珈琲美美

福岡が誇るネルドリップコーヒーの聖地!「珈琲美美(びみ)」【福岡市中央区】

いつの時代でも「カフェ」という存在は人々をトリコにします。近年のSNS人気も相まって、おしゃれなカフェ巡りを楽しむ女性も多い中、脚光を浴びているのが「昭和レトロな喫茶店」や「ネオ喫茶」と呼ばれるお店。中年以上の方はノスタルジックを感じ、若者にとってはおしゃれなカフェにないレトロ感が斬新だと感じるんだそうです。この記事では福岡にあるそんな「昭和レトロを感じられる喫茶店」や「ネオ喫茶」をご紹介していきたいと思います。

独特の凛とした空気に包まれている「珈琲美美」

 

今回ご紹介する「珈琲美美」の場所は福岡市中央区赤坂。護国神社と舞鶴公園に挟まれた国体道路沿いの閑静な一角に佇んでいます。

 

 

ドアを開けると、1階は珈琲豆の販売スペースになっています。豆を購入される方は、こちらでお好みの珈琲を選びましょう。

 

 

壁を隔てた位置にある焙煎室。年季の入った大型焙煎機が鎮座しています。現在、焙煎は週に3回ほど行っているそうです。

 

 

カウンターの一角には森光マスターの著書「モカに始まり」をはじめ、珈琲美美に関する書籍が並んでいました。書籍は購入することもできますよ。

 

 

喫茶室は2階にあります。こちらのかわいいメモに案内されつつ、奥の階段を上りましょう。

 

 

階段の中ほどの壁に掲げられた「おかげさま」の書。

 

 

こちらが喫茶室。メインフロアにはアンティーク調の椅子が配され、クラシカルな印象。

 

 

あたたかみのある木製のテーブルと椅子で構成された窓際席。窓からは隣接する舞鶴公園の緑が眺められます。

 

 

喫茶室のゴツゴツとした漆黒の床は「木(もく)煉瓦」と呼ばれる木材が埋め込まれており、重厚な味わいを醸し出しています。

 

マスターの故・森光宗男さんが築き上げた「極上の一杯」

マスターの故・森光宗男さん。店内の一角から優しい笑顔で珈琲美美を見守っておられます。

 

「珈琲美美」を創業した森光宗男さんは久留米市のご出身。

東京の「桑沢デザイン研究所」を経て、かつて吉祥寺にあった名店「モカ」に5年ほど勤務され、ネルドリップ珈琲の技術を習得。その後、福岡に戻られ1977年(昭和52年)、福岡市中央区今泉の若宮神社の横に「珈琲美美」をオープン。その直後に奥様の充子さんとご結婚され、夫婦二人三脚で営業を始められました。

 

「深煎り・自家焙煎・ネルドリップの珈琲専門店」というスタイルは、当時の福岡では馴染みがなく、なかなか受け入れられなかったようですが、徐々に「珈琲が美味しい店」という口コミが広がり、やがて「珈琲美美」の名は福岡を代表する珈琲店という位置を獲得するまでに至りました。

 

2009年には今泉から現在の赤坂に移転。移転前には現在のお店の付近をよくご夫婦で散歩されていて、常々「神社があって、舞鶴公園があって、美術館もあるこの辺でいつかお店ができたらいいね」と話していたそうです。

その後、今泉のお店の隣にある和菓子屋さんが店を閉められるので店舗拡張をしようとしていたところ、ちょうど知り合いの設計士さんから現在の物件が空いたと紹介され、奇跡的なタイミングで移転できたんだそうです。

 

移転後も夫婦仲睦まじく営業を続けてこられましたが、マスターの宗男さんは2016年にご逝去されました。

現在はマスターの意思を受け継いだ奥様の充子さんと次女の英会(はなえ)さんを中心に営業を続けておられます。

 

森光マスターの奥様・充子さんと次女の英会(はなえ)さん。

 

バラエティに富んだ珈琲のラインナップ

 

