COCKTAIL& SHOT-BAR KACHUSHA(カチューシャ)(福岡市博多区)
カクテルは“飲む宝石”、毎日お客様に喜ばれるカクテルを提供したい
中洲大通りの一筋西側の狭い通りにある中山第1ビル1階。「COCKTAIL&SHOT-BAR KACHUSHA」と白抜きされた赤い庇(ひさし)と、窓やドアのシックな木枠は、何やらロシア料理のレストランを思わせる造り。
オーナー創業者の鎌田國彦さんは最初、経理事務所に勤めていた。
顧客にカフェやダンスホールなどがあった。その帰りに先輩に連れていってもらったバーで飲んだカクテルに魅了されて、お堅い経理事務からバーテンダーの道へ。
数年間の修行の後、創業したのが1964年、先の東京オリンピックの年である。
鎌田さん
店名は、当時流行していたロシア民謡の代表曲「KACHUSHA」(カチューシャ)から付けた。
ロシアで女性の名前に多い「エカテリーナ」のニックネーム。18世紀ロシアの女帝、エカテリーナ2世がよく知られている。
鎌田さんには、その「エカテリーナ」というオリジナルカクテルがあるという。そうと聞けば、飲まずにはおられまい。
女性を魅了するきれいな紫色の「エカテリーナ」
目の前に、何ともきれいな紫色のショートカクテルが差し出された。甘い香りに誘われて口をつけると、口当たりがよくて、バランスの良い味が広がる。
ウオッカベースに、スミレのリキュール「パルフェ・タムール」(注1)とグレープフルーツリキュール、レモンジュースをシェイクする。
(注1)珍しい花(主にバラとスミレ)のリキュールで、100年の歴史がある。多くのバーテンダーにとって、扱いが難しいリキュールで、これを材料にしたカクテルで知名度が高いものはほとんどないと言われている。
鎌田さん親子と店内の写真
現在、娘の邦子さんがメインでカウンターに立ち、鎌田さんがサポートする。
鎌田さん直伝のスタンダードカクテル、フレッシュフルーツをふんだんに使ったフルーツカクテルに加え、グラスワインも提供する。邦子さんは「中途半端なことはできない」とソムリエの資格も取得。
鎌田さん
COCKTAIL&SHOT-BAR KACHUSH
■TEL:092-291-5991
■住:福岡市博多区中洲4-3-8 中洲山第一ビル1階[MAP]
■営:19:00~翌2:30(祝日は~翌1:00)
■休:なし
■席:23席
■カード:可
■喫煙:可
■チャージ:なし
BARいしばし(福岡市博多区)
那珂川を臨む落ち着いた店内で、オールドスタイルのカクテルを楽しむ
国体道路から、中洲西側の那珂川沿いにちょっと下ったSTAGE2ビル4階にある。
黒字に白抜きで「いしばし」のサインが目印だ。エレベーターのドアが開いたら、すでに店内で、オーナーバーテンダーの石橋進さんが笑顔で迎えてくれる。
石橋さんは、1952年には博多駅前の米軍クラブのバーテンダーだった。
以来、バーテンダー歴68年を誇る。中洲で自分の店を持ったのが1966年、現在の店舗は5軒目となる。
中洲の街、バーテンダー、そしてお客の昔と今をずーっと見てきた。
昭和30年代、サラリーマンは会社から真っすぐバーにやってきた。
石橋さん
1番人気はハイボール、そしてジンフィズ、ジンリッキーなどジンベースのカクテルだった
昭和40年代、女性スタッフのいるスナックが登場し、水割りを出すようになった。社用族を中心にスナック、クラブ、キャバレーに移り、中州からバーテンダーも去っていった。そして、バブル経済がはじけ、スナックしか知らない世代がバーに戻ってきた。
福岡のバーの歴史がやや長くなってしまった。
「いしばし」の1杯目はやはりジンソニック。
ジントニックはやや甘くて、何杯も飲めないので、ソーダを加えたのがジンソニック。そう言えば20数年前、初めて飲んだのも「いしばし」だった。
甘さを抑え、飲みやすい「ジンソニック」
オールドスタイルのカクテルも楽しめる。
ソルティドッグ(注1)はジンベースで、グレープフルーツジュース、塩を入れステアする。ギムレット(注2)もプリマス・ジンにローズ社のライムジュース・コーディアルを使うといった具合だ。
(注1)通常のソルティドッグは、グラスの縁に塩をまぶしたスノースタイルにしたオールドファッショングラスに、ウオッカ、グレープフルーツジュースを注いで軽くステアする。
