「暗号資産(仮想通貨)」を下支える技術基盤「ブロックチェーン」で、成長目指す福岡の取り組み 

かつて「仮想通貨」と呼ばれていた、ビットコインに代表されるインターネット上での財産的価値は、2019年5月の法改正で「暗号資産」と呼称を変更しましたが、この「暗号資産」を下支えする技術基盤である「ブロックチェーン」には、急成長が期待されています。この分野における福岡の強みや可能性を考えてみます。

ブロックチェーンとは】
インターネット上にある分散型〝台帳〟といえる。改ざんできない仕組みになっており、みんなで管理しているのでフェアなやり取りが可能となる。「ブロックチェーン」によるアプリケーションの一つが、「暗号資産(仮想通貨)」であるビットコインなのだ。
  

福岡の新たな成長産業の柱として、ブロックチェーン分野に注目が集まる

 
福岡県では、ポストコロナ時代を見据えた新たな成長産業の柱として、「宇宙」「バイオ」と共に、「ブロックチェーン」を掲げている。
 
「2021年度当初予算」においては、宇宙分野へのビジネス展開支援(3,000万円)、バイオ産業の拠点化推進(1億7,100万円)と共に、ブロックチェーン技術を活用した製品・サービスの開発支援に対して、1,400万円の予算処置を講じているのだ。
 
そもそも、ブロックチェーンは、「暗号資産」であるビットコインの取引データを管理し合う技術として登場している。
 
ビットコインの場合、取引履歴は生成されたブロック(台帳)に記録されてチェーン状に連なりながら、コンピュータネットワーク上で分散保存されている。このため、〝分散型台帳〟とも呼ばれ、一度記録されたデータを書き換えることは、実質的に不可能とされている。
 
ブロックチェーンの技術は、インターネット上において高いセキュリティー性のほか、透明性や安価な運用コストなどの特徴を持ち、幅広い分野への応用が期待されているのだ。
 
 

インターネットに次ぐ「革新的な技術」ブロックチェーンの秘めたる可能性とは

 
 事実、NTTデータによるMaaS(統合的交通サービス提供)への採用をはじめ ウォルマートでの生鮮食品衛生管理、デンソーの自動運転時のセキュリティー確保、ソニーにおける著作権管理、マスターカードの自動決済システムへの導入など、実証実験や試験運用が世界の各分野で始まっている。
 
ブロックチェーンは、「インターネットに次ぐ革新的な技術」とも言われており、AI、IoT、ロボット、ビッグデータと共に第4次産業革命を支えるデジタル技術と評価する声もある。
 
福岡市を拠点に、ブロックチェーンの技術開発を手掛ける合同会社暗号屋代表社員の紫竹佑騎さんは、次のように語る。
 
紫竹さん

広義の「暗号資産」とは、いわゆる仮想通貨をはじめ、デジタル証券やNFT(デジタル上で所有を証明できる代替不可能なトークン)などのデジタル資産の総称です。
これらのデジタル資産は、「ブロックチェーン」と呼ばれる暗号技術を用い、世界中で分散管理されています。この「ブロックチェーン」は、データの破壊や改ざんなどの不正が生じないように管理・保護されているものであり、かつ世界に一つしかないインターネット上のデータベース、またはOS(基本ソフト)でもあります。だからこそ、いまその可能性に注目が集まっているのです。


 
大学で情報工学を学び、大学院で情報学を専攻した紫竹さんは2010年4月、インターネット関連事業を展開する株式会社サイバーエージェントにエンジニアとして入社。多岐にわたるキャリアを積む中で、インターネットよりも面白いモノとして目を付けたのが、ブロックチェーンだった。

ブロックチェーンで最先端のビジネスができる。それは、かつてのインターネット勃興期にも似ている」と確信し、福岡市を拠点に発足した暗号資産取引所が、2017年9月にシステムを全面刷新し生まれ変わった際に、CTO(最高技術責任者)として福岡へ赴任し、その後自ら起業している。
 
