【特集】「福岡」の飲食業のこれから

『幸せを一杯に。』の思いを体現し、「九州の資(すけ)さん」から「世界で愛される資(すけ)さん」へ

北九州市民のソウルフード『資(すけ)さんうどん』。2010年に福岡地区へ進出し、以来、福岡県内を中心に着実に店舗網を広げました。2018年3月、佐藤崇史社長が着任したのを機に、第2創業期を迎え、理念経営の実践とともに「世界で愛される資さん」への展開を加速する同社の躍進の秘密に迫ります。

「北九州の資さん」から「九州の資さん」へと飛躍する

創業者の故・大西章資(しょうじ)氏が北九州市戸畑区で友人のうどん店を継承して50年、『資さん』の屋号を掲げて45年が経った。北九州市民のソウルフードとして根づいたその味で、今年10月には、57店舗目として熊本市中心部に「下通店」が、58店舗目として宮崎県初出店となる「都城川東店」がオープンした。

佐藤崇史社長の就任以来、3年半で一気に19店舗増えた。来春以降の新店舗計画も着実に進み、北九州のソウルフードは今や「九州の資さん」として広く認知されるようになった。
 

一番人気の『肉ごぼ天うどん』。100以上のメニューが子どもから高齢者まで幅広い世代に支持されている。
  
佐藤社長

創業者の大西が逝去していったん止まっていた時計の針が、再び動き始めた感覚です。大西がしっかりと築いてきた〝皆さまに愛される資さん〟としての価値が、背中を押してくれました。
とは言え、店舗数を競うのではなく、1店1店が〝地域一番店〟として地域の皆さまに愛され続ける存在となることが最優先課題だと思っています。


 
広島出身の佐藤社長は、大学卒業後にソニーを経て、ボストン・コンサルティング・グループでコンサルティング業務に従事し、その後ファーストリテイリング(ユニクロ)で要職を歴任した。そして2017年の秋、株式会社資さんの株式を保有することになった投資ファンドから社長就任を打診される。

佐藤社長には、その5年ほど前、北九州出張時に知人の強い勧めで「資さん」を訪れ「こんなに旨いうどんがあったのか」と驚いた経験があった。打診されたその日にチケットを手配して、週末には北九州市内の「資さん」7-8店を回り、うどんや丼物、おでんのほか、同店名物の「ぼた餅」などを食べ歩いた。

「やはり旨い、変わらず、間違いない美味しさだ。でもこの5年間、自分はこの美味しさを忘れていた。もったいないことをした。もっと多くの人にこの美味しさを知ってほしい」。そう確信し、社長就任を快諾した。
 
 

「資さん」のDNAを、経営理念『幸せを一杯に。』に託して

就任後にまず行ったのは、従業員一人ひとりの話を聞くことだった。最初の3カ月はとにかく現場に足を運び、話を聞くことに集中した。対話を通じて、取り組まなければならないと考えたのは、経営理念の策定であった。その必要性を、経営幹部や店長たちと話す中でひしひしと感じたからだ。佐藤社長が就任したのは、創業者が亡くなって約3年が経った頃であった。
 
佐藤社長

かつては大西自身が経営理念であり創業の精神でした。従業員は大西の言動を見て、感じて、行動すれば良かった。しかし、大西がいなくなって時間が経つにつれ、会社が大切にすべきこと、めざすべきことなどの解釈が人によって違い始めていた。
また、大西を知らない従業員が増え、「資さんうどん」を知らないエリアに新店舗が広がる中で、もう一度、創業の精神に立ち返り「資さん」のDNAを言語化する必要性を感じたのです。


 
佐藤社長を中心に、経営幹部や部長、店長までさまざまなメンバーが徹底的に話し合い、半年以上の議論を重ね、資さんの使命として『幸せを一杯に。』を掲げることにした。
 

<資さんの使命>

『幸せを一杯に。』
いつの時代も、どんな場所でも「最高の一杯」をお届けし、一杯を通じて幸せを分かち合います。
 

<資さんが目指すこと>

資さんの伝統をさらに進化させ、常に本物の美味しさへの挑戦を続けます。
「この街に資さんがあってよかった!」と、すべての地域に元気とぬくもりをお届けします。
 

<資さん 私たちの3つの約束>

■味と品質にこだわり、すべてのお客さまに満足いただける一杯をお届けします。
■気持ちの良い接客と心地よい雰囲気で、いつでもホッと安らげるお店をつくります。
■互いに尊敬し合い、相手を思いやることで、安心して働ける職場をつくります。
  
佐藤社長

私自身、大西とは面識がありません。それでも、彼とともに時を過ごしてきたメンバーが語る想い出やその足跡を知る中で、大西が〝人を喜ばせる天才〟であったことがよくわかった。
人を喜ばせることこそ、「資さん」のDNA。それを言語化したことであらためて羅針盤ができ、みんなが安心して前へ進めるようになったのです。


 
『幸せを一杯に。』という言葉<経営理念>を通じて、従業員の心があらためてつながった。あとは一人ひとりが輝くだけだ。
 
 

次なる一手は、人材育成企業としての土台作りにある

経営理念の確立、積極的な店舗展開とともに、同社が目下、最重要経営課題として取り組んでいるのが、人材教育である。『資さん大学』と銘打った教育カリキュラムを立ち上げ、まずは現場でリーダーシップを指揮するエリア長、そして店長への教育から着手している。
 
