【経済・ビジネス短信@フクリパ】

肥料高騰の農家に朗報! 福岡市とJA 全農ふくれんが下水汚泥からの再生リンで割安なエコ肥料を開発

ロシアによるウクライナ侵攻以降、世界的な物価高が続く中、農業を下支えする肥料の高騰で農業生産者も影響を受けています。このような状況下、福岡市が取り組む下水汚泥から回収した再生リンは、新たな肥料の原料として注目を集めています。

全量を輸入する肥料の原料であるリンを下水汚泥から回収

穀物価格の値上がりで生産者の作付け意欲が高まったことによる肥料需要の拡大に加えて、天然ガスやアンモニア価格の急騰もあり、肥料の国際市況では依然として価格の上昇が続いている。
窒素、カリウムと共に化学肥料の3要素の一つであるリンについて、日本ではリン鉱石が産出しないため、全量を輸入に頼っている。
リンの国際取引に関しては、かつて輸出国だった米国は、国内農業の保護を名目に禁輸に転じている。
また、日本におけるリン輸入において実に9割を占める中国産リンも2021年10月から輸出規制が始まっている。
このため、国際市況の上昇に加えて、急速な円安が肥料価格の高騰に拍車をかけている。

このような状況下、博多湾の水質汚濁を防ぐために1996年から下水の浄化過程においてリンの回収事業に取り組んでいる福岡市は2022年3月、国土交通省が開発した技術を導入した新たな回収設備に更新した。
今回の設備更新によって従来と比較し、回収するリンの大幅増加が見込めるようになった。
 

福岡市とJA 全農ふくれんが『再生リン』を用いた新肥料を開発


和白水処理センターにおける再生リンを回収する仕組み(画像提供:福岡市)

従来、福岡市では、下水汚泥から回収したリンを再生リンとして『ふくまっぷ21』の名称で肥料登録し、商社向けに販売していた。

今回、設備更新による回収量の大幅増加を機に福岡市は、更新設備で回収するリンを新たに『ふくまっぷneo』の名称で肥料登録し、全国農業協同組合連合会福岡県本部(JA 全農ふくれん)と共同で再生リンを使った肥料の製品化に乗り出した。
具体的には和白水処理センターで回収した再生リンのうち、今年度80トンを供給し、JA全農ふくれんは再生リンと家畜のふんでの堆肥を原料に肥料を製造する。

JA全農ふくれんは今年度、再生リンと福岡県内JAグループの堆肥を原料とするエコ肥料『e・green』シリーズを8万袋(一袋20キロ)製造する予定だ。
新たに開発したエコ肥料e・greenシリーズは粒状タイプで、栽培する作物に合わせて堆肥やチッソなどの割合を変えた3種類の商品をラインナップしている。

新しいエコ肥料の価格は、輸入リンを用いた従来品に比べて約2~3割安くなるため、肥料高騰で経営上の圧迫を受けていた農業生産者にとって、朗報といえる。

JA全農ふくれんでは、福岡県内の各JAを通じて販売している。
福岡市内においては、JA福岡市とJA福岡市東部で販売中だ。JA全農ふくれんが、肥料の製造に関して地方自治体と連携するのは今回、初めての試みとなっている。

福岡市の再生リンを活用した肥料開発の発表文において、JA全農ふくれんは、「輸入に依存している肥料原料を、福岡市の都市資源である再生リンとJAグループの堆肥を使用することで、環境負荷軽減、持続的な産業基盤の構築を行い豊かな食生活につなげます」と記している。

参照サイト

再生リンを活用した資源循環の新たな取り組みを開始!〜JA全農ふくれんと協働でエコ肥料を製品化〜
福岡市の回収リン酸を活用した肥料の開発について
福岡市の道路・河川・下水道

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編集者兼ライター
近藤 益弘
1966年、八女市生まれ。福大卒。地域経済誌『ふくおか経済』を経て、ビジネス情報誌『フォー・ネット』編集・発行のフォーネット社設立に参画。その後、ビジネス誌『東経ビジネス』、パブリック・アクセス誌『フォーラム福岡』の編集・制作に携わる。現在、『ふくおか人物図鑑』サイトを開設・運営する。

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