『マリンワールド海の中道』が 人気を集める理由

【 Fukipedia:福博百科 】

年間100万人超を集客する水族館『マリンワールド海の中道』が人気を集める理由

海洋面積で世界第6位の日本は、水族館が多い〝水族館大国〟でもあります。世界で初めて水族館が誕生したのは1853年であり、日本初の水族館は1882年でした。1910年には福岡・九州でも水族館が登場しました。1989年に誕生した『マリンワールド海の中道』は、年間入場者100万人超の人気水族館として広く愛されています。

夏本番!コロナ禍後に入館者数を伸ばすマリンワールド海の中道

年間100万人超を集客する人気水族館『マリンワールド海の中道』はナゼすごいのか!

画像提供:海の中道海洋生態科学館

 

2024年に開館35周年を迎えた福岡市・西戸崎にある水族館『マリンワールド海の中道』は昨今、入館者数を大いに伸ばしている
マリンワールドの入館者数をみると、一部オープンした1989年度は72.4万人だった。

全館開館した1995年度には、過去最高の150.7万人を記録している。

 

 

その後、6070万人前後で推移した後、2017年のリニューアルオープンで入館者108.2万人と、盛り返しをみせた。
しかし、新型コロナウイルス感染症の世界的大流行が発生し、その影響を受けた2020年度は、過去最少の45.9万人にまで落ち込んだ。
その後は、順調な回復をみせており、昨年度(2024年度)には、歴代2位となる入館者数113.3万人を記録している。

 

マリンワールド海の中道 入館者数

出所:海の中道海洋生態科学館資料

 

コロナ禍明け後、マリンワールド海の中道が入館者数で躍進し続けている要因や背景は、何だろうか。
マリンワールド海の中道の運営会社である株式会社海の中道海洋生態科学館の三宅基裕営業部長は、次のように解説する。

 

 三宅基裕営業部長

コロナ禍後、マリンワールド海の中道が入館者数で盛り返している要因の一つとして、2017年のリニューアルオープンが挙げられます。

リニューアルに際しては、その5年前より、水族館プロデューサーの中村元さんの下、現場スタッフも一緒になって「何を見せたいのか」「何を見てほしいのか」を議論し、基本計画を策定しました。
そして、福岡にある水族館としての筋ができ、同じ目線で向かっていくようになり、一体感も出来上がりました。

一方、2020年度後半から、国際関係の改善やビザ規制緩和、円安もあり、韓国人観光客をはじめ外国人来館者も増加しています。
コロナ禍の期間、紙チケットに加えて電子チケットの販売準備も進め、海外のオンライン・トラベル・エージェント(OAT)や現地の旅行会社でも取り扱っていただいております。

また、InstagramをはじめSNSを用いた情報発信として、韓国・台湾・香港のインフルエンサーらの協力も得ながら、国内外へ積極的に情報発信に努めています。
リニューアルオープン前は、来館者の95%は日本人でしたが、現在では25%~35%は外国人来館者になっています。


年間100万人超を集客する人気水族館『マリンワールド海の中道』はナゼすごいのか!

株式会社海の中道海洋生態科学館の三宅基裕営業部長

 

 

マリンワールド海の中道とは、どのような水族館なのか

沖縄美ら海水族館295.6万人、名古屋港水族館243.6万人、新江ノ島水族館149.3万人、横浜・八景島シーパラダイスアクアリゾーツ146.8万人、マリンワールド海の中道109.6万人、仙台うみの杜水族館90.0万人……。
経営情報誌や各種年鑑・経営資料集の出版などを手掛ける綜合ユニコム株式会社は、『月刊レジャー産業資料』202411月号において特集『主要レジャー・集客施設[エリア別]2023年度入込みデータ』を発表した。
同特集によると、マリンワールド海の中道は、九州・沖縄エリアのレジャー・集客施設の入場者数で第3位だった。

 

 

マリンワールド海の中道という名称で親しまれている水族館の正式名称は『海の中道海洋生態科学館』だ。
マリンワールド海の中道の運営は、西鉄をはじめJR九州や九電などが出資する株式会社海の中道海洋生態科学館が担当している。

 

 

