「MBA」とは何か?
「MBA」は「Master of Business Administration」の略称で、日本では「経営学修士」と呼ばれる。経営学の大学院修士課程を修了すると授与される「学位」であり、税理士や公認会計士などの「資格」とは異なる。「MBA」に近い学位には、技術を効果的に活用して経営を行う手法である「MOT」(Management of Technology)を学ぶ「技術経営修士」がある。
「MBA」を取得する目的は、ビジネスに関する体系的な知識やスキルを修得し、仕事での成果を効率的に上げることにある。取得すると、企業の採用や昇格において高い評価が得られ、企業の経営幹部に抜擢されるほか、起業を目指す際の礎にもなる。
2003年、文部科学省は従来の大学院修士課程とは別に企業経営や会計、法務などの実務家を養成する「専門職大学院」の制度を作り、授業の履修及び知識習得に重きを置く、欧米の「MBA」に倣った専門職学位の授与も認めるようになった。
専門職大学院が大学院修士課程と大きく違うのが、実務教育中心であることだ。文部科学省告示によると、「専門職大学院には実務家教員をおおむね3割以上置く」と規定されている。
文部科学省が2019年にまとめた資料「経営系大学院を取り巻く現状・課題について」によると、全国には30大学30専攻の「専門職大学院」(MOTを含む)と、105大学141研究科の「大学院修士課程」のビジネススクールがある。このうち、福岡県内にある主なビジネススクールが下記の表だ。
「大学院修士課程」にせよ「専門職大学院」にせよ、長期間で多額の学費が必要となるため、「MBA」を取得する教育機関は慎重に選ばなければならない。まず押さえておくべき点は、取得する目的が「学問」としてなのか、「ビジネスへの実践」としてなのか。
前者であれば「大学院修士課程」、後者であれば「専門職大学院」を選ぶのが一般的だ。働きながら学ぶなら、開講時間や受講形式、受講場所も重要になる。
学生の年令は、35歳~44歳が半数!クリエイティブ職やNPO職員も増加中
専門職大学院として2006年に開校したのが、グロービス経営大学院(東京都千代田区、リンク→https://mba.globis.ac.jp/)だ。同大学院には、東京、大阪、名古屋、仙台、福岡の5つのキャンパスと、横浜と水戸に特設キャンパスのほか、オンラインクラスがある。2021年度の全国の入学者数は1,126人で、卒業生は6,000人以上と、学生数では全国最大級のビジネススクールである。
学生の属性をみると、年代別では35歳から44歳が50%で最も多く、職業別では営業が29%、技術職が15%など多種多様である。近年は医師や看護師、弁護士などの専門資格職、エンジニアなどのクリエイティブ職、NPO職員などの非営利組織従事者も増えているようだ。
2013年に開校した福岡校リーダーの高原雄樹さんに話を聞いた。
高原さん
福岡校は東京校などに比べてクラス数が少ないので、結果として多種多様な学生と学ぶことができます。急に行けなくなってもオンラインで受講することが可能です。新型コロナウイルスの感染拡大で一時はオンラインでの受講が8割にもなりました。現在は4割程度に下がりましたが、コロナ以前の2割よりは高くなっていますね。
JR博多駅直結なので、もともと山口や鹿児島から新幹線で通学される方もおられたのですが、交通費節約になるからとオンライン受講に切り替える方もいます。IT系企業の方はリモートワークに慣れているせいか、オンラインで受講する方が多いですね。
入学のハードルの低さと学びやすさを実現
同大学院のもう1つの大きな特徴は、入学のハードルの低さと学びやすさである。その代表的な制度が、「単科生制度」だ。同制度は入学前に14科目の中から1科目・3か月を先行して受講でき、本科生として入学する際には卒業に必要な単位として認められる。入学金が2万3,000円で、受講料は12万8,000円。単科生に人気のある科目は、「クリティカル・シンキング」(注1) と「マーケティング・経営戦略基礎」である。
(注1) 考え方整理できていない、あるいは十分に考えていない状況を、「物事を適切な方法で、適切なレベルまで考える」思考法。
履修期間は、最大5年間まで延長可能に
開講時間は、平日19時からと週末。全国のキャンパスやオンライン校へ転校が可能なうえ、最長2年の休学期間、標準2年の履修期間を最大5年間まで延長できる。
2年間で最大112万円の給付も
学費は入学金が8万円で、2年間の学費合計は299万8,000円。同大学院は厚生労働大臣から教育訓練給付金の専門実践教育訓練として指定を受けており、一定期間以上雇用保険に加入しているなどの条件を満たせば、2年間で最大112万円の給付も受けられる。
高原さん
最初は会社の人事教育の一環として社費で単科生となられた方が、講義を受けて「もっと学びたい」と私費で本科生になられる方も少なくありません。
当大学院のもう一つの強みが卒業後のフォロー体制です。在校生や卒業生が情報交換できるSNS(交流サイト)や、卒業生を対象にした特別講座「アルムナイ・スクール」、卒業後5年ごとに同級生が集まって最新の経営知を学ぶ「リユニオン」などが活発に行われています。社会人としてのキャリアに常に伴走することが当大学院の使命と考えています。
「MBA」取得者の7割以上が年収UP!
「MBA」取得者にはどんな未来が待っているのだろうか。グロービス経営大学院が2020年4月に行った「第5回卒業生キャリアアンケート調査」から抜粋する。(注2)
(注2)2019年3月迄にグロービス経営大学院、および前身のグロービス・オリジナルMBAプログラムを卒業した方(平均年齢39.8歳)を対象。調査数4192、回答数2097
同調査によると、「MBA」を取得したことで処遇・キャリアに「ポジティブな変化」を経験したと回答した人は91.6%にのぼる。具体的には「年収が増加した」(71.5%)、「業務で特別な業績・実績を上げた」(64.5%)が上位を占めたが、「独立・起業した」人も13.4%いる。
高原さん
本気で学び、より良い未来を実現しようとするリーダーが増えれば企業が変わり、社会が変わる。そんなダイナミズムをまずは地方都市の福岡から起こしていくことを想像するとワクワクしませんか。当大学院が微力ながらそのお手伝いができればと考えています。
もちろん、リカレント教育は「MBA」取得に限らない。どんなスクールがあるかを調べるには丸善雄松堂株式会社が運営する「マナパス」(リンク→https://manapass.jp/)や、株式会社リクルートが運営する「スタディサプリ」(リンク→https://studysapuri.jp/)などで検索するといいだろう。
人生100年時代を迎え、少しでも長く現役で働くことが求められるようになった。自分の中長期的なキャリアのために投資する「学び直し」こそ、豊かな人生を送る最大の秘訣ではないだろうか。