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学生のまち・福岡は都市圏15大学の産学官スクラムで地域活性化を図る

いま、大学の存在が、〝地域資源〟の一つとして注目されています。今回、福岡市および都市圏の15大学と自治体、経済団体との産学官連携による教育と地域の活性化に向けた取り組みについて注目していきます。 そして、産学官でのスクラムによって今後、どのようなトライをしていくのでしょうか。

日本の大学数、学生数をご存じですか?

日本にある大学数は807校、その在学者は293万人強━━━。
文部科学省総合教育政策局は2022年 12 月21日、『令和4年度学校基本調査』(確定値)を発表した。
同調査によると、2022年5月1日時点において、日本全国に807校の大学がある
その内訳は国立大学86校、公立大学101校、私立大学620校だ。

文部科学省『学校基本調査』

一方、在学者数は 293万780人となっている。
このうち国立大学59万6,195 人、公立大学16万3,103人、私立大学217万1,482人という内訳になっていた。
ちなみに293万人強という人数は、日本で第3位の都市である大阪市の人口275万人強(2020年国勢調査)よりも6%強も多い

文部科学省『学校基本調査』

 

1949年時点での福岡市の新制大学は九大、西南、福大の3校

文部科学省が1948年から毎年、発表している『学校基本調査』とは、「学校に関する基本的事項を調査し,学校教育行政上の基礎資料を得ることを目的とする」(文部科学省)調査だ。
初年度の1948年は、戦後の学制改革で新たに学校教育法を制定したものの、旧制大学などから新制大学への本格的な制度移行前だった。このため、1948年時点における大学数は、国立大学0校、公立大学1校、私立大学11校の計12校で、在学者数は約1万人となっている。
翌1949年の学制改革で国立大学70校、公立大学17校、私立大学81校の計168校を設置して在学者は22万人だった。

1949年の学制改革において福岡市では、旧制の九州帝国大学、同学附属医学専門部、同学附属工業専門部、福岡高校、久留米工専を統合して、新制の九州大学が発足した。
同じく旧制の西南学院専門学校を母体にして新制の西南学院大学が設立している。
また、旧制の福岡経済専門学校が同福岡外事専門学校を統合して、新制の福岡商科大学(現福岡大学)が誕生した。
つまり、新制大学へ本格移行した1949年時点における福岡市に立地していた大学は、九州大学、西南学院大学、福岡大学の3校だった。

現在は福岡市の14大学に7.3万人が通って人口比で大都市4位

戦後、日本経済の飛躍的な発展に歩調を合わせるように日本の大学数も大幅に増えた。
福岡市内でも同様に大学新設や短大改組などで大学数が増えた結果、『令和4年度学校基本調査』(確定値)によると、国立大学1校、公立大学1校、私立大学12校の計14校を数える。。
そして、これらの大学には、7万2,591人の在学者(サイバー大学除く)が通う。

福岡市における大学在学者の都市人口に占める割合は、4.50%となっている。
この数字は、第1位である10.13%の京都市、第2位となる5.70%の東京都区部、そして4.52%で第3位の名古屋市を僅差で追う第4位のパーセンテージだ。
学校基本調査の対象である14大学に日本初の完全インターネットによる通信制大学のサイバー大学を加えると、福岡市内の大学数は15大学となる。


1.「学校数」については,大学本部の所在地による。
2.「学生数」については,在籍する学部・研究科等の所在地による。なお,学生数には学部学生のほか大学院,専攻科及び別科の学生並びに科目等履修生等を含む。
3 所在地が外国の学部・研究科はない。

出所)文部科学省『学校基本調査』(2022年度)、2020年国勢調査(確定値)

 

【問】なぜ、福岡市は、大学に在籍する若者らの割合の多い都市になったのか?

福岡大学社会連携センターで地域連携コーディネーターを務める山田雄三助教

上記の問いに対して、福岡大学社会連携センターにおいて地域連携コーディネーターを務める山田雄三助教は、次のような見解を述べる。

「福岡市および都市圏において学生が多い要因の一つとして、後背地にあたる九州7県の人口が約1,300万人と多いという点も挙げられます。福岡市内には比較的規模の大きい大学も多く、福岡県内をはじめ九州各地から若者らが進学して来ます」

「住みやすさに定評があり、物価も安く、さらに交通アクセスでも便利な福岡市は、シティーブランドの高さも相まって、若者らが集まって来ているのではないでしょうか」

激戦を制した九大誘致の成功が〝大学のまち・福岡〟の萌芽

画像提供:福岡未来創造プラットフォーム

今日、福岡市内に立地する15大学のうち、最も古い大学は、九州帝国大学などを前身とする九州大学だ。
九大が福岡市に誕生したことが、〝大学のまち・福岡〟を育むき っかけになったと指摘する専門家もいる。