マリンワールド海の中道が一部オープンしたのは、1989年4月だった。
白い貝殻をモチーフとした半円形の建築デザインのうち、東側半分の完成で先行オープンしている。
全館完成した1995年4月、「対馬暖流」をテーマに熱帯から温帯・寒帯の魚350種類・2万点の生態を観察できる施設となった。
その後、201610月から半年間の全館休館し、9つの大型水槽入れ替えも含む大改装を経て、2017年4月にリニューアルオープンした。
新たな展示テーマとして、「九州の海」を掲げている。

 

エリア別入場有料施設

出典:綜合ユニコム株式会社『月刊レジャー産業資料』

 

なお、こちらの記事ではその見どころを紹介している。

福岡が誇る水族館「マリンワールド海の中道」大人が本気で楽しむ見どころ5選

マリンワールド海の中道

 

水族館事始め:世界初・日本初と世界最古・日本最古の水族館

太古から水族館のような施設はあったものの、大型水槽を用意して、多くの人々が観覧を楽しむ〝水族館〟が世界で初めて登場したのは、19世紀に入ってからだ。
産業革命の成熟期を迎えて〝世界の工場〟といわれていたイギリス。
首都にあるロンドン動物園内に1853年世界初の水族館となる『フィッシュハウス』という建物がオープンした。
200種類の魚を飼育していたフィッシュハウスは当時、1日で2万人の入場者数を記録するなど大きな話題になったそうだ。
その後、1856年にアメリカ・ニューヨーク、1859年に同ボストン、翌1860年にフランス・ボルドーでも水族館が、相次いで誕生した。

 

ただし、現在のロンドン動物園にフィッシュハウスという施設は、存在しない。
現存する世界一古い水族館は、同じくイギリスにある『シーライフ・ブライトン』であり、ギネスブックにも認定されている。
同館は1872年、イギリス・イングランド南部の歴史的な街並みの人気なイギリス有数の海浜リゾート地・ブライトンにおいて。『ブライトン水族館』として誕生した。

 

 

一方、日本初の水族館が誕生したのは1882年、世界初と同様に動物園である恩賜上野動物園内に併設された。
『観魚室(うをのぞき)』という名称の施設は、通路の片側に10個の水槽が並んでいる簡素な内容だったそうだ。

残念ながら、いまの上野動物園内に水族館は存在しない。

日本に現存する最古の水族館1913年、富山県魚津市に開館した『魚津水族館』だ。
もともと19139月に開幕した富山県主催『一府八県連合共進会』の第二会場として建設された。共進会終了後の19143月に魚津町立水族館としてオープンしている。

 

年間100万人超を集客する人気水族館『マリンワールド海の中道』はナゼすごいのか!

画像提供:海の中道海洋生態科学館

 

 

福岡・九州で初の水族館・箱崎水族館、後継となる福岡水族館の歴史

年間100万人超を集客する人気水族館『マリンワールド海の中道』はナゼすごいのか!

地図の右上に「水族館」との記載がある『福博電車沿線名所案内』(福岡県立図書館所蔵)

 

1910年3月に開館した『箱崎水族館』は、福岡初の水族館であり、九州で最初の水族館だった。
『博多郷土史事典』に掲載されている箱崎水族館では、次のように記している。
「地元福岡財界人の発起で設立された合資会社箱崎水族館(資本金九万二千円)第十三回九州沖縄八県共進会(明治四十三年三月一日から五月五日まで現在の天神一、二丁目で開催)付属事業の一環として箱崎浜に明治四十三年三月二十四日に開館した」

 

 

当時、地元福岡財界人だった渡辺與八郎も有力発起人の一人として、水族館開設に関わっていた。
そして、渡辺與八郎らが設立した博多電気軌道の延長線計画では、箱崎水族館を終点としていたものの、渡辺與八郎の急死で実現しなかった。
大正期から昭和初期、箱崎水族館は、福岡市民にとって数少ない家族向けレジャー施設として、親しまれていた。
『博多いまむかし』によると、箱崎水族館の展示について、「タイ、サバ、タコなど博多湾近海産が主体」とある。
その後、昭和初期に本格化した箱崎浜の埋立工事と国道敷設計画(現国道3号)の建設工事によって敷地の大半を失い、箱崎水族館は閉館してしまう。

 

 

戦後、炭鉱景気に沸いた1957年、箱崎水族館跡地からやや南側にオープンしたのが、『福岡水族館』だ。
鉄筋2階建てだった水族館の建物には、28の水槽と3つのプールを備えていた。
そして、海水・淡水魚約100種、熱帯魚約60種が展示されていたという。
さらにペンギンも飼育されていたそうだ。
福岡水族館は、水族館機能に加えて、観覧車やプラネタリウムなども備えた一大レジャー施設としても福岡市民の人気を博したものの、1968年8月に閉館した。

