

 

観光庁Webサイト
https://www.mlit.go.jp/kankocho/index.html

 

「福岡市の観光・MICE2022年版(福岡市観光統計)
https://www.city.fukuoka.lg.jp/data/open/cnt/3/96122/1/kankoutoukei2022.pdf?20220721162621

 

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編集者兼ライター
近藤 益弘
1966年、八女市生まれ。福大卒。地域経済誌『ふくおか経済』を経て、ビジネス情報誌『フォー・ネット』編集・発行のフォーネット社設立に参画。その後、ビジネス誌『東経ビジネス』、パブリック・アクセス誌『フォーラム福岡』の編集・制作に携わる。現在、『ふくおか人物図鑑』サイトを開設・運営する。

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