1900 年の帝国議会において、九州に総合大学の一分科となる医科大学を開設することを決定した。
すると、当時九州最大の都市だった長崎、九州の中枢都市として国や軍の機関が集積していた熊本、そして福岡が誘致に名乗りを上げた。
長崎、熊本、福岡の3県による壮絶な誘致合戦で最初に脱落したのは長崎だった。
そして、熊本と福岡との激しい一騎打ちの末、京都帝国大学福岡医科大学の設立が1903年3月に決定した。
福岡における官民一体の誘致活動が、功を奏したのだ。九州帝国大学の誕生以降、福岡市での学校設立が活発化していく。

戦後の学制改革を迎えて 1949年、新制の九州大学、西南学院大学、福岡大学が誕生した。
その後、中村学園大学、九州産業大学、福岡女学院大学など各校が相次いで誕生した。
そして、今日の〝大学のまち・福岡〟へ至っている。
もしも明治期、九州帝国大学の誕生が福岡でなく、熊本、あるいは長崎だった場合、現在の九州の姿と大きく異なった状況になっていたことは想像にかたくない。

福岡都市圏の15大学と自治体、産業界で産学官連携組織

画像提供:福岡未来創造プラットフォーム

「大学・自治体・産業界が連携、福岡における教育と地域全体の活性化を実現します」━━。
2019年5月、福岡都市圏の15大学と福岡市、福岡商工会議所、福岡県中小企業経営者協会による産学官の連携組織として『福岡未来創造プラットフォーム』が正式に発足した。
福岡未来創造プラットフォームは、2009年に設立した『大学ネットワークふくおか』を発展的に解消させてのスタートだった。

福岡未来創造プラットフォームを立ち上げた福岡大学の山田助教は、次のように解説する。
「従来の行政が主体だった取り組みでは、単位互換制度や共同企画の実施など部分的な連携にとどまっていました。福岡未来創造プラットフォームでは、大学が中心になって街を引っ張っていき、地域が活性化して発展していくことを目指しています」
「一連の取り組みを通じて、大学が地域の未来を考えるようになり、自治体や産業界も大学のあり方を一緒に考えるようになっています。そして、自らの地域の活性化に向けて、産学官で一緒に行動するようになりました。つまり、従来の大学間連携や産学官連携から新しいステージに入っているといえます」

福岡市を中心とする高等教育の振興と地域社会の活性化を目指して、福岡都市圏の大学・自治体・産業界で組織する福岡未来創造プラットフォームでは、目標達成に向けて5つの作業部会を立ち上げて活動している。

出所)福岡未来創造プラットフォーム資料

 

大学を〝地域資源〟に都市間競争や地域間競争に勝ち抜く 

2000年代に入って〝大学全入〟時代が騒がれ始めた頃から、大学では教育と研究に加えて、社会貢献も自らの役割として打ち出すようになった。
そして、学外へ飛び出して、地域にも飛び込むようになってきた。
当初、技術分野がメインだった産学連携においても昨今、文系学生らも含めて企業や商店街などの産業界の現場で学びの機会を得るようになった。
今日では、自治体においても大学の存在に着目して、大学誘致や私大の公設化にも乗り出す動きもみられる。

昨今、都市間競争や地域間競争が激しさを増す中、地域資源の一つとして大学の存在が注目されて、日本各地で産学官によるコンソーシアムを組む動きがみられる。
福岡市および都市圏は、住みやすさに定評があり、食もおいしく自然も豊かな上に地域経済の活力面でも評価を得ている。
今後、大学連合を核とした産学官の取り組みを通じて、地域の魅力をさらに高めていくことが求められるものと考える。

参照サイト

『日本の統計2022』(総務省統計局)第25章 教育25- 2都道府県別学校数,教員数と在学者数
https://www.stat.go.jp/data/nihon/25.html
福岡未来創造プラットフォーム
https://www.fuk-miraipf.net/
福岡学校ものがたり関連年表
http://museum.city.fukuoka.jp/archives/leaflet/455/pdf/nenpyou.pdf

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編集者兼ライター
近藤 益弘
1966年、八女市生まれ。福大卒。地域経済誌『ふくおか経済』を経て、ビジネス情報誌『フォー・ネット』編集・発行のフォーネット社設立に参画。その後、ビジネス誌『東経ビジネス』、パブリック・アクセス誌『フォーラム福岡』の編集・制作に携わる。現在、『ふくおか人物図鑑』サイトを開設・運営する。

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