 

 

観光分野での集客装置としての水族館の可能性を考える

水族館は昨今、レジャー施設という枠を超えて、地域経済の活性化に寄与する観光資源としての可能性も秘めている。
『月刊レジャー産業資料』202411月号の特集『主要レジャー・集客施設[エリア別]2023年度入込みデータ』において、水族館で首位だった沖縄美ら海水族館(沖縄県)年間入館者数は、295.6万人となっている。
この数字は、沖縄県の推計人口147万人(20255月現在)を大きく上回っており、人口比でも約2倍だった。
沖縄美ら海水族館に関して、沖縄県民はもちろん、県外や海外からの観光客も大勢やって来ていることは明らかだ。
そして、観光客らによる経済活動は、ホテルをはじめ飲食や交通など関連する周辺産業への波及効果も大きい

 

 

海外においても観光インフラの核として、水族館を戦略的に活用している事例もみられる。
シンガポール・セントーサ島にある『シー・アクアリウム』は、統合型リゾート(IR)である『リゾート・ワールド・セントーサ』開発の一環として建設された。

 

 

2014年、シー・アクアリウムを上回る〝世界最大の水族館〟として誕生したのが、中国・広東省の『珠海長隆海洋王国』だ。
ギネスブックも認定する珠海長隆海洋王国では、遊園地も併設する一方、隣接する客室数1,888室のホテルでは、海底レストランやサーカスなどのエンターテイメント施設も備えている。

 

 

水族館は今日、レジャー施設であると共に環境教育や海洋保全、地域ブランディングなど、多面的な機能を有する施設へと変貌しつつある。
一方、コロナ禍後、国境を越えての地球規模でのヒトの往来が活発化していく中、水族館は観光分野における一大集客装置としての可能性も秘めている。

 

 

このような状況を踏まえて、マリンワールド海の中道をはじめとする水族館や福岡市動植物園、福岡市科学館などの施設について、観光コンテンツとしての視点での再評価も行いながら、地域を代表する観光資源として戦略的に活用していくべきだと考える。

 

年間100万人超を集客する人気水族館『マリンワールド海の中道』はナゼすごいのか!

画像提供:海の中道海洋生態科学館

 

 

参照サイト

綜合ユニコム株式会社『【独自調査】全国主要レジャー・集客施設のエリア別入場者数データ』――『月刊レジャー産業資料』202411月号で2023年度版調査結果を公表
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000008.000051944.html

 

綜合ユニコム株式会社『2023年度有料施設トップ100の集客実態』
https://www.sogo-unicom.co.jp/lid/n202411/p01/

 

【世界初の水族館】世界で一番古い・日本で一番古い水族館はどこ?
https://aquariumpicks.com/oldest-aquarium-intheworld

 

魚津水族館『魚津水族館について:魚津水族館100年の歴史』
https://www.uozu-aquarium.jp/about/

 

福岡県立図書館レファレンス事例詳細『明治期末期から昭和初期にかけて、現在の福岡市に存在した箱崎水族館について知りたい』
 https://crd.ndl.go.jp/reference/entry/index.php?page=ref_view&id=1000328723

 

三好不動産『かつて箱崎にあった水族館の歴史を探る』
https://chintai.miyoshi.co.jp/contents/welove/1011.html

 

水族館の未来の形『【2025年最新版】日本の 水族館の歴史 [年表付き]
https://taseaqua.com/2022/04/18/aquarium-history-from1882to2022/?utm_source=chatgpt.com

 

にしてつWebミュージアム 『渡辺與八郎の未来都市「箱崎水族館と博多座、香椎埋立」』
 https://www.nnr.co.jp/museum/kikaku/k01/09.html

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編集者兼ライター
近藤 益弘
1966年、八女市生まれ。福大卒。地域経済誌『ふくおか経済』を経て、ビジネス情報誌『フォー・ネット』編集・発行のフォーネット社設立に参画。その後、ビジネス誌『東経ビジネス』、パブリック・アクセス誌『フォーラム福岡』の編集・制作に携わる。現在、『ふくおか人物図鑑』サイトを開設・運営する。

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