席に座り、木の板が表紙になったメニュー表を開いてみましょう。

まず最初に目にするのはブレンド珈琲。

軽やかな香りの「淡味(たんみ)」、単に「ブレンド」とオーダーすると提供される「中味(ちゅうみ)」、コクから苦味への諧調が絶妙な「濃味(のうみ)」、芳醇なコクと苦味の余韻が楽しめる「吟味(ぎんみ)」、そして深い苦味と味わいが楽しめる「趣味(しゅみ)」と濃さの順に5種類が用意されています。

 

 

他にも、より濃い珈琲を楽しみたい方向けの「デミタス珈琲」や、カフェ・オレやアイスコーヒー、マザグラン(甘みのついた冷やし珈琲)といった「バリエーション珈琲」もあります。

 

 

また、珈琲好きにはたまらない「ストレート珈琲」はモカを中心に7種類がラインナップされています。

 

珈琲とともに、所作も含めて味わう極上の時間

 

珈琲のオーダーが入ると、毎回行うのが「ハンドピック」という焙煎後の欠点豆と言われる珈琲の味を損なう豆や不純物を取り除く作業。

このひと手間を行うことで、より美味しい珈琲が味わえるのです。

 

 

そしてネルのフィルターで丁寧にハンドドリップ。凛とした空気をまといながらドリップする充子さんの所作についつい見とれてしまいます。

 

 

お湯を注ぐたびにネルフィルターの中でコーヒー豆が攪拌されて大きく膨らみます。これはコーヒードームと呼ばれる現象で、焙煎から日が浅い新鮮な豆を使用している証拠なのです。

 

 

コーヒーカップを湯せんするのも特徴のひとつ。お客さんに珈琲を提供する際、カップとの温度差をなくすことでベストな温度の珈琲を提供できるんです。

 

 

そして特筆すべきはアイスコーヒーの作り方。オーダーが入ると、ネルドリップで抽出した熱い珈琲をシェイカーに入れ、厚い氷板の上に置いて固定しながら手を使って高速回転させます。

こうして急冷することで、淹れたての美味しさそのままにアイスコーヒーや冷たいカフェ・オレが提供できるんです。

 

 

今回はブレンド珈琲のひとつ「中味(ちゅうみ/税込600円)」をセレクト。

そして珈琲のお供として「フルーツケーキ(税込400円)」もオーダーしてみました。

 

 

「中味」は四季に合った香りと甘味、コク、苦味、そして舌離れの良さと余韻が楽しめる、珈琲美美40余年の結晶とも言える一杯。

ネルドリップならではのまったりとしたまろやかな味わいはまさに極上!

 

 

フルーツケーキは、3種類のお酒に別々に漬け込んだ7種類のドライフルーツをじっくり焼き込み、焼きたての時にラム酒とブランデーを含ませて作っているそう。珈琲との相性も抜群で、至福のひとときを過ごせます。

 

 

 

取材したのは平日の夕方だったのですが、2階の喫茶室は満席。しかもインバウンドのお客さんもかなり多く、あちこちでシャッター音が聞こえていました。

 

福岡のみならず、全国、いや海外にまで名前が知れ渡っている「珈琲美美」は、文句なしで福岡が誇る名店と言えるでしょう。

 

森光マスターが長い年月を経てたどり着いた極上の一杯を、ぜひ存分に堪能されてみてくださいね!

 

 

 

珈琲美美

住所:福岡市中央区赤坂2-6-27

TEL:092-713-6024

営業時間:12:00〜18:00(O.S 17:00)

※珈琲豆の販売は11:00〜18:30

定休日:月曜日・火曜日

喫煙:全席禁煙

公式サイト:https://cafebimi.com/

Instagram:https://www.instagram.com/bimi_coffee/

 

 

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ライター
久原茂保
2001年より福岡発のカフェ情報サイト「CAFE@TRIBE(カフェ・トライブ)」を開設。以来、20年以上に渡り福岡県を中心に数多くのカフェを訪れ、日々取材活動に励んでいる。近年はカフェアドバイザー業やカフェのリブランディング、カフェプロモーションなどカフェ業界の知見とネットワークを活かしたオンリーワンな事業を展開中。グラフィックデザインやWEBデザイン、広告コンサルも。

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