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主役はいつだって「私」|シャルル・ペパン著/児島 修訳『幸せな自信の育て方』ダイヤモンド社

ビジネス系書籍をアカデミズムの世界から紹介してくださるのは、福岡大学・商学部の飛田努准教授です。アントレプレナーシップを重視したプログラムなどで起業家精神を養う研究、講義を大切にされています。毎年更新されるゼミ生への課題図書リストを参考に、ビジネスマンに今読んで欲しい一冊を紹介していただきます。

 みなさんは「自信」ってありますか?
 
 私は,身体はもちろん,声も態度も大きいので,いつも「自信がありそう」とか言われます。しかし,そんなことありません。いわゆる「自己効力感」が極めて低いと感じますし,実際そうです。もう少し自分が持つ力を正しく測り,形にすることができたら違うのになぁと日々感じています。
 
 そうした中で,たまたまSNSのタイムラインに流れてきたのがこの本でした。

「幸せな自信の育て方 フランスの高校生が熱狂する『自分を好きになる』授業」詳細はこちら

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 現在,ゼミに所属する学生とともに,私は「大学生が高校生にアントレプレナーシップ(起業家精神)を教える授業」を北部九州各地の5つの高校で行っています。それらの高校の多くはいわゆる「地方都市」にある商業系の教育課程を持つ学校です。そこで,私の専門でもある会計をベースに,ビジネスを通じて付加価値を創り出し,それを分配することで地域が潤うのだということを教えます。場合によっては,大学生とともに地域の商店と協力して出店をし,実践的に学習する仕組みを創出しています。この活動を貫くキーワードが「アントレプレナーシップ」です。これまでもこの書評ではたびたび出てきた言葉ですね。
 
 こうした取り組みは,高校生や大学生に対する教育だけでなく,現在の私にとっての重要な研究テーマになっています。今の教育現場ではグループワークやフィールドワーク,社会課題をプロジェクト型学習で解決しようとするアクティブ・ラーニングが盛んに導入されています。しかし,その教育効果がいかなるものであるのかについては十分に明らかになっていません。とりわけ,経営学や会計学の領域ではまだまだ明らかになっていないことばかりです。なので,高校にご協力頂き,アントレプレナーシップ教育の効果を測定しようとしています。
 
 そこで特に測ろうとしている要素が「自己効力感」です。「自己効力感」とは,「自分がある状況において必要な行動をうまく遂行できると、自分の可能性を認知していること」(成田ほか 1995)であり,日本人はこの力が弱いと言われています。わたしたちが持つ学校に対するイメージのステレオタイプとして「間違えることが嫌がられる」,「正解主義」といったような言葉がありますが,まさに「できた」「できない」という結果を怖がることにつながり,高校生と話をしていても「一歩踏みだせない」,「間違えるのが怖い」という声を聞きます。
 
 本来,学ぶとは「新たな知識を得て,仮説検証を行う中で,できることを増やす」ことのはずであり,その過程で間違えることは当然にあるはずです。その繰り返しで何ができるか,何ができないかを認識し,少しずつできることを増やしていくことのはずです。しかし,間違えることが許されないという暗示にかかってしまう。その結果,自己効力感が低くなってしまうのかもしれません。大学で講義をしていても,さまざまな活動をしていても,大学生や高校生の自己効力感の低さを感じることがあります。
 
 そうした若く,未来を担う人材にとって大きなヒントをもたらしてくれるかもしれない本が本書です。本書の表紙には「フランスの高校生が熱狂する『自分を好きになる』授業」と記されており,筆者のシャルル・ペパンという哲学者が10のヒントをもとに若者に自信を持つ術を記しています。
 
 では,自信とはどのようなものなのでしょうか。本書では次のように書かれています。「自信とは,人生全体への肯定感を持つこと」(p.16)であると。そして,「他者への信頼,自分の能力への自信,人生全体への肯定感」を持つことが自信の原動力だと筆者は述べています。また,筆者は「自分の力で道を切り拓かなければならない現代人には,自信を持つことがとても重要」(p.22)であり,「1つの学問分野では網羅できないほどの幅広さと奥深さがある」(p.21)とも語っています。
 