(注2)ジン、フレッシュライムジュース、砂糖をシェイクする。ローズ社のライムジュースは甘みがあるので、フレッシュジュース独特の苦みがない。
石橋さん
那珂川を臨む落ち着いた店内
BARいしばし
■TEL:092-272-1055
■住:福岡市博多区中洲4-1-4 STAGE2-4[MAP]
■営:19:00~翌1:00
■休:日祝日
■席:15席
■カード:可
■喫煙:可
■チャージ:500円
ニッカバー七島(福岡市博多区)
開業60年を超え、バーが衰退することはないと確信する中洲最古参のバー
中洲大通り、中洲交番の向かい側にある「NIKKA BAR」の大きなネオンサインでお馴染み。
開業したのは1958年3月3日。
2018年の同じ日に招待客350人が出席して、60周年を祝うパーティーを開いた。2月11日、マスターの七島啓さんの誕生日には弟子たちが集まって「米寿の祝い」が催された。
中洲最古参のバーとして、“中洲の顔”的存在だ。
七島さんは、九州に初めて開店したサントリーバーで、伝説のバーテンダー、佐々木永助さん(注1)と出会ったのが、バーテンダーになるきっかけだった。佐々木さんの下での厳しい修行を経て独立した。
(注1)福岡の戦後のバーの歴史は、佐々木さん抜きでは語れない。七島さん、KACHUSHAの鎌田さんら佐々木さんの直弟子が出す老舗バー、その孫弟子が出すバーが何軒もある。北海道出身。東京で修業し、1950年にオープンしたサントリーバーのテコ入れのため来福していた。1957年、中洲で「バー街」を開店。NBA(日本バーテンダーズ協会)の前身であるJBA西日本支部の初代会長で、1963年には協会からバーテンダーの最高の栄誉である「ミスターバーテンダー」を受賞。1992年死去。
現在、七島から独立し、業界で働く弟子は59人、うち20名がオーナーバーテンダーだ。
七島さんは常々、「お客様から頂いた名刺が2000枚になったら独立してよい」と言う。但し、「顔と名前が一致する人だけで」と付け加える。「その3分の1の700人から800人のお客様にはご来店いただけるでしょうから」と経営についてのアドバイスも怠りない。
七島さんのお勧めで、「カクテルの王様」と呼ばれるマティーニ(注1)をいただく。
ジンはビフィータ―で、甘みが少なめでキレがあり、辛口の味わい。
(注1)1910年代にニューヨークで生まれたマティーニは、ジンに「スイート・ベルモット」と呼ばれるハーブやスパイスの風味がつけられたワインを加えた甘口のカクテルだった。現在はドライ・ジンに「ドライ・ベルモット」を加えた辛口のカクテルに変化している。
マティーニ
七島さん
だんだんドライ、辛口になっていって、映画『007』(注2)でドライ・マティーニが登場したころから、より辛口が求められるようになりました。ウチもまろやかなゴードン・ジンからビフィータ―・ジンに替えました。
(注2)1962年に公開された映画『007』の第1作「ドクター・ノオ」で、主人公のジェームズ・ボンド(ショーン・コネリー)が依頼し、「ミディアム・ドライ・ウオッカ・マティーニ。ご注文通り、ステアでなく、シェイクで」登場する。
七島さんは毎週木曜日から日曜日まで、午後9時から出勤する。
「生きているうちですよ。毎日でなくても、店に出てる時がいい」。壁に描かれた青空と飛行機、天井に描かれた地球と木星を見上げながら、何やら感慨深げだ。
七島さん
朝はモーニングを食べ、お昼にはおじいちゃん、おばあちゃんがお茶を飲み、子供たちがアイスクリームを食べに来たり。夕方になると、ご夫婦でバータイムを過ごす。
お店の人とお客さんが家族ぐるみの付き合いをするように、これからもっとそうなりますよ。バーが衰退することはありません。
ニッカバー七島
■TEL:092-291-7740
■住:福岡市博多区中洲4-2-18 水上ビル 1階[MAP]
■営:19:00~翌2:00
■休:なし
■席:33席(個室1室)
■カード:可
■喫煙:可
■チャージ:なし
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※新型コロナウイルスの影響により、席数、営業時間・定休日等が記載と異なる場合があります。来店時は、事前に各店舗へご確認をお願いします。