喫茶松榮

坂道の途中にひっそり佇む小さな和カフェ「喫茶松榮」【福岡市中央区】

いつの時代でも「カフェ」という存在は人々をトリコにします。近年のSNS人気も相まって、おしゃれなカフェ巡りを楽しむ女性も多い中、にわかに脚光を浴びているのが「昭和レトロな喫茶店」。中年以上の方はノスタルジックを感じ、若者にとってはおしゃれなカフェにないレトロ感が斬新だと感じるんだそうです。そこで福岡に今なお現存する「昭和レトロ喫茶店」をピックアップしてご紹介していきたいと思います!

「喫茶松榮(まつえ)」は桜坂から福岡市動植物園に向かう坂の途中にひっそり佇んでいる

 

今回ご紹介する「喫茶松榮(まつえ)」の場所は、福岡市中央区谷。

最寄り駅の福岡市地下鉄七隈線「桜坂駅」から、福岡市動植物園方面に向かうなだらかな坂道を歩くこと約7分。カーブ前の右手にあります。ちなみに隣には「西洋洋菓子工房IMURI」があります。

車で行かれる方は近隣のコインパーキングをご利用ください。

 

 

まわりの木々や草花に隠れるかのように佇む小さな古民家が「喫茶松榮」。

瓦葺きの屋根に白壁、格子戸に敷石で構成された外観は日本古来の建築美を感じさせてくれます。

ニッコリ笑ったコーヒーカップの大きな暖簾もかわいいですね。

 

 

喫茶松榮のシンボルとして長年ずっと変わらないのが、こちらの黒猫。看板やプレートなど至るところにこの黒猫があしらわれています。

 

ちなみに猫をモチーフにしたのは、かつてこの辺によく野良猫が居たからなんだそうですよ。

 

 

長い年月を重ねて錆びついた金属製の看板も素敵です。さあ、格子戸を開けて店内へと進みましょう。

 

 

創業当初から変わらない凛とした空気が漂う和風の店内空間

 

シックな琥珀色の家具と漆喰の壁で構成された和風の店内は、創業当初のまま。それらが経年変化によって実に良い味を醸し出しています。

 

小さな店内ながらも席数は20席もあり、効率的にレイアウトされています。

 

 

飴色のスツールが並ぶ4席だけの小さなカウンター。

天井にある照明部分は障子戸を組み込んで作られており、一層和の雰囲気を演出しています。

 

 

そんなカウンターの背面に飾られているのが巨大な切り株のオブジェ。なんと屋久杉を切り出して作ったものなんだそう。圧倒的な存在感を放っています。

 

 

店内には至る所に季節の草花がディスプレイされており、店内に彩りと癒しを与えています。

 

 

和紙で作られたという長細いランプシェードが、店内をぼんやりと照らしています。

 

 

入り口から見えづらい奥の一角には、小上がりのテーブル席が用意されています。ここはまさに喫茶松榮の特等席。靴を脱いでゆっくり寛げますよ。

 

 

喫茶松榮の歴史

店主を勤めているのは松榮愛さん。

 

喫茶松榮を始めることなったのは、愛さんのお母様がきっかけなのだそう。

お母様は結婚後、専業主婦生活をしておられましたが、50代に差し掛かったころ、かつてご自身が商売をやっていたこともあり、「カウンター越しにお客さんと楽しく会話できるようなお店がやりたい」と、喫茶店の開業を決意。

 

開業場所を探しているうちに、現在の古民家に出会い、藁葺き職人さんの手によってリノベーションし、1998年9月に喫茶松榮を開業されました。

 

それから程なくして当時アパレル業界で働いていた愛さんと、「パパスカフェ」や「アフタヌーンティー」でパティシエをしていたお姉さんも合流し、親子3人でお店を営むことに。

 

 

当初はご近所の年配客を対象にコーヒーだけを提供していましたが、娘二人の意見を取り入れメニューも徐々に増やしてきた頃、突如福岡にやってきた「カフェブーム」の影響を受けてお客さんが激増。

 

カフェブームの頃は「白を貴重としたスタイリッシュでおしゃれなカフェ」が主流でしたが、喫茶松榮は当時では数少ない「和カフェ」だったこともあり、他店舗と一線を画すスタイルが若い女性の心に刺さり、福岡カフェブームを代表する人気店になりました。

 

その後の福岡のカフェシーンは様々なジャンルのカフェが乱立し、近年はSNSの影響でさらに大胆なコンセプトを打ち出したお店が続々とオープンしていますが、今年で開業から26年を迎える喫茶松榮は、当初から変わらぬスタイルとスタンスで日々こつこつと営業を続けておられます。

 

 

一杯立てのコーヒーと手作りのスイーツで癒しのひとときを

 

メニューはドリンクとスイーツと軽食のみと至ってシンプルな構成。「ぜんざい(税込800円/冬季限定メニュー)」、「和菓子とコーヒーのセット(税込800円)」、「抹茶オレ(税込750円)」といった和テイストの品々がラインナップされています。

 

 

中でも一番人気なのが「月替わりのシフォンケーキ」。コーヒーとセットで税込1,100円。この日は旬のいちごをたっぷりと使用したショートケーキ風のシフォンケーキでした。

 

盛り付けや彩りに店主のセンスの良さが感じられます。

 

 

しっとりした食感のシフォンケーキに、いちごとホイップクリーム、そしてプレートにデコレーションされたベリーソースとカスタードソースを絡めていただきます。

サイフォン式で抽出した一杯立てコーヒーとの相性も良く、凛とした空気の中でゆったりと流れる時間を過ごせますよ。

 

 

「福岡カフェブーム」でスポットが当たってから早20年以上。福岡という地にカフェが定着してからも、変わらぬスタイルで日々こつこつと営業を続けてきた喫茶松榮。

 

常連さんはもちろん、初めて来店する方にも、お久しぶりの方にも、「ずっと変わらない居場所」として、これからもこの場所にあり続けて欲しいと願うばかりです。

 

 

喫茶松榮

住所:福岡市中央区谷1-3-13

電話番号:092-733-6003

営業時間:13:00~20:00(日曜日・祝日は18:00まで)

定休日:水曜日 ※不定休あり。事前にinstagramにてご確認ください。

Instagram:https://www.instagram.com/cafe_matsue/

 

 



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ライター
久原茂保
2001年より福岡発のカフェ情報サイト「CAFE@TRIBE(カフェ・トライブ)」を開設。以来、20年以上に渡り福岡県を中心に数多くのカフェを訪れ、日々取材活動に励んでいる。近年はカフェアドバイザー業やカフェのリブランディング、カフェプロモーションなどカフェ業界の知見とネットワークを活かしたオンリーワンな事業を展開中。グラフィックデザインやWEBデザイン、広告コンサルも。

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