『ラルーチェ』の価値観の原点は野球のグローブ
豊田「小学校から高校3年まで野球を続けていました。中学生の時、監督にミットをもらって、それをとても大事に磨いていました。すると、普段怖い監督なのにめちゃくちゃ褒められたんです。
そこから道具を大切にすることの大事さを学び、道具に対する価値観が変わりました。それが僕の道具、モノに対する価値観の原点ですね。」
野球にモノづくりの原点をおそわったという豊田さんは、高校生の時にグローブを解体し、端材でキーホルダーや小銭入れなどを遊びでつくって、友達にあげたりしていたそうです。
革製品には金具を使って口を閉じる形状が多く、革そのものに形をおぼえさせる発想で商品をつくる人は少ないんだとか。
野球のグローブの特徴を知っている自分がつくるんだったらこれしかないと思い、高校生の時に、初めてのバッグが生まれます。
そのバッグこそが、ラルーチェのメイン商品である「バゲットバッグ」につながります。バゲットバッグは、グローブからヒントを得ているのです。
使えば使うほど価値が高くなる革の魅力
豊田さんは2016年に福岡大学経済学部経済学科に入学、在学中に福岡のレザーブランドでアルバイトをはじめます。
豊田「モノの市場価値って、通常は新品が一番いいんです。使用してしまえば価値は下がってしまう。ですが革製品は、財布やバッグ、小物など使えば使うほどその人それぞれの価値が出てきます。
会社をつくろうとした時に、僕ができる価値があるものをやりたいと思いました。それだったら革!革製品の制作会社だなと。まずは小銭入れや小物からはじめました。
それまで独学だったので、本格的に勉強しないといけないと思い、福岡のレザーブランドにバイトで雇ってくださいと直談判、そこで基礎を学びました。」
趣味ではなく、ビジネスとしてのモノづくりを学ぶ
豊田「1個だけつくるよりも10個つくる方が効率がいいなど、趣味のレベルからビジネスのレベルに意識を変えました。友達に売るだけの趣味としてのモノづくりではなく、ビジネスとして。
原価の計算、デザインから販売までのスパンなど、どうやってリリースされているかなど、知らなかった役割など外からだとみることのできない業界の内側を見せてもらうことができました。」
職人ではなくデザイナーとしての自分の役割
豊田「1年ぐらい勉強した後、単純作業が苦手で自分は職人じゃないんだなと気が付きました。それで、これはつくるのが得意な人をみつけてきた方が自分のビジネスには適していると思いました。」
自分が職人ではないという役割に早い段階で気づけたことがよかったと話す豊田さん、その後、大学2年の2017年夏に独立。
自身のレザーブランド「ラルーチェ」を立ち上げ、職人を雇い、代表兼デザイナーとしてラルーチェの製品を展開します。
そして同年冬にパルコでポップアップショップをオープンさせます。
豊田「最初のポップアップのお客さんが95%友達で僕を知らない、いわゆる普通のお客さんに売れなかったんです。
“やりたいだけ”のモノづくりではダメ、きちんと集中して仕事をしようと思い、平行していたバイトを全部やめました。
そこから、東京、大阪、熊本、佐賀、長崎、兵庫などポップアップショップを全国に広げ開催していくことになりました。」
ポップアッパー『ラルーチェ』として全国に期間限定ショップをオープン
豊田「“ポップアップマン”とか“ポップアッパー”と勝手に名前をつけTwitterのアカウントをつくって活動していました。
若手起業家がTwitterにはたくさん存在していて、クラウドファンディングで会社をはじめたり、お客さんを巻き込むのがうまい人たちがたくさんいて刺激になりました。
普通に生活していたら知り合えない人達に直接ツイッターのDMを送って会いに行っていました。僕が若かったのもあってけっこう話をきいてくれる人が多かったです。
その人達に会社経営のやり方、売り方、ビジネスのヒントをたくさんもらいました。更に月2回ポップアップをやって、家にほぼいない期間もありました。」
転機は予算をかけた計画的なプロモーション
去年の6月に六本松の蔦屋書店でもポップアップショップを開催し、17万人ほどフォロワーがいるインスタグラマーの女の子を起用してプロモーションをしたことが、ラルーチェが広く知られることになったきっかけだそうです。
豊田「それまではできるだけお金をかけないようにしていました。ですが、ブレイクするにはここだなと思って、世界観の合うモデルさんを起用したんです。
このプロモーションがきっかけになり、お客さんの体験やブランドとしての姿勢、プロダクトなどがやっとお客さんに届きはじめました。
本来のラルーチェが強みとしているファンづくりがこの起用をきっかけに動きはじめたと思っています。
そこから、その月暮らしみたいだった状況を、計画をたてるようになりました。2018年9月に六本松でアトリエを借り、職場をつくりました。
アトリエをつくったシェアハウスは、カメラマン、クリエイターさんのたまり場みたいな場所だったので、出会いや刺激があり仲間が増え、ビジネスとしていろいろな企画や準備ができるようになったんです。」
どこでもできる仕事だからこそ福岡拠点は変えない
全国でのポップアップショップ展開やネット販売など、どこを拠点にしてもやっていけるからこそ、福岡拠点は変えるつもりがないそうです。
豊田「僕は1箇所にいれない性格なんですよ(笑)、定住できない。拠点は福岡で、東京、大阪、海外、年間の半分は他の場所にいるような生活をしたいと思っています。
昔は東京に住まないとできなかったことが、今は拠点を変えずにできます。僕が福岡拠点を変えないのは、単純に福岡がいいところだからです。
家賃や生活費が関東と比べて安いという話も聞きますが、それよりも福岡の雰囲気ですね。殺伐としてない人の雰囲気というか。
大阪も好きでしたが、帰ってくる場所として考えたら福岡がいいですね。僕にとっては絶妙なバランスを保っている土地が福岡なんです。」
レザーブランド『ラルーチェ』の今後の夢
ラルーチェのメイン商品「バゲットバッグ」
豊田「ラルーチェに関しては、売上の目標と、代官山の蔦屋書店でポップアップをしてみたいという夢があります。
自信があるというよりは、自分を信じているという表現がビッタリくるかも。ですが、これからのラルーチェを無理に広げようと思ってはいません。
これからもお客さんが欲しいものを職人さんに伝える人だという役割を忘れずに、無理せず商品を展開していきたいと思っています。
そしていつか僕の原点となったグローブを作っているMIZUNOと仕事がしたい、野球関係の人と仕事がしたいですね!」
最初は女の子のファンが多かったラルーチェのバッグですが、最近は男の子のファンも多く男女問わず人気のブランドとして急成長しています。
お客様の年齢層は幅広く、高校生から年配の方まで。その中でもインスタグラムでモノを買うことに抵抗がない年齢層が一番多いそうです。
時代に合った方法で着実に支持されているラルーチェが、福岡を拠点に全国、そして世界に広がっていくのが楽しみです。
——-
豊田翔 1997年長崎県雲仙市生まれ。2018年9月アトリエ兼ショップをかまえ、全国でポップアップショップを展開している。
月末3日間限定販売のネットショップhttps://laluce5star.stores.jp/
★この記事を音声で聴こう【聴くリパ】♪