佐藤社長

私は常日頃から、エリア長にはエリアの経営者に、店長には真の商売人に、従業員さんにはもっと一人ひとりが輝いて欲しいと伝えています。
そのために必要な考え方や判断基準を学ぶ場が『資さん大学』です。


 
前述した通り、経営理念『幸せを一杯に。』に表された「資さん」のDNAを体現することが、全従業員共通のベクトルである。すでに熊本、佐賀、宮崎など「資さん」になじみがなかった県への出店が続き、今後も未知のエリアへ店舗が拡大する。現地採用の従業員が「資さん」の味とサービスを100%体現する上で、創業の精神を言語化した経営理念とともに、これを体系化した教育プログラムが不可欠になる。

『資さん大学』では、主に佐藤社長や経営幹部が講師となり、経営、商売、仕事などをテーマに講義を進め、経営者目線での考え方を養っている。

また来春には、これからの成長を見据えた戦略的な採用計画に基づいて、大卒新卒者1期生が入社する。併せて、これまで以上にあらゆる業種業態からの中途採用を積極的に推進し、人材の厚みを強化したいと考えているという。
 
コロナ禍は飲食業界に大きな影響をもたらした。同社においてもテイクアウトや宅配が大幅に増えた。緊急事態宣言やまん延防止等重点措置の解除後は、来店客は着実に戻りつつあるが、テイクアウトや宅配の数は減っていない。これは、人々の行動様式がコロナ禍を機に変わったことを意味している。

当然ながら、お客さまの満足度を向上させながらも従業員の負担増にならないよう、設備や役割分担を含めたオペレーションを進化させていくことが必要となるなど、新たな取り組むべき課題が浮き彫りになった。
 
佐藤社長

お客さまが何を期待しているのかキャッチするアンテナを、常に高い感度で張り続ける必要があります
過渡期を迎えた飲食業界にあって、「自社が提供する価値は何なのか」、立ち位置をはっきりさせ、全力で価値提供に注力する。そのためには根幹となる軸を一人ひとりの中に確立し、自ら考え判断し行動することが重要になってきます。だからこそ、人材教育は重要な意味を持っているのです。


 
 

「社内報」から「ファンブック」まで、〝人〟とのつながりを深める

 「資さんうどん」の強みは〝人〟と、佐藤社長はくり返す。その〝人〟とは、「資さん」に愛着を持って働く従業員、そして、「資さん」をこよなく愛する多くのファンの存在と語る。

聞けば、熱烈なファンは店舗で食事をすることを「資る(すける)」と言い、朝から食事をすれば「朝資(あさすけ)」、アルコールを飲めば「資飲み(すけのみ)」と言うらしい。エコバックや丼、マグカップなどの資さんグッズは大人気で、感謝祭などさまざまな企画も毎回好評だ。キッチンカーによる未出店エリアやイベントでの出張販売や、児童養護施設へのうどん等の無償提供も話題を集めている。

今年7月に発行したファンブック『SUKESAN BOOK』には資さんに関するあらゆる情報が網羅され、新たなファンの開拓につながった。人気の地元土産品とのコラボ商品を発売するなど、同社のフットワークの軽さと発信力は各方面から注目されている。


北九州のソウルフード「資さんうどん」と福岡⼟産の定番「めんべい」がコラボレーションした「資さんめんべい」。感謝祭の賞品としてだけでなく、JR小倉駅等のお土産売場、資さんうどん3店舗で販売中。


資さんオリジナルのエコバッグ。感謝祭の抽選で手に入るとあって、熱烈な資さんファンが連日来店した。

 
人気タウン情報誌を手がける制作会社から発行したファンブックには、トリビア的ネタが満載。これを読めば、資さんうどんに立ち寄らずにはいられない。
 
佐藤社長

こうした取り組みはすべて「資さんファンに喜んでほしい」という思いが原点です。私たち資さんは、従業員の愛、お客さまからの愛など〝人〟の愛に支えられてきたからこそ今日があるのです。それはすべて〝人を喜ばせる天才〟であった創業者の大西が築き上げた価値です。
大西が築いた「資さん」のDNAを進化させ、次へとつなげ、今後の100年企業に向けた基盤を構築するのが私の役割。その先に「世界で愛される資さん」という未来があると思っています。


 
現在、同社には社内報が2つある。佐藤社長が全社員に向けて毎週メールで発信するメッセージ『幸せいっぱい便り』と、全従業員や取引先に向けて季節ごとに発行する紙の社内報『つながる』だ。このように、対外的な発信とともに社内に向けた発信も丁寧に行っている。

経営理念の確立、積極的な店舗展開、きめ細かな人材育成、そして社内外への丁寧かつユニークな発信。第2創業期の先にどんな未来が待っているのか、同社の歩みから目が離せない。
 

ファンが待つ未出店エリアやイベント会場、児童養護施設など、さまざまな人々のもとへ〝幸せの一杯〟を届けるキッチンカー。ますます出番が増えそうだ。
 
<企業情報> 
 株式会社 資さん
https://www.sukesanudon.com
■設立/1980年12月
■住所/福岡県北九州市小倉南区上葛原2-18-50
■電話/093-932-4757
 

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ライター
森 熊太郎
1965年、福岡市生まれ。西南学院大学卒業後、人事系広告代理店で採用広告・企業PR・教育研修分野の営業・制作を担当。その後、地場の複合業態グループで経営企画・採用・社内教育・事業開発・合併業務・製造部門の事業管理に従事し、独立。パラレルワーカーとしてライターの他、自然療法/びわ温きゅう師の顔も持つ。モットーは〝おおむねごきげん〟。

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