 また,「自信とは,不安があるにもかかわらず,リスクを取って複雑な世界に飛び込もうとする能力のこと」(p.27)とも述べています。自信を得るために,他者との出会いが極めて大切で,「『私』とそれを見ている『私自身』の間に『他者』が存在している」(p.28)という意識を持ちながら他者との関わりを持つことで,誰かの「信頼」が自信になるのだそうです。
 
 さらに,自信を持つことは,「『自分は予期せぬ事態にも対応できる』と信じることであり,人生は予測可能だと勘違いすることではない」(p.80)とも筆者は言います。予期せぬ事態というのは「未体験のなにか」であり,それに挑戦して成果を得ることができた時に,ひとは自分自身の行為から自信を得ることができるようになります。
 
 あるいはこのようなことも筆者は言います。
「選択とは,合理的な基準に従って行動することだ。決断とは,合理的な基準のない状況下で,自分の最良で何かを選ぶことだ。すなわち,選択とは行動する前に知ることであり,決断とは知る前に行動できることだ」(p.136-137)と。つまり,確かな選択肢が見えていない=自由度が極めて大きいがゆえに,逆に自信を無くしてしまう可能性もある。確かに,自信を持っている人は答えが不明瞭でも決断し,持っていない人は怯え,少しでも確かな方へ進もうと答えを求めがちだと言えるかもしれません。
 
 こうした議論を続けていく中で,最後に筆者は次のような文章を記しています。
 

自信は能力から生まれ,人間関係の上に築かれる。ただし,自信が存在するために必要な媒体であり,それを育むために必要な土壌は,人生への自信なのだ(p.228)

 
 そうなのです。自信は自信から生まれるのですよね。だから,一歩踏み出す勇気を持って挑戦することで自信が身につく。「自信がない」のではなくて,小さな自信を雪だるまを作るようにどんどん大きくしていくことで「自信がある」と言えるようになるのでしょう。
 
 先にご紹介した高大連携でのアントレプレナーシップ教育では,大学生が高校生に授業をすることでリーダーシップを発揮しつつ,高校生は大学生をロールモデルとすることで意欲的に学ぶ機会を創ろうとしています。そして,そういう相互作用を通じて,内発的な動機づけに基づいて一歩踏み出し,自己効力感を高めたい。大学生はアントレプレナーシップを「一歩踏み出す勇気」だと教えています。まさに「不確実の中でいかに決めて行動できるか」ですよね。
 
 よく「ビジネスとは答えがないもの」と言われますが,それは本当にそうなのでしょうか。実は誰かが考えていることがある程度正しい,あるいはまだ誰もが気づいていない真実が答えなのだとすれば,すでに答えはどこかに何かしらの形で存在していて,その「解に対する問いの設定」こそが重要であるように思います。日頃学生たちと接していると,どうも答えを欲しがる傾向が強すぎて,問いの検討が甘いことが多いなと感じることが多くあります。それも実は「自信のなさ」が原因なのかもしれません。ビジネスの基礎に自分ではない他者が持っている答えを大事にし過ぎるがあまり,本当に大切なことが見落とされているように思います。
 
 自己効力感を高める=自信を持てるようにする教育を行っていくには,単にペーパーテストや資格取得だけで評価するのではなく,「他者への信頼,自分の能力への自信,人生全体への肯定感」というこのテキストが教えてくれえる「自信」というものの姿を自分で獲得することが求められるのでしょう。そして,自信を得るためにも「一歩踏み出す勇気を持つ」ことがスタートになるのかもしれないですね。自由を謳歌し,自分と他者との関係性の中で互いを尊重しあう関係を構築できれば,誰もが自信を持って日々を過ごすことができるのかもしれません。
 
 他者との関わりも大切ですが,もっと自分を大切にすることから始まる自信。フランスの高校生が読む本から私も多くのことを学ぶことができました。ぜひ,みなさんもご一読ください。

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福岡大学商学部 准教授
飛田 努
福岡大学商学部で研究,教育に勤しむ。研究分野は中小企業における経営管理システムをどうデザインするか。経営者,ベンチャーキャピタリストと出会う中でアントレプレナーシップ教育の重要性に気づく。「ビジネスは社会課題の解決」をテーマとして学生による模擬店を活用した擬似会社の経営,スタートアップ企業との協同,地域課題の解決に向けた実践的な学びの場を創り出している。 著書に『経営管理システムをデザインする』中央経済社がある。

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