2021年10月17日、一般社団法人福岡青年会議所(事務所:福岡市博多区 理事長:彌登義明)が、宇宙コンテンツを福岡の新たな地域資源にすることを目指すイベント『FUKUOKA SPACE EXPO 2021(フクオカ・スペース・エキスポ)』を福岡空港にて開催しました。
開会にあたっては、服部誠太郎・福岡県知事も列席し、
「福岡県には、世界トップレベルの小型レーダー衛星を開発しているQPS 研究所をはじめ、非常に優れた企業、大学などの研究機関の集積がある。このようなポテンシャルが評価され、国から『宇宙ビジネス創出推進自治体』に指定された。宇宙ビジネスを福岡県の大きな成長に繋げていきたい」
と語りました。
スペシャルトークセッションの第1部には、ゲストスピーカーに宇宙ロケット開発ベンチャー企業のインターステラテクノロジズ株式会社・創業者・堀江貴文さん、並びに代表取締役・稲川貴大さんが登壇。いま宇宙開発の最前線でおこなわれていること、福岡の宇宙産業の可能性ついてなどを語ってくれました。
第2部以降も株式会社QPS研究所・代表取締役社長・大西俊輔さん、NPO法人円陣スペースエンジニアリングチーム・理事長・當房睦仁さんなど、福岡の民間による宇宙開発を担うトップランナーによるトークセッションや、大人から子ども向けまで幅広い層を対象にした体験ワークショップやパネル展示のコンテンツが並べられました。
▶第2部登壇の株式会社QPS研究所・代表取締役社長【大西俊輔】氏のフクリパ記事はこちら
ホリエモンが宇宙ビジネスに着手した理由とは?
この日、インターステラテクノロジズ株式会社・創業者・堀江貴文さんと代表取締役・稲川貴大さんがイベントに登壇してくれた理由のひとつに「宇宙産業は人もお金も足りないんです。今日はそれを伝えにきました」と堀江さん。
堀江さんが宇宙産業に着手されて日が長いことは皆さん周知の事実かと思いますが、そもそもどうしてこのビジネスに着手したのでしょうか?
堀江「僕がいま48歳ですが、僕ら世代は子どもの頃に機動戦士ガンダムや宇宙戦艦ヤマト、スターウォーズやスター・トレックといったアニメや映画を観て育ちました。そして当然、大人になったらそんな未来がやってくるものだと思っていた。だけど、実際は全然そこまで到達していない。これはなんでだろうと考えたんですね。」
確かに近未来として描かれてきた世界には、宇宙へ人がバンバン行っているイメージでした。
堀江「宇宙開発は一時期、停滞してる時期が長かったんです。国家事業としてどの国もやっていましたが、国が税金でやる以上みんなの興味関心がないとできないんですね。もちろん、民間でやるには売上をたてればいいんですが、宇宙ビジネスはその性質上、安全保障の問題で、民間がやるのはなかなか難しいということがわかりました。国と国の問題に発展しかねないからですね。」
そんな中、ここにきて宇宙ビジネスはバブルを迎えるほんの手前にあると堀江さんは言います。
堀江「アメリカでアポロが月面に到達したところで、国民が一度満足してしまった感じになりました。そして停滞期が続いた中、いくつかの国がロケット開発に着手し、宇宙開発をけん引していたアメリカもその動きを無視できなくなってきました。つまりこれは宇宙開発の民主化なんだとアメリカが認め、禁止するより商売にしてしまったほうがいいだろうと判断したんですね。そこから民間宇宙開発にアメリカは舵を切った。
これは今ではみんなが使っているECも同じ話で、当時ECサイトなんかで使っている暗号化技術は禁輸の状態でアメリカから外に輸出できないという状況でしたが、暗号化の技術が民間に漏れていく過程で、一般市民が活用できるようになったことと似たような現象なんですね。」
日本の未来は宇宙ビジネスで拓くべき!
アメリカで宇宙ビジネスの民主化が解禁になったことを受け、ネット黎明期と今の宇宙ビジネスが同じような状況になっていると堀江さんは言います。
堀江「インターネットが出始めた頃、『それって何の役に立つの?メールができるようになるくらいだよね?』と話していた人たちが、10年経った頃に『インターネットって儲かるらしいね』となったように、どうしても時間がかかるんですね。
今、宇宙産業はバブル直前を迎えていて、この数年で間違いなくかなり拡がります。高度100km以上の空間を宇宙空間と言うのですが、領空がないのでグローバルですし、ネットは言語の壁がありましたが、宇宙産業にはその壁もないので、早く動きたいんです。しかし、人もお金も全然足りません。アメリカなんて数千人単位で宇宙産業に携わる人が増えています。
例えばですが、人工衛星のシステムにカメラを載せておけば公道を歩く人の居場所をリアルタイムで確認できるようになります。自分の自動車を登録しておくと、どこにあってもすぐに見つけることができるようになります。この技術が、『あと何年か』の単位で実用化します。」
新しいものに対してなかなか解像度が追い付かない日本。堀江さんが語る宇宙ビジネスの可能性は、「信じて」その世界に対する感度を上げていく必要があると感じました。
飛行機から自動車へ、自動車から宇宙産業へ。福岡・九州が持つ宇宙ビジネスのポテンシャル
すぐそこまで来ている宇宙バブル。ビジネスコンテンツとして拡がる日が近いと聞くと、「じゃあどんなビジネスができるだろう?」と考えてしまいます。
この点に関して、福岡・九州はすでに開発のための地域資源が潤沢にあると堀江さんは語ります。
堀江「宇宙開発には、実は自動車のサプライチェーンがとても重要なんです。それは自動車製造の技術がそのまま宇宙ロケットの製造に転用できる部分が多いからなんですね。日本の戦後復興を助けたのは自動車産業ですが、これは終戦後に飛行機の製造が止められ、その技術が自動車産業に転用されてこれまでやってきました。
そしてその自動車産業は、ガソリン車からEV車にシフトしようとしていますが、これは日本一強を引きはがすための動きでもあります。実際はEV車のほうが環境に良いかという問題は懸念点もあるのですが、とはいえ確実に自動車産業が衰退していくと思います。
そんな中、自動車製造に携わるサプライチェーンがロケット産業で吸収できるんじゃないかと考えているんですね。ロケットは輸出が難しく、内製に頼らざるを得ません。部品も国産しか使えません。もちろんアメリカから部品を購入することも可能なのですが、使用目的がロケットとなった瞬間にNGが出ると思います。
だからこそ、これまで自動車産業で頑張ってきた日本の中小企業が、これから宇宙産業に重要な役割を果たしていくことになると思います。そうすると、福岡をはじめとする九州には、自動車産業に携わる企業が結構あるんですね。だから僕らの会社の発注先として、ぜひ皆さんにも頑張ってもらいたいなと思っています。」
見えにくいけれど、すぐそこにやってくる宇宙ビジネスに向けて
福岡がもっとも宇宙ビジネスが盛り上がっている街になり、宇宙ビジネスが新しい地域文化になれば、という一般社団法人福岡青年会議所の願いが込められた、非常に可能性に満ちたイベントでした。
今回の堀江さんのお話を受けて、なかなか新産業への転換がままならない日本ではありますが、せっかく福岡出身の堀江さんが先駆けて動いてくれているので、この知見をしっかりと自分たちのビジネスにどう転用できるか考え、来るべき宇宙バブルに乗り遅れることのないようにしていけたらと強く感じました。
宇宙ビジネスに注目したい人は、以下の情報をチェック!
▶インターステラテクノロジズ株式会社公式サイト
▶堀江貴文(著)『ホリエモンの宇宙論』