紫竹さん

ブロックチェーンは今後、企業間におけるデータや情報をやりとりする際のコミュニケーション基盤、つまり共通言語にもなり得ます
ブロックチェーンを用いてフェアなやり取りができ、信用性も高いので、データをやりとりするDX(デジタルトランスフォーメーション)にも応用しやすいのです。


 

出所)経済産業省商務情報局情報経済課『平成27年度 我が国経済社会の情報化・サービス化に係る基盤整備報告書概要資料』

急成長が期待されるブロックチェーン分野は、人的な繋がり強い福岡に、勝機アリ!

 
福岡県としては、以前からプログラミング言語である「Ruby」を核としたプラットフォームづくりに取り組んできた。そして、Ruby技術者らを核にエンジニアやクリエーター、デザイナーらを数多く輩出してきた実績も生かしながら、ブロックチェーン分野への県内IT企業の参入や関連企業の集積を目指しているのだ。
 
県内では、九州工業大学や近畿大学がキャンパスを構える飯塚市が、2019年から「ブロックチェーンストリート」プロジェクトを立ち上げ、産学官連携によるブロックチェーン情報や技術の集積地づくりに向けた取り組みをスタートさせている。
 
また福岡市を拠点とするスタートアップ企業17社は、2018年7月、「福岡ブロックチェーンコンソーシアム」を立ち上げ、天神地区でブロックチェーンを活用したプロジェクトを推進している。さらに2020年4月には、福岡県が産学官による研究会「福岡県ブロックチェーン研究会」を、福岡県Ruby・コンテンツビジネス振興会議内に発足させている。
 
今年度初めて予算化した福岡県だが、ブロックチェーン技術に関しては、実現可能性調査や製品開発、社会実装・実証実験という各段階に応じた開発補助金に加えて、専門家によるアドバイスなどの支援を打ち出す。このほか、ブロックチェーン関連製品・サービスの展示会への出展支援にも取り組んでいる。
 
2021年7月には、紫竹さんの合同会社暗号屋もまた、 福岡県が推進するブロックチェーン補助金「福岡県先端情報技術開発・実証支援事業補助金」において補助事業者に採択されている。
 
紫竹さん

新しい挑戦や取り組みを受け入れてくれる福岡の風土や環境、気質などは、本当に素晴らしいと思います。スタートアップ企業の応援に熱心な福岡県や福岡市が、社会実験をはじめとした新しいことに挑戦していく際にしっかりとサポートしてくれることには、心強さを感じています。
IoT(モノのインターネット)によるビッグデータなどを用いたブロックチェーン技術の実証実験をやるフィールドとしても、大変魅力的ではないでしょうか。


 
福岡にはその強みの一つとして、人的なつながりが挙げられる。《友だちの友だちは共通の知人》という〝チェーン〟のようなつながりもあって、「福岡で悪いことができない」という点では、ブロックチェーン的な土壌にあるという見方もできる。
 
福岡が、〝ブロックチェーン〟的な人間関係を生かしながら、新たな成長産業を創出していく今後には、大いに期待が持てそうだ。

<参照サイト>
ビットコインが使える日本国内のお店(ビットコイン決済対応店舗)

経済産業省商務情報政策局情報経済課『平成27年度 我が国経済社会の情報化・サービス化に係る基盤整備(ブロックチェーン技術を利用したサービスに関する国内外動向調査)報告書概要資料』

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編集者兼ライター
近藤 益弘
1966年、八女市生まれ。福大卒。地域経済誌『ふくおか経済』を経て、ビジネス情報誌『フォー・ネット』編集・発行のフォーネット社設立に参画。その後、ビジネス誌『東経ビジネス』、パブリック・アクセス誌『フォーラム福岡』の編集・制作に携わる。現在、『ふくおか人物図鑑』サイトを開設・運営する。

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