福岡成長の鍵を握る福岡女子たち ~えっ、福岡にいたら結婚できないの?!~

「男子、どこにいる?」―今に限らず、福岡女子からよく耳にする言葉です。福岡市の女性の未婚率の高さは全国トップクラスとも言われています。理由の一つは、大学。短大や大学で九州中から学生が福岡都市圏に集まり、男子学生の多くが東京へ、女子は地元に帰らず福岡に留まります。しかし、その福岡に残った女性たちこそが、今日の発展を遂げる福岡の鍵となったといっても過言ではありません。女性の多さがこそが福岡のまちづくりのパワーの源なのです。

「まち」をつくるのは、そこに集う「人」

みなさん、こんにちは。村山由香里です。

最近、福岡が注目を浴びていますね。食べ物が美味しい。空港までが近い。起業に行政の支援があつい。

「福岡が元気」「福岡がおもしろい」の理由はいろいろあると思いますが、私は「人」、とりわけ「女性」に注目しています。

「場」をつくるのは「人」。どんな人がそこにいるかで空気が変わります。近代的な建物があっても、機能的な都市でも、「まち」をつくるのはそこに集う「人」です。

ファッション、歩く姿、カフェでお茶を飲む、居酒屋でお酒を呑む「人」の行動のすべてが「まち」を形成しています。

「まち」には、そこで暮らす私たち一人ひとりが劇場の主人公として存在し、形づくっています。

まちづくりや行政、経済は男性がグリップを握って動かしているのかもしれません。

しかし、ものを買い、食べ、習い事をし、コンサートや観劇をし、まちを回遊し、消費の鍵を握るのは女性。昼も夜も、福岡の都心は元気な女性たちであふれています。

しかし、福岡の女性たちを悩ますもの、それは…。

福岡男子、どこにいるの?

「会社にも独身男性はいない。いったい、どこで知り合ったらいいの?」、情報誌編集をしていた35年間で読者から聞き続けた言葉です。

もともと子どもが生まれる比率は男性の方が少し多めです。女性100に対して男性105。でも、女性は長生きするので、多くの市町村では高年齢で女性人口が増え始めます。

ところが、福岡は20代で逆転します。際立つのが、20代後半の男女比。福岡市の住民基本台帳(2019年12月)によると、25から29歳の総人口95,100人のうち、女性の方が6,944人多いのです。


「福岡市住民基本台帳(2019年12月末)に基づく年齢別男女別人口」もとに男女差を集計

福岡都市圏には、大学短大が集積しており、九州各県から学生が集まります。

ところが、卒業後、男子の多くは東京本社の会社へ就職し、女子の多くは福岡の会社に就職します。さらに他県からも就職で流入します。

女性にとって魅力的な仕事のある「まち」「ここで仕事をしたい」と思える「まち」なのです。親も「東京は遠いけど、福岡ならいいよ」と送り出せるようです。

私は昨年まで25年間会社経営をして、毎年新卒を採用し、100人を超える女性社員が入社退社を繰り返しましたが、福岡市出身は1割程度でした。

女性にとって魅力的なまち福岡は、独身女性にとって受難ともいうべき人口比を作っています。

福岡が女性を惹きつけるのはなぜ?

福岡に女性が集まり始めたのは、今に限りません。私の知る限り、1980年代前半、今から40年近く前「天神でOLをするのが憧れ」という言葉を地方の女性から聞いたことを覚えています。

1970年代後半に天神地下街が整備され、天神コアやニチイ (ビブレの前身) が出現した天神の変化は「第一次天神流通戦争」と言われます。

商業の観点からはそうですが、天神の街がオシャレでブラブラするだけで楽しくなってきたことは女性にとって重要でした。

キャリアウーマンという言葉も登場して「天神」のオフィス街は、女性がパンプスを履いて颯爽と仕事をしているイメージだったのだと思います。

25年ほど前、平日夕方のセミナーに、某県から参加された女性が「駅で着替えて来ました。天神でないとこんな服を着られないので」と言われたのに驚きました。

ワンピースにネックレス、そんな格好でさえ田舎では目立ってできない、と。結婚して子どもがいる女性は田舎では地味にしていないと世間がうるさかったのでしょう。

女性がお洒落して似合う場所、それが「天神」だったのです。

「場」がお洒落な女性を集め、街の空気を作ります。高感度な女性が集まれば、それに似合う店が出現します。グルメな女性が多ければ、それに見合う食の店が生き残ります。

けやき通りにハイセンスな店がポツポツとでき始め、親不孝通りに「かもめ族」が集まり、天神西通りに人の流れが移り、大名の路地裏にトンがった店が出店し…。

都市開発をドッカン!とする、というより、「場」と「人」が絡み合いながら、福岡のまちが作られていったような気がしてならないのです。

女性を惹きつける福岡に全国の自治体も注目

今、全国の自治体が福岡市を注目しています。

2010年から40年の間に、20歳から39歳の若年女性の人口が半減する自治体を「消滅可能性都市」というのだそうです。

全国約1,800の自治体のうち半分が「消滅可能性都市」だというのですから衝撃です。

一人勝ち福岡の鍵を女性が握っているといっても過言ではありません。

福岡の未来の鍵を握るのは福岡女子たち

今、また天神が変わろうとしています。高さ制限が緩和され、次々に古いビルが壊され新しい商業ビルができてきます。

天神ビッグバン、楽しみですね。

容積率が増えるということは、楽しむ場所が増えるだけでなく、働く場所も増えるということです。女性たちの活躍の舞台がますます広がります。

今度は、決定権ある立場を男性ばかりでなく、女性たちが主導権を握っていい「まち」をつくっていきたいですね。

そして、女性が元気なまち福岡のウワサを聞きつけて、全国からイイオトコを引き寄せる、そんな循環をつくりたいですね。

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このコラムでは、時に生身の「人」の取材を入れつつ、「福岡」と「女性」にフォーカスしていきたいと思います。

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女性活躍ジャーナリスト
村山 由香里
働く女性を応援する情報誌「アヴァンティ」創業者として福岡の女性起業家の先駆者的な立場であると同時に、編集者・インタビュアーとしても豊富な経験を持つ。福岡県男女共同参画センター「あすばる」館長在職中は、女性起業家支援、企業における女性活躍に力を注ぎ、男女共同参画センターが経済界と連携する基礎をつくった。現在、フリーランスとして企業支援や自治体の女性活躍推進事業に携わるとともに、人と人がつながる場「天神キャリア塾」を主宰している。

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